こんにちは、asiyutaです。
最近、事業を成功させるうえで組織・人事分野が非常に重要と痛感する一方、その分野の知見がなくどうすればよいかが全然掴めずモヤモヤする、という経験がありました。
モヤモヤが気持ち悪いので、組織・人事関係の本を読んで、自分なりにポイントが見えてきましたので、頭の整理がてら少しまとめてみようと思います。
同様の問題意識を持たれている方の参考になれば幸いです。
★★組織・人事改革に必要な観点
1.戦略の確認
アルフレッド・チャンドラー氏の「組織は戦略に従う」という言葉があるように、組織・人事を考えるには、まず戦略(全社戦略、事業戦略、機能別戦略)を確認します。
向かうべき方向を認識したうえで、全員が有機的にそこに向かうために、組織・人事制度を設計します。
2.3S(Structure、System、Staffing)
戦略に基づき、組織のハード面である3Sを設計します。
- Structure(組織骨格)
- 組織図として表される組織ユニットとその連関の体系のこと。
- 組織図と合わせて、各組織ユニットのスペックも設計します。(ミッション、ミッション達成度合いのチェック指標、権限、人材(人数・年齢・役職・スキルなど))
- System(制度・ルール)
- 組織を動かすためのルールや規則のこと。
- 意思決定システム(権限範囲、手順体系、情報経路、会議体など)、会計システム、人事システム、が主要3要素。
- Staffing(人材配置)
- 誰をどこに据えるかという具体的(固有名詞)な人材配置のこと。
- 保有人材と、Structureで規定された人材要件のベストマッチを探る作業となります。
↑ここまでがハード面の設計。↓以降は血液である人事システムを詳細に。
3.人材要件・人材フローの設計
どんな人材が必要かと、その人材をどう採用・昇進・退職させるか、の流れを設計します。
- 人材要件として設計する要素
- 人材ポートフォリオ:組織に必要となる人のタイプ・レベルを分類し、分類別の構成比を示したもの。
- 等級・評価基準:人材に求める要件を、業績・成果・能力・行動等でレベル別に詳細化したもの。
- 人材フローとして設計する要素
4.採用
いい人材が採れれば勝手に成果が上がるといっても過言ではないくらい、一番重要な人事領域です。以下プロセスを確実に実行します。
- 要員計画の立案:どんな人材がどのくらい必要かを立案。
- 手段の選択
- あらゆる手段から、要員確保の方法を選択します。
- 優先順位としては、①配置転換(コスト0、即効性)、②育成(コスト0、長期)、③採用(コスト要、採れれば即効性)、④外部委託(コスト膨大、繁閑激しい場合は委託で調整はアリ)。
- 求める人物像を設定
- 演繹・帰納の両面から要件を設定します。
- 後天的要素ではなく先天的要素で絞ることで、現実的な要件に落とし込みます。(後で育成できるものは採用時点では不要)
- 候補者集団を形成:
- PULL型(メディア、エージェント)とPUSH型(リファラル、スカウト)を、自社採用ブランドの強さ・求める人物像から使い分けます。
- PULL型は、まず興味を惹き、その後リアルな現実をありのまま伝えることで、求める人材以外が集まらないように調整します。
- PUSH型は、優秀人材に地道にアプローチします。
- 選考プロセスと選考ツールを設計
- 初期は能力、中期はパーソナリティ、最終は相対的なレベル感、を見ます。
- 面接では、過去エピソード、人と関わって頑張ったこと、苦労したこと、長期に渡ること、嫌だけど取り組んだこと、役割・程度・動機、などから、能力・性格を把握します。
- 歩留まりを設定し、PDCAを回すことで、管理します。(内定率、受験率、書類通過率、筆記通過率、面接通過率、途中辞退率、内定辞退率)
- 内定・入社
- 企業の良いところも悪いところも伝え、ミスマッチを防ぎます。
5.育成
事業戦略につながるよう、以下サイクルを回し、育成を行います。
- 育成目標の設定
- 人材ポートフォリオ、人材フロー、評価基準等を参考に、各メンバーの育成目標を設定します。
- 各個人に設定させても良いですが、会社が期待すべき方向性は示すべきです。
- OJTを軸に育成
- 評価して現状レベルを伝達
- 現状のレベルを伝え、育成目標とのギャップを認識させることで、次の目標設定に活かします。
- 心が折れず、前向きな姿勢を維持できるよう、面談等で励まし、サポートします。
6.評価
評価は、給与等の報酬を決めるという目的も大事ではありますが、それよりも「人材育成」「業績向上」のためのマネジメントツールとして活用することが重要です。
戦略と整合した評価項目・基準・方法により、組織ユニット・メンバーを評価することで、各組織ユニット・メンバーの現状が分かり、何を成すべきかが明示され、次への方向性が示されます。
なお、報酬面での評価制度については、メンバーへ説明可能な制度とし、公平に処遇が分配されていると納得感を得ることが重要です。結果=賞与、行動=昇進・昇格・昇給、能力・性格=採用・異動など、どの評価がどの報酬と紐づいているか明確化することも納得感に繋がります。
