管理会計の概要まとめ
みなさんこんばんは。asiyutaです。
仕事をしながら「この業務って利益に結び付いているのかな…?」と不安に感じたり、「どうすればこの事業は利益を生み出せるのだろう?」と疑問を持ったりすることがあったので、企業が利益を生み出しているかを管理するための方法論である「管理会計」について、最近学んでおりました。
今日は、学びのまとめとして、管理会計の概要をまとめてみたいと思います。
同じように、事業が利益を生み出しているか確認しながら仕事を進めたいけど、方法が分からず悩んでいる方の参考になれば幸いです。
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1.管理会計の役割と機能
管理会計の役割は、戦略策定、経営意思決定、経営管理・業務活動管理を実行・支援することであり、「意思決定会計」と「業績管理会計」の2つの機能に分けられる。
2.意思決定会計とは
意思決定会計とは、企業が直面している個々の問題を解決するため、最適な選択を実行・支援する会計である。レベルに応じて「戦術的意思決定」と「戦略的意思決定」に分類できる。
2-1.戦術的意思決定
戦術的意思決定とは、所与の経営構造のもとで行う意思決定のこと。影響期間は1年未満で、時間価値は考慮しない。
例としては、「加工か販売か」「自製か購入か」「新製品の追加または旧製品の廃棄」「受注を受けるかどうか」「製品セグメントを廃止するか継続するか」「経済的発注量の分析」「最適セールスミックスの検討」などがあげられる。
2-2.戦略的意思決定
戦略的意思決定とは、経営構造の変革を伴うような意思決定のこと。影響期間は1年以上で、時間価値を考慮する。
例としては、「設備投資計画」「新製品開発計画」「経営立地計画」があげられる。
2-3.意思決定会計の方法
意思決定会計のプロセスは、以下の流れとなる。
- 問題の定義
- 実行可能な代替案のリストアップ
- 各代替案の計量的(数字的)な評価
- 定性的要因(数字では表せない要因)の評価
- 最適な代替案の選択
このうち「3.各代替案の計量的な評価」について補足すると
- ある代替案を選択した際の収益・原価がどれだけ増加・減少するかを問題とし、どの代替案を選択しても変わらない収益・原価は代替案の評価に含めない。
- 戦略的意思決定の際は、時間価値を考慮する。経営構造が変わるような巨額の投資を必要とし、期間も長期に渡るため、犠牲になる利子の重要性が高くなるため。
- 戦略的意思決定の際、一般的に採用される評価方法の概要は以下。
- 正味現在価値法:時間価値を考慮した正味現在価値(NPV)の大きさで評価
- 現在価値指数法:指数「NPV/投資額の現在価値」の大きさで評価
- 内部利益率法:「NPV=投資額の現在価値」となる利益率(=内部利益率)と資本コスト等を比較して評価
- 回収期間法:投資額の回収に要する期間で評価
- 投資資本利益率法:「平均利益/投資額」の大きさで評価
3.業績管理会計とは
業績管理会計とは、一定期間の経営活動を統合した全体計画の設定と、その統制を行うことで、業績目標の達成を図ること。予算管理とほぼ同義と考えられ、主な機能としては、「予算編成」と「予算統制」があげられる。
3-1.予算編成とは
予算編成とは、経営戦略・方針に基づき設定した利益計画をもとに、一定期間の業務執行計画を会計数値で表現した「予算」を立案することである。
予算編成では、「損益予算」と「資金予算」を編成する。
損益予算とは
損益予算とは、企業の業績目標(≒利益目標)達成に向けて、収益・費用および棚卸資産の変動を含む次年度の業務計画を貨幣的に表現した予算である。
企業の利益目標としては、一般的に「投資利益率」「利益額」「売上高利益率」が使用される。利益目標の設定方法は、例えば投資利益率を採用する場合は、加重平均資本コストを最低希望利益率として算定し、経済状況や他社状況やリスクを勘案しながら設定する。利益目標を達成するための損益目標の検討では、CVP分析が行われる。
例えば、目標利益額達成に向けた損益予算としては、以下項目が必要となる。
資金予算とは
資金予算とは、次年度の資金の源泉・使途および残高を示した予算である。「運転資本予算」「現金収支予算」「信用予算」を内容としている。
運転資本予算では、資金計画表が作成される。資金計画表では、資金の源泉から資金の使途を差し引いて、運転資本の増減額が計算される。そこでは、借入金の返済計画、増資計画、固定資産や在庫への投資計画が資金面から検討される。
現金収支予算では、資金繰計画表が作成される。前期繰越高に収入を加えて、支出を差し引くことによって、収支過不足が明らかにされる。過不足を処理して、翌期の繰越高が算定される。
資金繰計画表の項目例
- 前月繰越
- 収入
- 支出
- 現金仕入
- 買掛金の支払
- 支払手形期日決済
- 未払金の支払
- 人件費の支出
- その他支出
- 支出計
- 差引過不足
- 財務収支
- 借入
- 手形割引
- 設備投資
- 借入金返済
- 次月繰越
3-2.予算統制とは
予算統制とは、計画した予算を実現するためのプロセスである。予算利益と実績利益との差額を分析する方法である「予算実績差異分析」が主な機能である。
予算実績差異分析の方法は、総額法と差額法の2つに大別される。
総額法(項目別分析)とは、損益計算書を構成するそれぞれの項目別に予算と実績を比較して差異を算定する方法である。なお、差異は価格面・数量面で分析する。
差額法(要因別分析)とは、利益に対して各要因(特に販売量)がいかに貢献したかを直接的に把握するための方法である。貢献利益差異(販売価格・変動費・販売量の差異を分析)、固定費差異(固定製造原価・固定販売費・固定一般管理費の差異)を分析する。
3-3.業績管理会計の運用における重要ポイント
活動計画による裏付け
