ダウン症候群について調べたことまとめ
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胎児が「ダウン症の疑いあり」と指摘されたときに調べた情報源まとめ - asiyutaの日記
★★
1.ダウン症候群とは?
- 体細胞の21番染色体が通常より1本多く存在し、計3本(トリソミー症)になることで発症する先天性疾患群。現時点で治療法はなし。発見者ラングドン・ダウン博士の名前をとって名付けられた。
- 身体的発達の遅延、特徴的な顔つき、軽度の知的障害が特徴。
- 合併症を引き起こす可能性が高い。
- 平均800〜1000出生あたり1人に現れる。
- 出生児の3〜5%は先天性疾患を持って生まれ、染色体異常はそのうちの1/4、ダウン症はさらにその53%。(3/4は生まれてからじゃないと分からない疾患)
- 教育と早期ケアによりQOLが改善されることが見込まれる。
- 平均8 - 9歳の精神年齢に対応する軽度から中度の知的障害。
- 平均寿命は50〜60歳。
2. ダウン症児の一生
(1)妊娠・出産期
- 出生前診断によって発見が可能。
- ダウン症候群の平均出生頻度は800〜1000人に1人だが、35歳を超えると急激に上昇。35歳では300人に1人、40歳では85人に1人。
- 合併症の確率は、心疾患50%、消化管奇形(10%)、てんかん(10%)、甲状腺疾患、耳鼻科疾患、眼科的疾患等。
- 合併症等の治療を迅速に行うため、NICU(新生児特定集中治療室)を有する産院での出産が望ましい。
(2)産後〜乳幼児期
- 合併症がある場合は、体力がつき次第手術等により治療。
- 成長はゆっくり。1つの動作に2〜3ヶ月かかることも。通常の倍かかる覚悟を。成長の順番は健常児と概ね同じ。
- 目安は、1人で歩くのが1〜2歳、話始めが2〜3歳、1人でトイレが4〜5歳。
- 療育、訓練で発達が促されるので諦めずに。
(3)幼稚園・保育所・通所施設
- ダウン症の子供でも、幼稚園・保育所に通うことが可能。
- 保育園は39.8%、通所施設は39.8%、幼稚園は14.4%が通っている。
- 健常児の園児たちも受け入れてくれているよう。
- 1人で移動できないのが課題(どこに行くにも親が連れて行かないといけない)
(4)小学校
- (通常学級)、特別支援学級、特別支援学校の3つの選択肢。
- 普通学級は11.1%、特別支援学級は46.3%、特別支援学校は30.3%が通っている。
- 小学校の放課後は、移動支援従業者さんに連れられて学童クラブ(〜小学6年生まで)に通ったり。小学校レベルでも移動問題あり。
- 健常児と同じように思春期を迎えるため、性教育も必要。好きな異性にアピールするために襲ってはいけないことや、女の子なら月経への対処も教えることが必要。
- 親が居なくても生きていけるように、早くからショートステイを経験させることが重要。
(5)中学校・高校
- 中学は、普通学級が4.3%、特別支援学級が24%、特別支援学校は41%。
- 高校は、普通科が0.7%、特別支援学校が53.3%、高等特別支援学校の普通科が15.3%、高等特別支援学校の職業科が1.3%。
- 放課後は、①放課後デイサービス、②ヘルパーさんと目的地(習い事、ショートステイ等)へ移動、③ヘルパーさんと自宅待機、④鍵っ子 等の選択肢がある。
- 中3くらいになるまでは、移動問題あり。一人で移動は難しそう。
(6)高校卒業後
- ①一般企業の障害者枠や特例子会社へ就労、②障害福祉サービスの日中活動系の障害者支援施設への通所 が選択肢。
- 年収は、30万以下が60.4%、100万異常が9.8%。
- 早期老化が見られる。また肥満問題も顕著。
(7)親なきあと
- 生活の場は、①障害者支援施設、②グループホーム、③ひとり暮らし、④兄弟や親族との生活
- 親が居なくなったあとの日常の見守りは、福祉サービスを積極的に利用。兄弟や親族には頼りすぎると破綻しやすい
- 必要な準備は、
①定期的にお金の入る仕組みを用意(年金、手当、信託など)
②そのお金が子供の生活に使われる仕組みを用意(成年後見、日常生活自立支援事業)
③生活の場=住む場所を確保
④入院のリスクに備えて医療保険に加入
⑤困ったときに頼られるルートを確保 - 「親なきあと」の準備は、最終結論は「社会との接点をたくさんつくりましょう」に集約される
3.家族の苦労
(1)金銭面(https://down-station.net/down-hoken-info)
- 国からの助成等で、成人まではなんとかなりそう。
- 健常児と違い、成人後も生活費等の金銭援助は継続して必要な様子。
(2)時間面
- 親がついていないとできない事が多く、かなりの時間を費やすことになる。
- 健常児であれば、成人すれば手は離れるが、成人以降も面倒を見ることが多い
(3)仕事
- 共働きしている家庭もいるが、合併症のため入院が続いたり、福祉制度を活用できなかったり、一人で移動できないから付き添いが必要だったり、1人で居させられなかったりと様々な理由で、仕事を諦めないといけない場面は多々ありそう。
(4)周囲との人間関係
- 社会とのつながりを作ってあげることが何より大事なので、いろんな人との関係づくりが必要そう。
