こんにちは。
先日、この記事を読んで、初めて「セルフネグレクト」という言葉を知りました。
30代でも起こりうる孤独死 7割以上が「セルフネグレクト」 - ライブドアニュース
記事では、セルフネグレクトの定義を
生活や健康状態が悪化しているにもかかわらず、改善する意欲や周囲を頼る気力がなくなってしまう状態のことを指す。部屋をゴミ屋敷にしたり、必要な食事を取らなかったり、体調不良でも医療を拒んだりして、自身の健康状態を悪化させる。
「緩やかな自殺」との別称もあり、近年は大きな社会問題となっている。セルフネグレクトは誰にでも起こりうる。ビジネスパーソンも仕事に追われ、忙しさのあまりに、気づけば家がゴミ屋敷化したり、食生活がなおざりになっていたりするケースが多い。
と説明し、病によりセルフネグレクトに陥り孤独死してしまった2人の男性の事例を紹介しておりました。
「これ、いつかの俺に近くないか…というか誰にでも起きそうな状況じゃね?」とかなり胸がざわつき、勢いに任せ、ここ数日セルフネグレクトに関する本を何冊か読んでみました。
★★
1. セルフ・ネグレクト〜ゴミ屋敷、ホームレス、ひきこもり
短い漫画で、人がセルフネグレクトに陥る過程を描いている。「セルフ・ネグレクト」についてイメージを湧かすには良い本でした。
2.ルポ ゴミ屋敷に棲む人々 孤立死を呼ぶ「セルフ・ネグレクト」の実態
ルポ ゴミ屋敷に棲む人々 孤立死を呼ぶ「セルフ・ネグレクト」の実態 (幻冬舎新書)
- 作者: 岸恵美子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2012/09/14
- メディア: Kindle版
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看護学の教授である岸氏が書いた本。体系立ててセルフネグレクトについて理解するのにおすすめです。
本書の第1章によると、セルフ・ネグレクトの定義は
- 個人の、あるいは環境の衛生を継続的に怠る
- QOLを高めるために当然必要とされるいくつか、あるいはすべてのサービスを繰り返し拒否する
- 明らかに危険な行為により、自身が危険にさらされる。
とされております。
また、セルフ・ネグレクトに陥っている人たちの特徴として
- 身体が極端に不衛生
- 失禁や排泄物の放置
- 住環境が極端に不衛生
- 通常と異なって見える生活状況
- 生命を脅かす自身による治療やケアの放置
- 必要な医療・サービスの拒否
- 不適当な金銭・財産管理
- 地域の中での孤立
をあげております。
また、セルフネグレクトに陥ってしまうきっかけは以下のように様々なタイプがあるようです。本書第2章の見出しだけを列挙します。
- 認知・判断力低下型
ゴミが捨てられず、ネズミと生活するAさん - ライフイベント型
妻が出て行ってしまった後、一人暮らしで生活が破綻してしまったBさん
妻を亡くして、腰痛もひどくなり、生きる意欲を失ったCさん - プライド維持型
自由気ままな独身生活が、一転してゴミに埋もれた生活になったDさん - 引きこもり移行型
若い頃から引きこもり、「死なせてください」と繰り返すようになったEさん - 遠慮・気兼ね型
身体の機能が低下しても助けを求めることができなかったFさん - 貧困・経済不安型
妻の介護をしながら、自分の病気の治療や受診は拒否するGさん - 医療・サービス拒否型
サービスを拒否し、自宅で亡くなったHさん - 住民苦情・トラブル型
ゴミの山がなくなった後に、なくなってしまったIさん
夫の死亡後も、ゴミ屋敷で人との関わりを強く拒否するJさん - 怒り・不満型
糖尿病で失明しても、サービスを受けることを拒否するKさん - 虐待移行型
家族から虐待を受けて、セルフ・ネグレクトになってしまったLさん
家族からネグレクトを受け、セルフ・ネグレクトとなったMさん
これら情報を紹介し、課題を整理したのちに社会として取れる対策が書かれています。
3.孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル
本書は孤独死がテーマなのですが、第3章がセルフ・ネグレクトと孤独死の切っても切れない関係について書かれており、参考になりました。
その他、特殊清掃員の方について現場を回ったり、遺族の話を聞いたりした部分が、具体的な事例として非常に参考になりました。
★★
で、読んでみた感想ですが、そもそもセルフ・ネグレクトは誰にとっての問題かというと、
- 当人
- 家族
- 近隣住民
- 不動産所有者
- 行政
になるのかなと思いました。それぞれ、問題点と対策を考えてみました。
1.当人
まず、当人にとっての問題は、死ぬ気はないけれど、あらゆる要因によりどんどん死に近づいて行ってしまうこと、と感じました。すごく不幸な状況だと思います。
この状況に陥らないようにするには、「日常生活を誰かと共有する」ことではないかと思います。
具体的には、例えば一人暮らししていて、このままだとヤバいと感じた段階で、
- 実家に帰る
- 子供と一緒に暮らす
- 友人とルームシェアさせてもらう
- シェアハウスに移る
等々を行い、なるべく早く人と生活を共有することが必要だと感じました。
また、普段から規則正しい生活を心がけ、どんな出来事があっても習慣を崩さないように心がけることも、自分の心を健康に保つ上では大事ではないかと感じました。
2.家族
次に家族にとっての問題は、最愛の人をセルフネグレクトによって失ってしまうこと、と感じました。
こちらは、大事な人とは普段から連絡を取り合い、実際にあって様子を確認することが必要だと感じました。(みなさん、大事な人とちゃんとあってますか?)
3.近隣住民
近隣住民にとっての問題は、自分の隣人がセルフ・ネグレクトによって死んでしまうことによる住み難さ・資産価値の低下や、ホーダー(ゴミを溜め込んでしまう病気)により迷惑が被られることだと感じました。
ただ、なかなか隣人の問題を解消することは困難なため、兆候が見られたタイミングで早めに行政に相談するのがよいのではないかと感じました。(ただ、気づくことそのものが難しそうではありますが…)
4.不動産所有者
不動産所有者にとっての問題は、借主や自分の保有する不動産の近くでセルフネグレクトによる死亡事故が発生した際の資産価値低下、と感じました。
借主の場合、家賃の支払い遅延が発生したりした段階で、早めに行政の手を借りて対処することが必要なのではないかと感じました。
5.行政
行政にとっての問題は、エリア内でセルフネグレクトによる死亡事故が発生した際のエリアの価値低下、価値低下によるエリアの衰退、税収の低下、と感じました。
早期発見の仕組み作り、そして発見後の支援体制を、いかに低コスト、高効果で構築するか。なかなか難しい課題ですが、それに向けて取り組むことが必要だと感じました。
★★
全体的に・・・
一人暮らし世帯が増えたことによって、セルフ・ネグレクトは防ごうと思ってもなかなか防げるものではないですが、各個人が「ヤバい」と感じたら見栄とか無視して人と住んだり、自分の周りの大事な人を気にかけたりする。そして、社会として兆候を早めに拾って支援することが、この問題を解決するには必要そうと感じました。
特に、社会として兆候を早めに拾うところに関しては、高齢者のみに焦点がいきがちな「地域包括ケアシステム」の中にいかに組み込むかが鍵な気がします。
この辺りは、また機会をもってしっかり調べてみたいなと感じました。
※参考:厚労省HP 地域包括ケアシステム↓
今日はこのへんで。
ではまた。