asiyutaの日記

知識・経験・思考のまとめ

生産管理の役割・生産方式の種類まとめ

知識の整理がてら、生産管理関係の情報をまとめていきたいと思います。

今日は、生産管理の役割、方式の種類についてです。

生産管理をこれから学ぶ人や、既に取り組んでいる人の頭の整理の参考になれば幸いです。

 

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1.生産管理の役割とは

色々な定義から考えると、

所定のQCDで生産、又はQCDを最適化するため、バリューチェーンの上下流(開発・営業)と調整し、経営資源(人、物、金、情報)を駆使し、需要予測、生産計画、生産実施、生産統制を行う活動のこと

とまとめられるかと思います。

 

①JIS

生産管理 財・サービスの生産に関する管理活動。

具体的には,所定のQCDで生産するため、又は最適化を図るため、経営資源(人、物、金、情報)を駆使して、需要予測、生産計画、生産実施、生産統制を行う手続き及びその活動。

 

②玉木欽也「戦略的生産システム」、白桃書房、1996年

顧客の要求や販売予測による販売計画に基づいて、人・設備などの生産能力を検討し、営業や設計との調整を図って、生産計画を決め、資材を調達する。生産に対して、品質・原価・納期の標準や目標を計画し、生産指示し、製造実施をする。稼働状況を監視し、計画と実績の差に対する適切な処置をし、初期の目標に近づける活動をする。実施結果を分析・評価し、次の計画に反映させる。 

 

③五十嵐瞭「多品種少量生産の生産管理改善」、日刊工業新聞社、1997年

生産管理とは、生産活動に伴って発生する機会損失を最小化する活動。機会損失の発生を最小限にとどめて、コストダウンと収益の最大化を図ることが生産管理の終局的な目的。
そのために必要なことは、

  • 顧客の要求する製品を決められた納期までに提供すること。
  • 所定の品質水準の維持を図ること
  • 納期(納入期間)、生産期間を短縮すること
  • 材料、仕掛品、製品などの在庫の削減を図ること
  • 人、機械設備を最大限、効果的に活用すること
  • 材料の効果的活用、節約を図ること

 

2.生産形態の種類

生産の分類と特徴を把握することで、考えの枠組みを手に入れましょう。

1)生産時期での分類

①見込生産
  • 需要を見越して、受注前に生産を行う形態。
  • 主な課題は、①需要予測の精度の向上、②需要予測と連動した生産実施、③生産リードタイムの短縮、により無駄な在庫を作らないこと。
②受注生産
  • 注文を受けてから生産を行う形態。
  • 主な課題は、①コスト・納期見積もり精度の向上、②生産リードタイムの短縮、③受注の平準化、により適正コスト・納期で仕事を受け、受注負荷を分散しつつ、顧客に早く商品を届けること。

 

2)品種数・生産量での分類

①多種少量生産
  • たくさんの品種を少量ずつ生産する形態。
  • 品種ごとに生産数量・納期・加工順が異なり、工場内での物の動きが錯綜しやすい。量産による効率化が見込みにくい。
  • 課題は、部品の共通化・標準化や、グループテクノロジー(似た仕様・加工順の製品をグループ化する技法)などで、多様性を吸収すること。
②少種多量生産
  • 少ない種類の製品を大量に生産する形態。
  • 生産量の変動が少なく、寿命が長く、生産量が安定している製品は、専用ライン化される。
  • 機械の専用化、作業の単純化が進めやすく、間接作業の削減等の効率化もしやすいので、生産性が高く、生産リードタイムも短い。逆に、作業が単調になりやすかったり、連続作業による疲労等の肉体・精神的問題が起こりやすい。

 

3)生産指示方法での分類

①押出型(プッシュ型)
  • あらかじめ定められたスケジュールに従い、生産活動を行う管理方式。
②引取り型(プル型)
  • 後工程から引き取られた量を補充するためにだけ、生産活動を行う管理方式。(有名なトヨタ生産方式はこれ)

 

4)仕事の流し方での分類

①個別生産
  • 個々の注文に応じて、その都度1回限りの生産を行う形態。代表例は船舶、注文住宅など。
②ロット(バッチ)生産
  • 製品ごとにある数量でグルーピングし、その数量単位で生産を行う形態。
  • ロットサイズは、段取時間、発注コスト、保管コスト、納期等を考慮して決定する。
  • ロットサイズが大きくなると、段取替え回数が減るが、リードタイムは伸びる。サイズが小さくなると、段取替え回数は増え、効率は下がるが、リードタイムは短くなる。(工程ごとのロット待ち時間が短くなるから)
③連続生産
  • 1つの製品を一定期間、連続して生産する形態。代表例は、清涼飲料、加工食品など。
  • 生産効率は良いが、需要の変化の影響を受けやすい。