- 健常児の子育てとはかなり異なるため、悩み・喜びを心から共有できるママ友とかはできにくそう。
- 兄弟児がいる場合、周りからの目、親亡き後の負担、等を背負う可能性あり、フォローが必要。
4.出生前診断
(1)検査の大分類
- 流産リスクはない確定しない「スクリーニング検査」と、流産リスクはあるが確定する「確定診断」がある。
- まずスクリーニング検査を行い、その結果を受けて確定診断を行うかを判断する流れとなる。
- スクリーニング検査後に確定診断すべきかは、スクリーニング検査のダウン症確率と、確定診断の流産確率を比較して判断。
(2)スクリーニング検査
(2−1)母体血清マーカー検査
- 妊婦から採血し、血中の成分を分析する検査方法。
- 3つの成分(AFP、hCG、uE3)を調べる「トリプルマーカーテスト」と、そこに1成分(InhibinA)を加えた「クアトロテスト」がある。
- 妊娠15〜18週の採血を使用。
- 胎児が「ダウン症」・「18トリソミー」・「開放性神経管欠損症」かの確率がわかる。
- 検査の正確性は低い。クアトロテストを受けた妊婦19112人のうち、9%(1763/19112)が基準値よりも高い陽性、うち実際にダウン症候群だったのがあったのは2.2%(39/1763)。陰性のうち、0.03%がダウン症(6/17349)
(2−2)超音波検査によるスクリーニング検査
- 超音波検査により把握した特徴から、胎児の染色体異常等の可能性を推測する検査。
- 先天性疾患である可能性を判断する指標をソフトマーカーと呼び、よく用いられる指標が妊娠11〜13週6日に見られる胎児の首の後のむくみ(NT:Nuchal Translucyncy)。
- NT肥厚による先天性疾患の判断基準として、3mmや3.5mmを基準とする医師が多い。(明確な基準値はない。NTはほぼすべての胎児に存在する)
- ただし、3.5~4.4mmであっても約80%の胎児は染色体異常ではないし、6.5mm異常であっても35%の胎児は染色体異常ではなかったとの報告がある。
- 英国の大規模研究では、ダウン症児のうちNT肥厚だったのは58%と報告あり。
- 通常の妊婦健診でも偶然NT肥厚が見つかることはあるが、正確なNT計測には経験や訓練が必要で、専門的な訓練を積んだ医師がいる医療機関でなければ厳密な計測は困難。
- 費用は1〜2万円。
(2−3)複合スクリーニング検査(母体血清マーカ検査+超音波検査)
- 超音波検査によるNT(11週〜13週6日)の測定と、血液検査を組み合わせて確率を出す方法。4種類ある。
- ①妊娠初期コンバインド検査
・11週〜13週6日に実施
・血液中の妊娠関連血漿タンパク質(PAPP-A)とhCGを調査、NT測定値と組み合わせる
・胎児が「ダウン症候群」と「18トリソミー」である確率を出す。
・費用は3〜4万円。 - ②統合型スクリーニング検査
妊娠初期コンバインド検査+妊娠15週以降のクアトロテストにより、「ダウン症」、「18トリソミー」、「開放性神経管欠損症」である確率を出す。 - ③段階的逐次型スクリーニング検査
妊娠初期コンバインド検査の段階と、15週以降のクアトロテストの段階の2段階で確率を出す。妊娠初期コンバインド検査の段階で陽性の場合、絨毛検査に移る。 - ④血清統合スクリーニング検査
NTを確立計算に使わない。NT測定の有資格者がいる医療機関に通院していない場合や、胎児の状態によってNT測定が不可能な場合の選択肢。
(2−4)新型出生前診断(NIPT)
- ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミーかがわかる。
- 妊娠10週〜分娩まで実施可能だが、〜16週が推奨。
- 臨床研究段階であり、対象者は以下に限られる
①胎児超音波検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された方
②母体血清マーカー検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された方
③染色体数的異常を有数ルジを妊娠した既往のある方
④高齢妊娠(35歳以上)の方
⑤両親のいずれかが近郊型ロバートソン転座を有していて、胎児が13トリソミーまたはダウン症候群となる可能性が示唆される方 - 原理は、胎盤から妊婦の血液中に漏れ出てくる胎児由来のDNA(cffDNA:cell free fetal DNA)の断片の塩基配列を読んで、それがどの染色体に由来しているかを識別。各染色体のcffDNA断片の量と、それがcffDNA全体に占める割合を計算し、健常児の割合と比較することで検査。
- たとえば、妊婦さんの血中のcffDNA全体に占める21番染色体のcffDNAの割合が健常児の割合より多い場合、ダウン症の可能性が高いと判断。
- 陽性的中率・陰性的中率が従来の非確定検査よりも高い
年齢 陽性的中率 陰性的中率
25歳 51% 99.9990%
30歳 61.3% 99.9986%
35歳 80.0% 99.9964% - 検査理由別の陽性率
高齢妊娠 1.6%
出産既往 1.8%
超音波マーカー 18.5%
母体血清マーカー 0%
染色体転座 0%
(3)確定診断
- 細胞を採取し、培養して増やし、染色体の数的異常、構造異常を調べる
