先日、鹿児島県に旅行に行きました。初めて行った土地、色々気づきがあり、楽しい旅となりました。
本日は、旅行に絡めて鹿児島県の都市経営の状況について調べたので、頭の整理がてらまとめてみたいと思います。
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1.鹿児島県の概要
鹿児島県は、九州の最南端に位置する。鹿児島湾を囲むように土地があり、中心に桜島が位置する。多くの離島を有し、沖縄県のギリギリまで島が続いている。屋久島・種子島・奄美大島などが有名。
地理的特徴としては
- 離島が多く、島数は605個あり
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中国・韓国・東南アジア諸島に近い
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古くから活火山として知られる桜島をはじめ、噴火活動の頻度の高い火山が多くある。温泉の数も多く、泉源数は約2,730で、大分県に次いで全国2位。
- 県全土が火山灰堆積物に覆われており,約半分は軽くて灰色の火山灰のシラス台地。水はけがよく非常に脆い。低地や平野が極端に少ない。垂直で切り立った崖が目立つ。
- 世界遺産は3つ保有。自然遺産で屋久島(1993年登録)、奄美・徳之島(2021年登録)、文化遺産で明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業(2015年登録)
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1960年代と2015年の航空写真を比較すると、ほとんど町割が変わらないことが分かる。これは、江戸時代から薩摩藩藩主の島津家がまちづくりを行ってきたことや、明治維新の産業化の中心地の1つとして都市化が進んでいたことが要因と予想する。
ちなみに、鹿児島市内は再開発事業の真っ最中で、真新しい商業ビルが立ち並んでいました。勢いを感じた…
2.鹿児島県の人口
鹿児島県の人口は、2020年時点で158万人。1935年には現在とほぼ同数の159万人おり、その後の戦後ベビーブームなどを経て1955年に204万人を記録し、その後減少に転じたとのこと。昔から栄えていた地域であることが分かる。
また、老年人口比率は2020年時点で32%(全国平均28.8%)、2045年には41%になると見込まれており全国よりも進行しているが、比較的緩やかか。
3.鹿児島県の都市圏
鹿児島県の昼夜間人口比率は99.88%。他県流出・流入はなく、独立した都市圏を形成していることが分かる。
また、鹿児島市の昼夜間人口比率も101.17%であり、県内での移動は一定あるものの、職住近接的な状況にありそうな様子。
4.鹿児島県の交通状況
鉄道網は、熊本・宮崎と接続されている。県内は鹿児島中央駅を中心に放射状に伸びている。県東部は、宮崎県との結びつきの方が強そうな印象。
道路網も、鉄道網と似たような様子。山が多い地形のため、鉄道・道路を通せる平野・谷筋が絞られているのだろう。
航空網は、国内線は東京までの就航あり。東京以北は乗換が必要となるので、観光・産業でリーチできるエリアには制限がありそう。
国際線は、韓国・上海・台湾・香港と就航。アジアとのネットワークを有す。
航路に関しては、離島との接続、および海外クルーズ船の寄港がある。クルーズ船はコロナ明けの2023年は回復している模様。コロナ前は中国船が多かったが、現在はマルタ船籍が多い模様。
なお、旅行時にタクシーの運転手さんに聞いた話では、コロナ前は、中国本土から鹿児島港に船で来て、朝入港・日中観光・夜出港という格安弾丸ツアーが多かったそう。このツアー客は、日中の食事は船から持参・土産物はコンビニ購入とお金は落とさず、一方でゴミやトイレ利用は発生するので、地元は困っていたよう。このあたりの事情を鑑みて、寄港旅客船を見直しているのかもしれない。
最後に各エリアからのアクセス時間だが、国内線空路は1~2時間、国際線空路・国内陸路は1~4時間。アジアからのアクセスの良さがやはり印象的。
5.鹿児島県の財政状況
次は、鹿児島県の財務状況です。
主要財務指標の状況を見ると、軒並み悪そう。特に一人当たり人件費・物件費・職員数の悪さが目立つ。
経常収支比率の推移を見ても、継続して全国平均を下回っており、コロナ前は97%付近を推移していた模様。ほぼ自由に使える財源はなく、硬直的な財政。
将来負担比率の推移を見ても、継続して全国平均を下回っており、220%付近。
実質公債費比率も、全国平均を下回っている。負債(将来負担比率)が大きいので、返済費用である公債費も多いということと思われる。
歳入・歳出の推移をみると、財政規模は8000億円強。歳入では依存財源が70%弱を占めている。歳出では、投資的経費は減少傾向、扶助費は増加傾向にある模様。
建築物とインフラ施設の更新費は、長寿命化をやった場合で年300億円。今、投資的経費と維持補修費を合わせて1600億円ほどの支出になっているので、新規投資を更新に振り替えれば、賄えそう…?