 

5)レイアウトでの分類

①製品別レイアウト(フローショップ型)
  • 生産設備を原材料から製品までの変換過程に従って直線的に配置するレイアウト=ライン生産
  • 特徴は、①少種多量生産に適す、②単純化・標準化・専用機械化による効率化がしやすい、③生産LTが短い、④仕掛在庫を削減しやすい、⑤一部の機械が故障すると、ライン全体を停止しないといけない、⑥製品加工順序の変更に対応しにくい、⑦万能熟練工を育てにくい
②機能別レイアウト(ジョブショップ型)
  • 同じ種類の機械や設備を1か所に集めて配置するレイアウト
  • 特徴は、①多種少量生産に適す、②運搬経路が複雑で納期管理が難しい、③製品の変更に対してのリスクは少ない(機械の配置等変えなくてもよい)、④設備稼働率を高められる、⑤作業者育成が容易
③固定式レイアウト
  • 大型機械などの組立工程で行われるレイアウト。生産対象は定位置にあり、そこに生産設備や工具を運んで作業を行う
  • 特徴は、①作業者や機械工具の移動が多くなる、②重量物である製品の移動は最小限で済む。
セル生産方式(学術的。GT活用)
  • 部品の類似性(形状・寸法・素材・工程など)に基づいてグループ化し、その部品グループに対して加工する機械・工程をグループとして編成する生産方式。(この考え方をグループテクノロジーと呼ぶ)
  • 多種少量生産の柔軟性を確保しつつ、多量生産的な効果(運搬の手間・間接作業の削減等)を図ることを意図。
セル生産方式(俗称。1人生産セル・U字ライン、屋台方式等)
  • 1人または複数人の作業者が、1つの製品を作り上げる方式。
  • 設備・工具が設置された可動式作業台を組み合わせて自由に作業セルを作り、生産量の変動はセル数(作業者数)で対応することが多い。
  • 作業者は多能工(多工程持ち)となり、不良の発見がしやすくなったり、作業の単調感は減るが、習熟に時間がかかる。新製品の切替や、育成の遅延により、生産性が低くなる(習熟ロス)。「作りやすさ」を意識した設計等が重要になる。
  • 工程間の受け渡しが減ることで、工程間の生産量のばらつき等による滞留が減り、仕掛品が少なくなる。また工程の同期化も進み、作業効率も高くなる。

 

6)組合せまとめ

多種少量-受注生産 -個別生産 -機能別・固定式・セル

中種中量-受注or見込-ロット生産-製品別・機能別・グループ別

少種多量-見込生産 -連続生産 -製品別

 

 

3.生産管理方式の種類

1)オーダーエントリー方式

  • 生産工程にある製品に顧客のオーダを引き当て、製品の仕様の選択又は変更をする生産方式。
  • 乗用車を例に挙げると、ライン上の顧客が決まっていない標準車に、顧客からの注文仕様として引き当てて使用を変更したり、仕様変更を顧客が決まっている製品間で相殺・調整することで、顧客の要望・市場の変化に、短期間で適応する方法

 

2)生産座席予約方式

  • 受注時に、製造設備の使用日程・資材の使用予定などにオーダを割り付け、顧客が要求する納期どおりに生産する方式。
  • イメージとしては、生産能力・生産期間を座席と見立て、営業部門があたかも列車や飛行機の座席を予約するような感覚で、顧客の希望する製品の出荷を予約するもの。
  • 利点は、①販売と生産の両部門が、共通の情報でリアルタイムに需要と供給を調整できる、②受注見積もりの時点で、信頼できる納期を提示できる、③生産部門は販売部門からの受注情報を早い段階で入手できるので、資材調達などの生産準備を精度良く行うことができること。
  • 生産と営業の連携を、定型フォーマットを用いて高めることが一番の利点と考えられる。

 