- 検査結果がわかるのは2〜3週間後
- 費用は10〜20万円
- 対象は以下に限られる。
①夫婦のいずれかが、染色体以上の保因者である場合
②染色体異常症に罹患したこどもを妊娠、分娩した既往を有する場合
③高齢妊娠の場合
④妊婦が新生児期もしくは小児期に発症する重篤なx連鎖遺伝病のヘテロ接合体の場合
⑤夫婦の両者が、新生児期もしくは小児期に発症する重篤な常染色体劣性遺伝病のへトロ接合体の場合
⑥夫婦の一方もしくは両者が、新生児期もしくは小児期に発症する重篤な常染色体優性遺伝病のヘテロ接合体の場合
⑦その他、胎児が重篤な疾患に罹患する可能性がある場合
(3−1)絨毛検査
- 胎盤を構成している絨毛を採取する絨毛穿刺を行う
- 流産リスク0.5~1.0%(1/200~1/100)(羊水検査より高いのは、妊娠初期のほうが自然流産の頻度が高いため)。出血、感染、流産などの合併症のリスクがある。
- 妊娠10〜14週に実施。
- 手技的な熟練を要し、できる産科医が少ない
- 1%でモザイクが検出。ただし、ほとんどは絨毛組織・胎盤のみに存在するモザイク。
(3−2)羊水検査
- 妊婦さんの腹部に細い針を指して羊水を採取する羊水穿刺
- 流産リスクは0.2~0.3%(1/500~1/300)。破水、感染、出血、流産などのリスクがある。
- 妊娠15〜16週以降に実施。
5.人工妊娠中絶
(1)初期中絶(12週未満)
- 子宮内容除去術として掻爬法(そうは法、内容をかきだす方法)または吸引法(器械で吸い出す方法)を実施。
- 子宮口をあらかじめ拡張した上で、ほとんどの場合は静脈麻酔をして、器械的に子宮の内容物を除去する方法
- 通常は10 〜15分程度の手術で済み、痛みや出血も少ないので、体調などに問題がなければその日のうちに帰宅可
(2)中期中絶(妊娠12週〜22週未満)
- あらかじめ子宮口を開く処置を行なった後、子宮収縮剤で人工的に陣痛を起こし流産させる方法
- 個人差はあるが、体に負担がかかるため通常は数日間の入院が必要
- 妊娠12週以後の中絶手術を受けた場合は役所に死産届を提出し、胎児の埋葬許可証をもらう必要がある
- 中絶手術はほとんどの場合、健康保険の適応外
- 妊娠12週以後の中絶手術の場合は手術料だけでなく入院費用もかかるため経済的な負担も大きい
- 人工妊娠中絶手術を実施できるのは母体保護法により指定された『指定医師』のみ。母体保護法指定医と標榜している医療機関でこの手術を受けることになる
(3)法的解釈
- 刑法 第二十九章 堕胎の罪
(堕胎)
第二百十二条 妊娠中の女子が薬物を用い、又はその他の方法により、堕胎したときは、一年以下の懲役に処する。
(同意堕胎及び同致死傷)
第二百十三条 女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させた者は、二年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させた者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
(業務上堕胎及び同致死傷)
第二百十四条 医師、助産師、薬剤師又は医薬品販売業者が女子の嘱託を受け、又はその承諾を得て堕胎させたときは、三月以上五年以下の懲役に処する。よって女子を死傷させたときは、六月以上七年以下の懲役に処する。
(不同意堕胎)
第二百十五条 女子の嘱託を受けないで、又はその承諾を得ないで堕胎させた者は、六月以上七年以下の懲役に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
(不同意堕胎致死傷)
第二百十六条 前条の罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 - 母体保護法
(医師の認定による人工妊娠中絶)
第14条 都道府県の区域を単位として設立された社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
2 前項の同意は、配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の同意だけで足りる。 - 堕胎罪に抵触するが、母体保護法の経済的理由を拡大解釈して、免責している。かなり曖昧な状態。
- 母体への影響は、手術後に感染症になったり、子宮を傷つけて子宮穿刺や腹膜炎などを起こさなければ、妊娠しにくくなるような心配はほとんどありません。
(4)欧米の結論
- 欧米では、出生前診断の是非は、「結論は出ない、という結論に達した」とのこと。是非は決められないので、当事者1人ひとりの意思決定を尊重することになった。
6.社会補償制度
- 障害福祉サービス予算はここ10年で2倍になっている。
- GDPに占める障害福祉予算の割合は、先進国最低レベル(http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/18879202.pdf)
- 少子高齢化が進む、成長せず貧しくなっていく日本、出生前診断が一般化するに連れてダウン症児の出生数は減少、等の状況の中、どの程度制度が整っていくのか…。
以上。