7.報酬
モチベーション高く働いてもらうために、報酬を設計します。
報酬は、外から与えられる外的報酬(賃金・社会的地位など)と、仕事そのものから生まれる内的報酬(やりがい等)に分けられます。
外的報酬は不足すると不満に繋がり、内的報酬は充足すると満足に繋がるため、「大きな内的報酬と適度な外的報酬」を目指すのが理想的です。
ハーズバーグの二要因理論と比較すると、内的報酬=動機付け要因、外的報酬=衛生要因、と言えると思います。
- 動機付け要因:「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進・向上」など
- 衛生要因:「給与」「福利厚生」「経営方針・管理体制」「同僚との人間関係」「監督(上司との関係など)」など
外的報酬(特に賃金)の設計方法
- 賃金=基本給+手当+賞与+退職金
- 基本給は、年功、職務、職能の総合的評価で設定。
- 手当は、基本給の補完(資格など)と生活への配慮(居住エリアなど)で設定。
- 賞与は、業務成績に応じて支給。
- 退職金は、長期勤続の奨励程度に応じて設定。
内的報酬の設計方法の参考観点
- 職務特性モデル(ハックマン=オルダム・モデル)に基づくと、業務に以下特徴を持たせることで、やりがいの向上が見込める。
- 技能多様性:単調な仕事ではなく、自分が持つ多様なスキルや才能を活せる
- タスク完結性:始めから終わり(完結)までの全体を理解した上で、関われる
- タスク重要性:他者の生活や社会にインパクトをもたらす重要な仕事
- 自律性:自分で計画をたてたり目標設定したり、自分のやり方で進められる自由度の高い仕事
- フィードバック:結果がどうなったのかを、その都度、知ることのできる仕事
- リクルート「若者を仕事に駆り立てる」心理的条件に基づくと、業務に以下特徴を持たせることで、意欲向上が見込める。
- 自己有能性(自分はできる!):挫折感や自信の喪失などの葛藤を乗り越え自己効力感を体験
- 自己決定性(自分で決める!):自由裁量の幅が大きいだけではなく、自己責任性を伴うこと。
- 社会的承認制(認められている!):努力、苦労、成果が認められることで心理的充足と情緒的安定を得ること。
8.配置
配置は、以下目的で行います。
- 適材適所(組織内での採用活動とも言える)
- 人材育成(配置こそが最も重要な育成手段)
- 組織活性化(部署間コミュニケーション、仕事の属人化防止)
以下ポイントを押さえて行うことが、成否に大きく影響します。
- 働く人が希望していること
- 1人ひとりのキャリアを真剣に考え、丁寧に伝えること
- 配属される人と配属先の構成員・チームとの相性。同質関係・補完関係を意識。
9.代謝
代謝を考えていない組織が多いですが、代謝の少ない組織は、組織構成が歪になり、いずれ痛みを伴うリストラを招きます。
つまり代謝は、組織の人材ポートフォリオを適正に保ち、次世代に育成機会を提供するために重要な施策となります。退職率のコントロールは難しい課題ですが、設定して管理する姿勢が、組織構成の適正化には必須です。
退職率のコントロールには、組織に留めようとする求心力施策と、退職させようとする遠心力施策を使い分けることが重要です。
- 求心力施策の例
- 遠心力施策の例
- 社外を含めた選択肢を検討させるキャリア研修
- セカンドキャリア支援の退職金
- 早期退職による退職金の上積み
- 役職定年制度 など
★★
以上、簡単にですが組織・人事改革のポイントを整理しました。
引き続きブラッシュアップしていこうと思います。
ではまた!
おすすめ書籍
1.組織設計概論/波頭亮
戦略に基づき、いかに組織制度を設計するか、ロジカルに描かれた一冊。古い本だけど、エッセンスは何も変わらないことが分かる。
2.図解人材マネジメント入門 / 坪谷邦生
帯に「この1冊で、すべてが分かる」と記載がある通り、人事の全領域が網羅されている。見開きに1メッセージが図解されており、非常に明瞭。また、多様な書籍出典が明記されており、この1冊を軸に色々と深堀するのもよさそう。
3.人事と採用のセオリー / 曽和利光
「セオリー」と題するのが納得の1冊。人事の全体を描いたうえで、採用のセオリーを明確に示しており、靄が晴れる想いで読んだ一冊。
4.人事評価制度のつくり方 / 山元浩二
企業のビジョン実現に向けて、組織・構成員をどう方向づけ、マネジメントするかのツールとして、人事評価制度をいかに設計し、運用すればいいかが分かる一冊。評価制度設計の際に参考にさせていただいた。
5.人事評価の教科書 / 宮川淳哉
4と同様、企業のビジョン実現に向けて、組織・構成員をどう方向づけ、マネジメントするかのツールとしての人事評価制度の設計方法を学べた一冊。4・5両方読むと、かなり掴める。
その他
経営戦略概論 / 波頭亮
1の著者が、経営戦略の歴史的潮流を描いた1冊。なぜ今「組織・人事」分野が重要となってきているか、その背景が分かる。
人事の超プロが明かす評価基準 / 西尾太
評価基準が多数例示されており、参考になる。