asiyutaの日記

知識・経験・思考のまとめ

鹿児島県の都市経営の状況を概観してみた

先日、鹿児島県に旅行に行きました。初めて行った土地、色々気づきがあり、楽しい旅となりました。

本日は、旅行に絡めて鹿児島県の都市経営の状況について調べたので、頭の整理がてらまとめてみたいと思います。

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1.鹿児島県の概要

鹿児島県は、九州の最南端に位置する。鹿児島湾を囲むように土地があり、中心に桜島が位置する。多くの離島を有し、沖縄県のギリギリまで島が続いている。屋久島・種子島奄美大島などが有名。

鹿児島県の全体図(出典:Google earth

 

地理的特徴としては

  • 離島が多く、島数は605個あり
  • 中国・韓国・東南アジア諸島に近い

  • 古くから活火山として知られる桜島をはじめ、噴火活動の頻度の高い火山が多くある。温泉の数も多く、泉源数は約2,730で、大分県に次いで全国2位。

  • 県全土が火山灰堆積物に覆われており,約半分は軽くて灰色の火山灰のシラス台地。水はけがよく非常に脆い。低地や平野が極端に少ない。垂直で切り立った崖が目立つ。
  • 世界遺産は3つ保有。自然遺産で屋久島(1993年登録)、奄美・徳之島(2021年登録)、文化遺産明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業(2015年登録)

鹿児島県/地理(概要)

ちゃんと知ってる? シラスの基礎知識 | 井村先生のぼうさいの時間 | KTS鹿児島テレビ

鹿児島県 - Wikipedia

 

1960年代と2015年の航空写真を比較すると、ほとんど町割が変わらないことが分かる。これは、江戸時代から薩摩藩藩主の島津家がまちづくりを行ってきたことや、明治維新の産業化の中心地の1つとして都市化が進んでいたことが要因と予想する。

鹿児島市内の1960年代航空写真(出典:地理院地図HP)

鹿児島市内の2015年航空写真(出典:地理院地図HP)

ちなみに、鹿児島市内は再開発事業の真っ最中で、真新しい商業ビルが立ち並んでいました。勢いを感じた…

鹿児島市内の再開発事業一覧(出典:鹿児島県庁HP)

 

 

2.鹿児島県の人口

鹿児島県の人口は、2020年時点で158万人。1935年には現在とほぼ同数の159万人おり、その後の戦後ベビーブームなどを経て1955年に204万人を記録し、その後減少に転じたとのこと。昔から栄えていた地域であることが分かる。

また、老年人口比率は2020年時点で32%(全国平均28.8%)、2045年には41%になると見込まれており全国よりも進行しているが、比較的緩やかか。

鹿児島県/国勢調査による県人口の推移

鹿児島県の人口推移(出典:RESAS)

 

 

3.鹿児島県の都市圏

鹿児島県の昼夜間人口比率は99.88%。他県流出・流入はなく、独立した都市圏を形成していることが分かる。

また、鹿児島市の昼夜間人口比率も101.17%であり、県内での移動は一定あるものの、職住近接的な状況にありそうな様子。

鹿児島県の昼夜間人口構成(出典:RESAS)

鹿児島市の昼夜間人口構成(出典:RESAS)

 

 

4.鹿児島県の交通状況

鉄道網は、熊本・宮崎と接続されている。県内は鹿児島中央駅を中心に放射状に伸びている。県東部は、宮崎県との結びつきの方が強そうな印象。

鹿児島県の鉄道網(出典:yahoo地図)

 

道路網も、鉄道網と似たような様子。山が多い地形のため、鉄道・道路を通せる平野・谷筋が絞られているのだろう。

鹿児島県の道路網(出典:yahoo地図)

 

航空網は、国内線は東京までの就航あり。東京以北は乗換が必要となるので、観光・産業でリーチできるエリアには制限がありそう。

鹿児島空港の国内線航空網(出典:鹿児島空港HP)

 

国際線は、韓国・上海・台湾・香港と就航。アジアとのネットワークを有す。

鹿児島空港の国際線航空網(出典:鹿児島空港HP)

 

航路に関しては、離島との接続、および海外クルーズ船の寄港がある。クルーズ船はコロナ明けの2023年は回復している模様。コロナ前は中国船が多かったが、現在はマルタ船籍が多い模様。

なお、旅行時にタクシーの運転手さんに聞いた話では、コロナ前は、中国本土から鹿児島港に船で来て、朝入港・日中観光・夜出港という格安弾丸ツアーが多かったそう。このツアー客は、日中の食事は船から持参・土産物はコンビニ購入とお金は落とさず、一方でゴミやトイレ利用は発生するので、地元は困っていたよう。このあたりの事情を鑑みて、寄港旅客船を見直しているのかもしれない。

鹿児島港の航路網(出典:鹿児島県HP)

鹿児島県のクルーズ船寄港推移(出典:鹿児島県庁HP)

鹿児島港の2023年入港状況(出典:鹿児島県庁HP)

 

最後に各エリアからのアクセス時間だが、国内線空路は1~2時間、国際線空路・国内陸路は1~4時間。アジアからのアクセスの良さがやはり印象的。

鹿児島県へのアクセス時間(出典:JETRO HP)

 

 

5.鹿児島県の財政状況

次は、鹿児島県の財務状況です。

主要財務指標の状況を見ると、軒並み悪そう。特に一人当たり人件費・物件費・職員数の悪さが目立つ。

鹿児島県の債務指標レーダーチャート(出典:RESAS)

 

経常収支比率の推移を見ても、継続して全国平均を下回っており、コロナ前は97%付近を推移していた模様。ほぼ自由に使える財源はなく、硬直的な財政。

鹿児島県の経常収支比率推移(出典:RESAS)

