asiyutaの日記

知識・経験・思考のまとめ

【要点解説】リードタイム短縮の考え方・進め方

どうもasiyutaです。
 
本日は、リードタイム短縮の考え方・進め方について、簡単にまとめたいと思います。
元となった情報は、こちらの記事で紹介した本です。↓ 

asiyutav2.hatenablog.com

リードタイムを短縮させたいと悩まれている方、これから取り組む方の参考になれば幸いです。

 

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1.リードタイム(以下LT)短縮の目的とは

まず、なぜリードタイム短縮に取り組むべきなのか、目的から押さえましょう。目的は、主に2つに集約されるかと思います。

  • 顧客満足度を高める為
  • リスク回避・変化への対応力の為

顧客満足度はわかりやすいですね。一方、リスク回避・変化への対応力は、具体例を挙げると、

  • 市場の変化に短い時間で対応できる。需要急増にも短納期で対応でき、需要急減もすぐ生産量を絞ることで作りすぎを防止できる。
  • 短期間なので、「予測のブレ」による影響がそもそも少ない
  • 材料・部品の発注残が少なく、危険が少ない
  • 工程内仕掛が縮減でき、資金が有効に使える

等です。

 

その他、短LTを実現するためには優れた管理体制が必要となることから、短LT実現を通じて間接的に社内の管理精度が高まるというメリットも挙げられるかと思います。

 

2.LT短縮は業務フローを描いて俯瞰・分析から始める

ここからは、具体的な考え方・進め方について記載いたします。
LT短縮は、まず業務フローを描いて、LTを構成している業務の全体像を俯瞰・分析するところから始めます。
 
業務フローは、全体から細部に、の意識が重要です。もし1つのフローで細部まで描けないならば、詳細度に応じて全体・細部に分けてフローを描いてもOKです。
また、フローは最終的には「加工(作業)」「検査」「運搬」「停滞」の4種類の工程を用いて描くようにしましょう。付加価値を生む「加工」以外の時間がLT内でいかに多いかが可視化され、改善の糸口をつかむことができると思います。
※いわゆる「工程分析」をイメージしてもらえばよいかと思います。
 
業務フローが描けましたら、全体を俯瞰してみて、最適な業務フローになっているか、改善できないかを考えてみてください。この時の視点としては、基本はECRS(Eliminate(排除)、Combine(結合と分離)、Rearrange(入替えと代替)、Simplify(簡素化))と5E1H(目的は何か、それはどこで行うべきか、それはいつ行うべきか、誰がそれを行うべきか、それをいかに行うべきか)から考えるとよいかと思います。
その他、開発・設計、生産技術、デカップリング・ポイント、等の観点からも考えてみるとよいでしょう。
 
上記により、まずはLTを構成する業務を俯瞰し、フローを最適化します。フローが最適化されましたら、以降各プロセス内の最適化について検討いたします。
なお、デカップリングポイント(サプライチェーンマネジメント)方面からのLT短縮は、こちらの記事に少々書いておりますので、ここでは割愛します。 

3.「停滞」プロセスの削減

全く価値を生まない「停滞」プロセスですが、4種類の工程のうち一番長時間を占めることが多いです。停滞の種類としては「工程待ち」と「ロット待ち」があります。
  • 工程待ち:ロット全体が次の加工、検査、運搬などを待つために停滞している状態。単に待っていることがほとんどだが、時には部品・材料の払い出し待ちや、機械故障の復旧待ちの場合もありうる。

  • ロット待ち:ロット生産において、1個加工しているとき、他が未加工または既加工の状態で停滞していること。

 

(1)工程待ちの削減

清流化(工程の流れ化)

例えば、工程の途中に大型の高能力機械があり、すべてがそこを経由するため、その機械の前後に待ちができている場合、設備を追加し、その機械待ちを解消して流れをスムーズに。

設備追加のコスト増・稼働率低下とLT短縮・仕掛在庫削減・管理コスト削減等を天秤に判断が必要。

 

フローショップ型レイアウト

ジョブショップ型レイアウトから、フローショップ型レイアウトに変更することで、停滞が起こりにくくする。具体的な方式としては「U字型」「製品別」「類似工程別」のレイアウトが考えられる。

 

