asiyutaの日記

知識・経験・思考のまとめ

中山間地域は縮小しつつQOLを高めよう(実際1年住んだ感想)

みなさんこんばんは。

 

数年前に、仕事の関係で山間部に1年間住んだことがありました。

その1年間は、おそらく自分史上1、2を争うくらい濃密な1年で、平地に住んでいては全く知ることのなかった世界を知ることができましたし、同僚も素晴らしい人たちばかりで、今思い返しても楽しい思い出なのですが、中山間地域について色々と感じ、思うこと(もっとこうすればいいのに、という現地の人に中々話しづらい内容)も溜まった1年間でした。

 

今日は、ふとその頃のことを思い返すきっかけがありましたので、中山間地域について感じたことをまとめたいと思います。

ご不快になられた方がいれば申し訳ありませんが、「よそ者」の一感想として何らかの参考になれば幸いです。

 

★★

 

1.中山間地域の行政は、身の丈に合った事業を行おう

山間部に住んでまず気になったことが、「こんな誰も住んでいないところで、何でこんな公共工事してんの?」でした。

1日に数十台しか車が通らないであろう道路の拡幅工事をしていたり、数人しか住んでいないような集落でうん十億円単位の災害対策工事が行われたり、幹線からは外れ迂回路もあるような道路にある橋梁の補修が行われていたり、等々。

数十年後そこに人住んでるの?そこに投資するよりもっと優先投資すべき箇所がその地域内にもあるんじゃないの?そんな税金の使い方するなら若者世代の子育て支援とかに使ってよ!等々言いたくなるような状況でした。

そして、そのエリアに住む住民たちも、行政に「あれをしてくれ」「これをしてくれ」と要望を上げるのでした。

 

なんというか、いまだに現状維持できると思っている節があり、おいおいちょっと待ってよ、毎年人口も減っていて、予算も縮小していくんだから、もうちょっと現実を見て投資をしようよ…と強く感じました。経営感覚を持った人がいないというか…。

 

決して「衰退しろ」と言っているわけではなく、現実を見て、人口が減ってもしっかりインフラを機能させて安心安全に生活できるエリアと、そうじゃないエリアを切り分けて、投資すべきところ、メンテナンスすべきところに少ない予算を割り当てようよ、ということを言いたいわけです。

 

まぁ、縮小基調の行政運営というノウハウがなく、地域の合意も非常に取りにくいので、なかなか難しいのかな…とは思いますが、今後そのエリアに住む人たちのQOLを高めるためにも、「日本は縮小基調に入ったよ」ということを認識して、経営してほしいと感じました。

 

2.ふもとの拠点都市と一体になったまちづくりをしよう

次に気になったことが、「山間部に住む人、めっちゃ山降りて街に行くやんっ」ということでした。

休みの日は、山のふもとの街のマッサージ屋に行ったり、大型ショッピングモールで買い物したり。持病を持つ親を通院のため週数回ふもとの総合病院へ連れて行ったり。

山間部のそのエリアだけでは経済が成り立たず、ふもとの拠点都市にかなり依存していることが分かりました。山間部もふもとの拠点都市の経済圏に含まれているんだと。

 

であれば、行政区を取っ払って、ふもとの拠点都市と同一行政区としてしまって、一体となったエリア設計をしてしまったほうが、色々と効率的で都合がいいんじゃないの?と感じたわけです。基本的に経済圏単位で都市経営するほうが、投資と回収が一致して合理的な経営ができるので。

 

市町村合併と聞くと抵抗ある人は多いかもしれませんが、もう生活の実態としてふもとの街なしではやっていけないのであれば、実態に即してまちづくりしやすいように、形を変えるべきだよなぁーと感じました。

 

3.税金を浪費するのではなく、エリア外からお金を得て、エリア内で循環する民間事業を増やそう

次に感じたことが、「山間部の仕事の結構な割合が、税金絡んだ仕事(もしくは郵便のような半公共の仕事)だな」ということでした。

ほんと、公共投資無くなったら、仕事がなくてこの地域の人々かなり減るんじゃないか…と心配になるくらい。地方の経済基盤は公共事業と年金とはよく聞きますが、それを肌で実感しました。

 

とはいえその地域にも学校があって、次世代の若者はいるわけで、地域の発展を願うなら、エリア外からお金を稼ぎ、エリア内で循環させる「民間」事業が必要だよなぁ~難しいけどそこ目指さないと先がないよな~~~と強く感じました。

 

幸いにも私が住んだその山間部は「温泉地」であり、キャンプができる河川もあり、ツーリングしたくなるような道もあり、歴史も深いエリアでしたので、地域の資源を活かした事業を起こし、育て、それを見た子供たちが次を担って、、、という流れが少しでもできれば、人口は減りつつもQOLは高まり、幸福度は高められるんじゃないかと。

 

実際問題すごく難しいとは感じます。ですが、まだ「温泉」という圧倒的強みがあるので、何もないエリアよりは有利かと思いますので、ぜひ頑張ってほしいなと、無責任ながらに感じておりました。

 

★★

 

以上、かなり雑多な内容にはなりましたが、当時感じていたことはこのような内容だったかと思います。

久々に思い返しても、濃密で楽しい1年間でしたので、今は都市部に生活拠点を戻してしまいましたが、いずれ何らかの形で恩返しというか、力になれればなと思います。

 

ではまた。

 

※参考文献:本体験を考える際に色々読んでいた本の一部

①撤退の農村計画

建設的に、過疎地域の人々がそこに住み続けることによって不幸せにならないように、戦略的に撤退するにはどういう視点が必要かをまとめた本。
こういう論調で書いている人があまりいないから、すごく貴重な提言。

 

② 農山村は消滅しない

増田レポートのカウンター本的位置付?の1冊。フィールドワーカーでもある筆者の知見がふんだんに詰まった1冊で、冷静に農山村地域の現状と未来を見ることができる。

農山村は消滅しない (岩波新書)

農山村は消滅しない (岩波新書)

 

 

限界集落の真実

経済合理性で限界集落を語る人に対抗する1冊。

集落外の人々も含めて、その土地に関わる人々がどのように生きていきたいのかをベースに集落の存続を考えるという視点はなるほどなと思った。

限界集落の真実―過疎の村は消えるか? (ちくま新書)
 

  

④まちづくり構造改革

地域が豊かになるとはどういうことかが分かる1冊。この本は本当に本当におすすめ。

まちづくり構造改革-地域経済構造をデザインする

まちづくり構造改革-地域経済構造をデザインする

  • 作者:中村 良平
  • 発売日: 2014/03/01
  • メディア: 単行本
 

 

⑤朽ちるインフラ

現状維持で公共投資し続けたら、そのうちインフラ維持できなくなって、生活が立ち行かなくなるよ、ということが分かる1冊。

朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機

朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機

  • 作者:根本 祐二
  • 発売日: 2011/05/25
  • メディア: 単行本
 

 

⑥大阪-大都市は国家を超えるか

都構想の話が盛り上がっていた時に読んだ本。大都市の権限・財源をどうするべきかについてこれまでの経緯を踏まえつつ論じている。行政区割りが具体的にどのような問題を引き起こしているのかを理解するのに役立った。 

大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)

大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)

  • 作者:砂原 庸介
  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: 新書