3)製番管理方式

  • 製造命令書を発行するときに、その製品に関するすべての加工と組立の指示書を準備し、同一の製造番号をそれぞれにつけて管理を行う方式。
  • 部品展開、材料・部品の購買指示、納品管理、生産現場への生産指示、進度管理、原価管理など、すべて製番を用いて管理する管理手法。理解しやすい管理手法で、製品単位に確実な手配・工程進捗度の状況の把握が可能になる。
  • 個別生産や、小ロット生産で用いられることが多い。

 

4)追番管理方式

  • 追番とは、累積生産数による一貫番号のこと。
  • 追番管理とは、製品・部品の生産計画に「計画追番」を、実績に対して「実績追番」を付け、計画追番と実績追番との差により進度管理を行う管理方法。
  • 利点は、①計画に対する生産の進遅が明確になり、部品の生産数量の過不足が防止しやすい、②ロット生産における不適合品発生時の処理が容易になる、③完成品の最終の追番と指示した最終の追番から仕掛数量が分かり、完成品や仕掛品の現品管理が容易になること。

 

5)トヨタ生産方式

徹底したムダの排除により、原価低減を実現する生産方式。「JIT」と「自働化」の2本柱により確立。

JIT(Just In Time)

需要に合わせて、必要な品目を、必要な時に、必要な量だけ生産する生産方式。その肝は「平準化生産」と「かんばん方式」。

平準化生産とは、最終市場の顧客は1人1人違った車を1台ずつ購入することを踏まえ、最終市場の需要に合わせて平準化生産することで、需要と供給のバラツキを抑え、前工程(=生産ライン全体)のバラツキを最小化し、ムダを最小化すること。(最終工程のちょっとした差は、前工程にいくにつれてどんどん大きな差となる=ブルウィップ効果)。この実現のために、段取改善、小ロット化、標準作業の徹底、等が重要となる。

かんばん方式とは、後工程引取方式を実現するための仕組。以下のように生産指示かんばんと、引取かんばんの2種類のかんばんを用いることで、各工程での生産の同期化を実現する。

  • 前工程:置き場にある生産指示かんばんが付いた完成部品が後工程に引き取られると、生産指示かんばんが外れる。外れた生産指示かんばんに基づき、必要数量生産し、また生産指示かんばんを付けて作った部品を置場に置く。
  • 後工程:前工程の置場の部品から生産指示かんばんを外して、引取かんばんを付けて、部品を引き取る。その部品を加工に使う際に引取かんばんを外す。外した引取かんばん分をまた前工程に引取りに行く。
自働化

異常が発生したら機械が止まる仕組みの実現。これにより、異常箇所を見える化し、原因を特定し、異常が起きない生産ラインへ改善を進めることができる。また、異常が起きた時だけ対応すればよいため、省力化・多台持ちが進み、結果、省人化・少人化と繋がり、原価低減を実現している。 

 

6)MRP(Material Requirement Planning:資材所要量計画)

生産計画情報、部品構成表情報、在庫情報に基づいて、資材の必要量と時期を求める生産管理体系。所定の数量の製品を作るのに必要な材料、部品の所要量を計画する仕組み。JITが引取型に対し、MRPは押出型の生産形態をとる。流れは以下の通り。

 

①基準生産計画(MPS)の策定

需要情報と製品在庫をもとに、正味の生産必要量を算出し、基準生産計画をタイムバケット単位で策定。(※タイムバケット:生産計画を考える基準期間。その期間単位で生産数量を計画する。週単位が多い?)

②資材の所要量の算出

部品表を使って、基準生産計画の生産に必要な部品、資材の所要量を算出する。(※部品表(BOM:Bill Of Material):各部品・製品を生産するのに必要な子部品の種類と数量を示すリスト。)

③正味所要量算出

②で算出した資材の所要量に対して、在庫や発注残を差し引いて、正味の必要量を算出する。

④ロット編成、日程計画の策定

発注単位からロット編成を計算する。資材調達の標準リードタイムから、資材が必要となる時期(=タイムバケット)と発注予定日を決める。

⑤資材の発注

何を、いつまでに、どれだけ納品するか、を社内外に発注し、手配する。

 

MRPでは生産能力は無限にあると仮定している欠点があり、その後、工程能力を考慮したMRPⅡ(Manufacturing Resource Planning Ⅱ:製造資源計画)や、企業全体の経営資源を最適化したERP、供給連鎖全体を最適化したSCMへと進化を遂げる。

 

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以上、ざっとまとめました。

トヨタ生産方式については、時間があったら深堀しようと思います。

 

ではまた!

 

※参考書籍