ラインバランスの実現

各工程に能力差があると、能力が一番小さい工程の前に仕掛ができてしまうので、ラインバランシングにより、能力差をなくし、スムーズな生産の流れを実現。

 

ボトルネック工程解消

ボトルネック工程の能力が向上し、ボトルネックが解消されれば生産はスムーズになる。解消の主な方法としては、

  • 動作経済の原則を適用:身体の使用、作業域、工具や設備の設計の3つの原則から工程作業を見直す。

  • 有効動作率を向上:ボトルネック工程内の「加工」「検査」「運搬」「停滞」のうち「加工」以外の時間を削減する。

  • 質の分業を検討する:ネック工程の仕事について、他の工程・設備でできる部分を分散することで負荷を軽減する。

 

ボトルネック工程に同期させた生産

ボトルネック工程以上の生産はできないので、ネック工程以外もボトルネック工程の能力に合わせて生産を行うことで、不必要な停滞をなくす。なお、ボトルネック工程は、工程前に在庫を一定数持つようにすることで、フル稼働させる。

 

多能工化(多工程持ち)

多工程持ちの多能工化を進めることにより、1人で複数工程をまとめて行えるようにし、工程待ちを発生させないようにする。

 

日程計画の立案・差立ての最適化

停滞のない生産ができるように、日程計画を立案する。また立案した日程計画に基づき、作業者に適切に差立てを行い、停滞を防止する。

 

進度管理の徹底

進度管理を行い、遅れを見える化し、早期に対応することで、工程待ちが発生しないようにする。

 

停滞の見える化

停滞箇所が一目でわかるような管理方法を導入する。工程間の仕掛品置き場の縮小等。

 

後工程引取りのかんばん方式導入

かんばん方式により、工程を同期させた差立てを実現し、生産の清流化を図る。

 

設備類のメンテナンスによる故障停滞防止

メンテナンスを計画的に行うことで、故障起因の停滞を防止する。

 

(2)ロット待ちの削減

少ロット、1個流し生産

ロット数を絞り、ロット待ちを発生させない。段取り改善がカギ。自社にあった混流生産をデザインすることも重要。

 

4.「運搬」プロセスの削減 

こちらもまったく価値を生まないプロセスなので、できる限り減らす必要があります。以下の観点で検討し、経路短縮・運搬回数削減・自動化等を進めることが重要となります。

 

SLPにより合理的なレイアウトの検討

 SLPとはSystematic Layout Planningの略で、合理的なレイアウトの検討方法です。ざっくりプロセスを書きますと

  1. P-Q分析により生産方式・レイアウトの方針決定
  2. アクティビティ相互関係ダイヤグラムにより、アクティビティの順序と近接性を地理的配置に整理
  3. 面積相互関係ダイヤグラムにより、必要スペースと利用可能スペースを調整する
  4. レイアウト案を作成する

 

流れ分析によりレイアウト改善

流れ分析とは、設備や建屋の配置図に工程図記号を記入してそれを線で結んだ流れ線図を利用して、人や物の流れ、逆行した流れ、無用な移動を視覚的に把握することで、改善の糸口を見つける分析手法である。

視覚的に人・物の動きが分かるので、問題点が一目で分かりやすく、改善案や新方法を検討する際も理解がしやすいという点で有効である。

 

レイアウトの原則の適用検討 

レイアウトの原則をもとに、改善の余地がないかを検討するのもよいでしょう。

※レイアウトの原則(「IEの基礎」より)

  1. 総合の原則:最良のレイアウトとは、機械設備、作業者、材料、補助活動およびその他の条件をうまく調整し、手際よく総合したものである。

  2. 最短距離の原則:他の条件が同一であれば、物や人の移動距離が最短となるようなレイアウトが最良である。

  3. 流れの原則:他の条件が同一であれば、レイアウトを基本的流れ形式により構成するのが最良である。基本的流れ形式としては、I型、L型、U型、O型、E型、S型、X型などがある。

  4. 立体の原則:平面的効率だけでなく3次元的に空間の有効利用を考える。

  5. 安全および満足感の原則:他の条件が同一であれば、作業者の安全性および満足感の高いレイアウトが最良である。

  6. 融通性の原則:他の条件が同一であれば、最小のコスト、最小のデメリット、再配列、拡張および調整を行いうるレイアウトが最良である。

 

