前回記事からずいぶん時間がたっちゃいましたが、今日は自治体の財政破綻について学ぶため、夕張市の破綻事例を取り上げ、整理してみたいと思います。
夕張市財政破綻の経緯
- 1888年に炭鉱が見つかり、その後炭鉱の町として発展していく。
- 1960年に最多人口116908人を記録(現在は約9500人)。一方、国のエネルギー政策が石炭から石油に転換し始め、その後衰退の一途をたどる。
- 1990年に三菱南大夕張炭鉱が閉山し、市内すべての炭鉱が閉山。
※補足1.炭鉱の町の社会インフラ
- 「炭鉱から観光へ」を合言葉に、リゾート開発を推進。
※補足2.リゾート開発の経緯
※補足3.人々の意識
(住民)
- 炭鉱会社は、労働者の生活を手厚く保証してきた。例えば、炭鉱全盛期は、炭鉱会社が労働者の住宅・光熱水費を全て負担するなどが行われてきた。
- この背景のもと、夕張市の住民の中には、「お上が何とかしてくれる」姿勢があったものと思われる。
- 2006年秋、再建団体移行に向けた住民説明会では、市全体6600世帯のうち、4000世帯が公営住宅に入居しており、家賃滞納世帯20%越え。払えるのに払わないケースが多数あることが報告されている。
(行政)
- 夕張市では中田市長が1979-2003年にわたりワンマン政権を築く。中田市長の口癖は「国がエネルギー転換を推進して夕張をつぶしたんだから、国が夕張を面倒見るのは当たり前」。
財政破綻のポイントはどこ?
個人的には3つあると思う。
①炭鉱の閉山処理を夕張市が実施する選択をしたこと。この選択により、583億円の費用が掛かった。(負債総額632億円と比較しても、問題の一番の引き金であることが分かる。)
しかし、閉山処理をしなければ、炭鉱で働いていた労働者たちはどうなっていたのか。仕事を失った彼らに、住むところすら追い出す様なことが果たしてできたのか。
「住民の生活を守るためにコストかけます」は通用するけど、「お金ないので、みなさんその土地を去ってください」は、通用しないであろう。
②社会の流れにのって、採算度外視のリゾート開発に着手したこと。この選択により、赤字施設を抱え込むことに。
しかし、これについても、「雇用を守る」は通用するけど、「お金ないので働き口は引っ越しとかして他で探してくださーい」は通用しないであろう。
③メロンと炭鉱以外に産業を見出せなかったこと。
観光って、みんな飛びつくけど収益そんな簡単にあがらんよね。
まとめと感想
- 夕張市財政破綻の要因は、炭鉱の閉山処理とリゾート開発の推進。
- しかしそこには、住民の生活を守るべきか、それとも自治体財政の健全性を守るべきかの難しい選択があったと推察される。
- 閉山処理とリゾート開発に着手した動機は分からなくもないが、閉山処理を、もっとローコストでできなかったのか。観光活性化を、もっと費用対効果高くできなかったのか。金をぶっこむ以外の住民の生活を保障する方法はなかったのか。この辺りに疑問が残る。
- そして、観光で頑張ろうとしている地域をたくさん見かけるけど、実際問題観光で地域を活性化させることって可能なのかにすごく疑問がわいてきた。
次回の予告
次回は、観光での地域活性化を取り上げる予定。
おすすめ情報・おすすめ本等あれば教えていただけるとありがたいっす。
2週間後の12月16日(火)あたりを目標にちまちま積み上げていきますわ。
簡単ですが、今日はこの辺で ノシ
★参考文献
↑夕張だけでなく、全国の事例を広く取り扱っており、入口にはよさげ。
↑さすが研究者と言わんばかりに、問題点を端的に指摘している印象。国・道の責任についても指摘されている本はあまりないのではないだろうか。
↑新聞記者さんが作っただけあって、住民、関係者の生のコメントがふんだんに掲載されていて、財政破綻の過程を垣間見ることができた。とてもおススメ。
↑すっごい平易に、しかし大事なことはおさえて書いてくれてる本。入門書に最適。