6.鹿児島県の産業状況
鹿児島県の企業数は、卸売業・小売業(25.5%)、宿泊業・飲食サービス業(13.8%)、生活関連サービス業・娯楽業(11.1%)が上位3業種で全国平均より多い。日常生活関連企業・観光関連企業が多いと思われる。
従業者数でみると、卸売業・小売業(23.2%)、医療・福祉(21.1%)が上位2業種。特に医療・福祉の従事者の割合が多い。
付加価値額を見ると、医療・福祉(22.3%)、卸売業・小売業(19.7%)、製造業(13.4%)、建設業(9.6%)が上位。ここでも、医療・福祉の高さが目立つ。
労働生産性を見ると、全国平均を大きく下回る。
地域経済循環図を見ると、循環率は83.3%。地域外から「その他所得(交付税・社会保障給付・補助金など)」での流入が一定あるが、民間投資額・その他支出(地域内産業の移輸出-移輸入)で地域外へ流出してしまっている状況。
移輸出入収支額は、マイナス8000億。プラスは電子部品・デバイス(3277億円)、農業(2167億円)、マイナスは情報通信業(2407億円)、卸売業(2035億円)。
求人倍率は1.19倍で、全国平均を下回っている。1倍は超えているが、相対的に仕事不足の状況なのかもしれない。
7.観光
鹿児島県の宿泊者数は全国25位で609万人泊。隣接の熊本県・大分とほぼ同数で、エリアとしての誘因力がこのくらい、ということと思われる。
国内では、九州内が3割強、関東からが3割弱、関西からが2割弱、中部からが1割弱。
海外では、コロナ前の令和元年でみると、香港が3割、韓国が19%、台湾が18%、中国が15%。アジアからが多い。
温泉地は、霧島エリアと指宿エリアに集中。ただ、泉源数は大分県に次いで全国2位な一方、温泉地としての知名度は低い印象。
8.鹿児島県の東証プライム上場企業
①株式会社マルマエ
半導体とFPDの製造に使う消耗品を主に製造しているメーカー。
②株式会社新日本科学
CRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)という、企業、医療機関、行政機関等の依頼により、医薬品、医療機器、食品(特定保健用健康食品)、化粧品等の臨床開発及び臨床試験(治験)に関わる業務を、受託、または労働者派遣等で支援する外部機関の事業を行う企業。
③九州フィナンシャル・グループ
熊本ベースの肥後銀行と鹿児島ベースの鹿児島銀行が合併してできた銀行。
9.所感
- 都市の歴史は古く、中心地である鹿児島市には県人口の4割ほどの人口が集積しており、都市化が進んでいる。都市圏も独立しており、長く自立した地域。
- 他地域から外貨を稼ぐ「基盤産業」が弱い印象。牛・豚・茶・さつまいも・ウナギなどの1次産業が強い印象があったが、比率はわずか。製造業も立ち上がっておらず、外貨を稼ぐ術があまりなさそう。その結果が、求人倍率に出ているのかな…と。経済圏として独立しているので、維持し続けるために基盤産業がもう少しほしいところ。
- 観光は、もう少し何とかなりそう。
- まず有名温泉地がないのが勿体ない。大分にならってもう少し強化できないか。。
- 世界遺産は3つ有するが、現状のままではなかなか難しい印象を持った。コアターゲットを定めて商品開発とマーケを頑張ってほしい。
- 土産物は、歴史があるので、色々と商品開発できそう。個人的には薩摩切子に圧倒的に心惹かれたが、もう少し手に取りやすい価格になれば。。買う層がいるならあの価格帯でもいいとは思う。
- 産業・観光ともに、アジアとの距離感をどう使うかがすごく重要な印象(これは薩摩藩時代から変わらない)。シリコンアイランドもアジアとのアクセスの良さが加速させている。観光もそう。
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日本の主要都市圏から距離があるので、正直旅行前は期待していなかったのですが、訪れるとすごく魅力ある都市であることが分かり、応援したい気持ちが強くなりました。
ではまた!