運搬活性分析により運搬容易化

運搬活性とは、対象品の移動のしやすさを5段階に分け、品物の置き方や荷姿について分析する方法。ざっくりいうと、運搬時の手間が少ないほうがよいよね、という考え方。各状態ごとの活性示数は次の通り。

  • 床にバラ置き:活性示数0、手間「まとめる」→「起こす」→「持ち上げる」→「動かす」

  • 容器・束:活性示数1、手間「起こす」→「持ち上げる」→「動かす」

  • パレット・スキッド:活性示数2、手間「持ち上げる」→「動かす」

  • 車両:活性示数3、手間「動かす」

  • コンベア:活性示数4、手間 不要

 

マテリアル・ハンドリングの原則の適用検討

マテリアル・ハンドリングとは、商品を仮置(停滞)している状態から移動することで、自社内での荷降ろし・積替え・集荷・移動・積込み・出荷作業などの一貫した品物の取扱いを言います。

このマテリアル・ハンドリングについて、以下原則をもとに、改善の余地がないかを考えます。 

※マテリアル・ハンドリングの原則(「IEの基礎」より)

  1. 計画の原則:すべてのハンドリング活動は計画されたものであること

  2. システムの原則:一貫した統合システムを計画せよ

  3. マテリアル・フローの原則:最適の流れが得られるように作業順序や設備配列を計画せよ

  4. 純化の原則:不必要な移動や設備の除去・統合・提言を考えよ

  5. 重力利用の原則:できる限り、物の移動に重量を利用せよ

  6. 空間利用の原則:建物空間の最適利用を図れ

  7. ユニット化の原則:取扱い1単位の量、大きさ、重量の増大を図れ

  8. 安全の原則:安全の観点からハンドリングの方法と機器を設定せよ

  9. 機械化、オートメ化の原則:実際的である限り、機械化、オートメ化されたハンドリング機器を用いよ

  10. 設備選定の原則:ハンドリング機器の選定に当たっては、対象物、移動の条件、方法といった総合的な観点から考察せよ

  11. 標準化の原則:ハンドリング機器のタイプ、大きさ、ならびに方法を標準化せよ

  12. 融通性の原則:多様な作業や応用がきくような方法と設備を用いよ

  13. デッドウェイトの原則:対象物に対する風袋の重量比とくに動力つき設備のそれを減らすこと

  14. 「動き」の原則:搬送機器は動き続けるよう設計されていること

  15. アイドル・タイムの原則:ハンドリング機器や作業者のアイドル・タイムおよび非生産的時間を低減せよ

  16. 保全の原則:予防保全や計画的修理をハンドリング機器にも適用せよ

  17. 廃棄の原則:より効率的な方法、機器が現れた場合には、改善のため旧方法、旧設備を更新せよ

  18. コントロールの原則:マテ・ハン機器を工程管理や在庫管理に用いよ

  19. 能力発揮の原則:生産能力のフル発揮にハンドリング機器を活用せよ

  20. パーフォーマンスの原則:ユニット当たりの費用という形でハンドリングの仕事の効率を評価せよ

  

5.「検査」プロセスの削減

検査は管理と品質保証のために必要な工程ですが、付加価値を生むような工程ではありませんので、できる限り削減することが必要となります。改善の視点としては以下あたりかと思います。
  • 不必要な検査を行っていないか
  • 作業中にたいして手間をかけずに検査を行えないか
  • 検査を自動化できないか
  • 治具などの工夫により単純化できないか

なお、必要な検査については、以下の「加工」と同様の分析手法や改善原則を適用することを検討しましょう。

 

6.「加工」プロセスの削減、効率化

加工は、付加価値を生む直接的な工程を指します。しかし、加工工程内を詳細にみると、その中には無駄な作業が含まれていますので、削減、効率化の検討が必要となります。
 

製品設計の見直しによる改善

設計を見直しにより、作業性を改善する方法です。共通パーツにより標準化したり、一体化により組立作業を削減したり、締結用部品を削減したり、品質改善により歩留まりを向上したり、といった内容になるかと思います。
 

生産技術の開発による改善

生産技術を開発し、今の作業方法法を抜本的に見直すことで、作業性を改善する方法です。自社内で技術開発する方法もあれば、世間の新技術を自社に取り入れる方法もあるかと思います。
 