予算編成・予算管理では、会計数値に焦点を当てているが、この数値を絵に描いた餅にしないためには、裏付けとなる経営活動の計画が必要となる。つまり、非財務業績の目標設定と、目標実現のための実行計画が必要となる。
非財務業績の目標例を挙げる。市場占有率の伸び率、新製品開発比率、特許権出願件数、工場稼働率、スループット(原材料の仕入れから製品納入までの期間)、生産計画の達成度、業務改革の遂行度、製品品質(クレーム件数、仕損数など)、納期順守率、顧客満足度、従業員満足度など。
予算と活動の紐づけ(バランスト・スコアカード)
企業が業績目標を達成するには、単に財務的な業績目標(予算)を管理していればよいのではなく、現場レベルの経営活動が予算にどう結びつくのかを関連付けて管理することが重要である。そして、この予算と活動を紐づけるマネジメントシステムとして、バランスト・スコアカードが一般的に用いられる。
バランスト・スコアカードとは、「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」という4つの視点を用いて、業績評価を行うとともに、企業の戦略を策定・遂行するツールである。
各視点の概要を示すと
- 財務の視点:投資家・株主に対してどのような結果を提供するべきか
- 顧客の視点:財務的な成功を得るために、顧客にどのような結果を提供するべきか
- 業務プロセスの視点:財務的に成功するため、顧客満足を得るため、どのような業務プロセスに優れる必要があるか
- 学習と成長の視点:業務プロセスの改善・変化のため、どのような従業員の能力開発・成長が必要か
4つの視点は、「学習と成長の視点」→「業務プロセスの視点」→「顧客の視点」→「財務の視点」という因果関係が成り立ち、これによって、予算と活動を紐づけて管理することが可能になる。
3-4.製造部門での業績管理会計
製造部門は、コストセンターと呼ばれるように、原価に責任と権限を持つ。よって、原価管理が管理会計の主眼となる。
標準原価計算による原価管理
製造部門の原価管理では、標準原価計算による原価管理が一般的に行われる。
標準原価計算とは、原価の流れのどこかの時点で標準原価を組み入れ、標準原価と実際原価を比較して原価差異を計算分析し、かつその結果を関係者に報告する会計システムである。
標準原価の設定では、直接材料費と直接労務費は生産に必要な単位当たりの標準数量に標準価格を乗じて算定する。製造間接費は、標準製造間接費配賦率に標準作業時間を乗じて製造間接費配賦額を算定する。
原価差異分析では、直接材料費・直接労務費・製造間接費に3区分して分析する。また、原価差異を価格と数量という2要素に分けて計算し、製造間接費の差異分析には固定費が含まれるので予算との対比も行う。
活動基準原価計算とは
活動基準原価計算とは、「原価計算対象が活動を消費し、活動が資源(=製造間接費)を消費する」という基本思想のもとに、製造間接費をその発生原因となる活動を基準にして原価計算対象に跡付ける方法である。
従来の手作業中心の少品種大量生産時代には、製造間接費は操業度を基準に配賦されてきたが、多品種少量生産・FA化・CIM化が進む現在の製造業では、操業度による配賦が適さなくなってきており、本方法が開発された。
各製造間接費(資源)は、各活動(例:設計、段取、運搬、検査、機械、直接作業)に割り当てられ、各活動は、原価計算対象となる各製品に割り当てられる。
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以上、簡単にですがまとめでした。概要把握するだけでなく、使いこなせるようになりたいので、資格の勉強でもしてみようかしら。。
米国公認管理会計士(USCMA)|資格の学校TAC[タック]
また進捗ありましたら、記事にまとめたいと思います。ではまた!
参考書籍
管理会計/櫻井通晴
900ページ越えの辞書みたいな本ですが、管理会計について体系立て、事例も豊富に掲載されている書籍。基礎から積み上げて説明されているので、初学者にもわかりやすいです。なお、分厚さに尻込みしそうですが、1/5くらいは注釈・参考文献なので、そこまでボリューム感は感じませんでした。
CPA管理会計論テキスト
短答対策 (単科/教材) | 公認会計士・簿記の通信講座 | CPAオンライン校
公認会計士試験の科目に管理会計論があります。会計士試験のテキストはあまり市販されていないのですが、CPAのみHPで教材販売をしています。管理会計の要点がまとまっており、かつ例題を通して理解も深めることができます。これ1冊でも十分内容理解できますが、前述の櫻井先生の「管理会計」本を併用することで、かなり理解が深まると思います。
キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード
バランスト・スコアカードを提唱している方が解説した一冊。記事にも書いた通り、バランスト・スコアカードは、財務目標と非財務目標を紐づけ、企業内の活動に一貫性を持たせてマネジメントするために非常に重要なツールであり、管理会計を現場に落とし込む際に必須ツールと考えられる。原著を読み、理解を深めることをお勧めします。
マンガで入門 管理会計が面白いほどわかる本
私は、まずはマンガでわかる系から入ってイメージを掴むことを重視しており、その流れで読んだ一冊。小売店における管理会計の実践例がマンガで紹介されており、イメージがつかめて非常に参考になりました。特に業績管理会計(損益予算の管理方法)がかなりイメージわきました。
マンガでわかる管理会計
マンガでわかる系の2冊目。こちらは製造業における管理会計の実践例が紹介されています。こちらも読むことで、管理会計の実践方法が多角的にイメージできると思います。特に、意思決定会計(追加注文を受けるか、設備投資をするか、等々)の理解がかなり深まりました。