連合作業分析による効率改善

連合作業分析とは、人と機械、2人以上の人が共同して作業を行うとき、その共同作業の効率を高める為の分析手法です。この分析により、手待ちロス、停止ロス(機械干渉)を明確にして、改善の原則(ECRS)などを適用して、そのロスを減少させながら、作業周期の時間短縮、人や機械の稼働率向上、機械持ち台数の適性化、配置人員の削減を図ることができます。 
 

動作経済の原則の適用検討

動作経済の原則をもとに、仕事の方法に改善の余地がないかを検討します。
主な動作経済の原則を挙げると、
①身体部位の使用に関する原則
  • 両手は、同時に動作を始め、あるいは終わる。
  • 両手は、休憩時間以外は同時に休めてはならない
  • 腕の運動は、左右対称的に、また同時に行う
  • 身体の運動部分をなるべく指や手などによる小さい動きで行う。
  • 作業は、落とす、転がす、弾むなどの重力、慣性などの自然な力を利用して容易に行う
  • 動作は自然な姿勢を保ちリズムよく行う。
  • 他の身体部位でできる作業は、手や指や目を使わないようにする。
  • 運動の方向を急に変更せず、連続した曲線状の運動とする。
②作業場の配置に関する原則
  • 工具や材料は、作業者の手の届く定位置に配置する
  • 工具や材料は、作業位置の周辺で、できるだけ作業者の前面に配置する。
  • 工具や材料は、最良の順序で作業がしやすいように配置する
  • 作業台や椅子は、作業者の体格に合わせて正しい姿勢がとれるような高さと形にする
  • 物の供給や搬出は、慣性や重力を利用して行う。
  • 作業の性質に適した通風、温度、湿度、採光および照明を与える。
③工具・設備の設計の原則
  • 機械類の操作は足を有効に使って、手の負担が軽くなるように設計する。
  • 2つ以上の工具は、できるだけ1つに組み合わせる。
  • ハンドルなどの握りの部分は、手のひらに当たり握りやすい形状にする。
  • できるだけ専用の工具を使用する。

 

作業空間の改善

作業者が身体各部を動かすのに必要な作業範囲を作業空間と言い、作業空間には、最大作業域と正常作業域があります。正常作業域内で作業が行えるように改善します。

  • 最大作業域:固定した肩を中心に、手を伸ばした時の手の届く範囲
  • 正常作業域:上腕を体に近づけ、前腕を自然な状態で動かした範囲

 

両手動作分析

両手の動作の順序や仕方を把握し、工程図記号を用いて図表化することで、動作の順序や方法の問題点、手待ち、ムリ・ムダを見つけ、改善する手法。
  1. 図表化
  2. 付加価値を生まない加工以外の作業の割合を見て、削除を検討
  3. 片手が、保持・手待ちの状態が継続していれば両手のバランスをとる。
  4. 手作業を極力減らすように、作業方法の高度化を図る
    (手作業→治具化→機械化→自動化)
  5. 改善のECRSを徹底する

 

映写による分析

作業方法の動画を撮影し、その動画をじっくり見ることで無駄を発見する方法。

 

段取改善

段取り時間の削減を検討します。小ロット化には必須の検討となります。

  1. 段取をよく観察する
  2. 機械を止めなくてもできる仕事をすべて事前準備する
  3. 現在は機械を止めて行っているが、工夫して機会を止めずに行えないか検討する
  4. 機械を止めて行う段取「内段取」を工夫して短縮する。
 

7.リードタイム把握によりPDCA

以上によりリードタイム短縮を進めていきますが、現状のリードタイムはどのくらいで、実施した改善の効果がどれくらいで、結果リードタイムはどのくらいになったのか、を把握し、次の対策を検討するためのPDCAを回すために、リードタイム計測方法を確立しておくことが重要になります。

伝票から把握したり、システムの記録から把握したり、仕掛在庫から把握したり、と生産現場に応じた把握方法を検討してみてください。

 

★★

以上、リードタイム短縮の考え方・進め方について簡単にまとめさせていただきました。リードタイム短縮は、地道な改善が必須となりますので、時間はかかると思いますが、短縮できれば圧倒的な差別化になるかと思いますので、ぜひ検討してみてください。

ではまた。

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