 

将来負担比率の推移を見ても、継続して全国平均を下回っており、220%付近。

鹿児島県の将来負担比率推移(出典:RESAS)

 

実質公債費比率も、全国平均を下回っている。負債(将来負担比率)が大きいので、返済費用である公債費も多いということと思われる。

鹿児島県の実質公債費比率推移(出典:RESAS)

 

歳入・歳出の推移をみると、財政規模は8000億円強。歳入では依存財源が70%弱を占めている。歳出では、投資的経費は減少傾向、扶助費は増加傾向にある模様。

鹿児島県の歳入推移(出典:鹿児島県公共施設等総合管理計画)

鹿児島県の歳出推移(出典:鹿児島県公共施設等総合管理計画)

 

建築物とインフラ施設の更新費は、長寿命化をやった場合で年300億円。今、投資的経費と維持補修費を合わせて1600億円ほどの支出になっているので、新規投資を更新に振り替えれば、賄えそう…?

建築物の更新費用推移(出典:鹿児島県公共施設等総合管理計画)

インフラ施設の更新移費用推移(出典:鹿児島県公共施設等総合管理計画)

 

6.鹿児島県の産業状況

鹿児島県の企業数は、卸売業・小売業(25.5%)、宿泊業・飲食サービス業(13.8%)、生活関連サービス業・娯楽業(11.1%)が上位3業種で全国平均より多い。日常生活関連企業・観光関連企業が多いと思われる。

鹿児島県の企業数(出典:RESAS)

 

従業者数でみると、卸売業・小売業(23.2%)、医療・福祉(21.1%)が上位2業種。特に医療・福祉の従事者の割合が多い。

鹿児島県の従業者数(出典:RESAS)

 

付加価値額を見ると、医療・福祉(22.3%)、卸売業・小売業(19.7%)、製造業(13.4%)、建設業(9.6%)が上位。ここでも、医療・福祉の高さが目立つ。

鹿児島県の付加価値額(出典:RESAS)

 

労働生産性を見ると、全国平均を大きく下回る。

鹿児島県の付加価値額マップ(出典:RESAS)

 

地域経済循環図を見ると、循環率は83.3%。地域外から「その他所得(交付税社会保障給付・補助金など)」での流入が一定あるが、民間投資額・その他支出(地域内産業の移輸出-移輸入)で地域外へ流出してしまっている状況。

鹿児島県の地域経済循環図(出典:RESAS)

 

移輸出入収支額は、マイナス8000億。プラスは電子部品・デバイス(3277億円)、農業(2167億円)、マイナスは情報通信業(2407億円)、卸売業(2035億円)。

鹿児島県の生産額の移輸出入収支(出典:RESAS)

 

求人倍率は1.19倍で、全国平均を下回っている。1倍は超えているが、相対的に仕事不足の状況なのかもしれない。

鹿児島県の求人倍率(出典:厚労省鹿児島労働局HP)

 

 

7.観光

鹿児島県の宿泊者数は全国25位で609万人泊。隣接の熊本県・大分とほぼ同数で、エリアとしての誘因力がこのくらい、ということと思われる。

鹿児島県の宿泊者数(出典:鹿児島県HP 観光統計)

 

国内では、九州内が3割強、関東からが3割弱、関西からが2割弱、中部からが1割弱。

鹿児島県内の宿泊者数の発地構成(出典:鹿児島県庁HP 観光統計)

 

海外では、コロナ前の令和元年でみると、香港が3割、韓国が19%、台湾が18%、中国が15%。アジアからが多い。

国籍別外国人宿泊者数(出典:鹿児島県庁HP 観光統計)

 

温泉地は、霧島エリアと指宿エリアに集中。ただ、泉源数は大分県に次いで全国2位な一方、温泉地としての知名度は低い印象。

鹿児島県内の温泉地(出典:じゃらんHP)

 

8.鹿児島県の東証プライム上場企業

①株式会社マルマエ

半導体とFPDの製造に使う消耗品を主に製造しているメーカー。

(株)マルマエの概要(出典:(株)マルマエHP)

マルマエ組織図(出典:マルマエHP)

マルマエの業績推移(出典:マルマエHP)

マルマエ主要製品(出典:マルマエHP)

マルマエ中期経営計画(出典:マルマエHP)

 

②株式会社新日本科学

CRO(Contract Research Organization:医薬品開発業務受託機関)という、企業、医療機関、行政機関等の依頼により、医薬品、医療機器、食品(特定保健用健康食品)、化粧品等の臨床開発及び臨床試験(治験)に関わる業務を、受託、または労働者派遣等で支援する外部機関の事業を行う企業。

新日本科学の概要(出典:新日本科学HP)

新日本科学の事業概要(出典:新日本科学HP)

新日本科学のセグメント別業績(出典:新日本科学HP)

 

③九州フィナンシャル・グループ

熊本ベースの肥後銀行と鹿児島ベースの鹿児島銀行が合併してできた銀行。

九州フィナンシャル・グループ概要(出典:九州フィナンシャル・グループHP)

九州フィナンシャル・グループの営業基盤(出典:九州フィナンシャル・グループHP)

シリコンアイランド九州(出典:九州フィナンシャル・グループHP)

 

9.所感

  • 都市の歴史は古く、中心地である鹿児島市には県人口の4割ほどの人口が集積しており、都市化が進んでいる。都市圏も独立しており、長く自立した地域。
  • 他地域から外貨を稼ぐ「基盤産業」が弱い印象。牛・豚・茶・さつまいも・ウナギなどの1次産業が強い印象があったが、比率はわずか。製造業も立ち上がっておらず、外貨を稼ぐ術があまりなさそう。その結果が、求人倍率に出ているのかな…と。経済圏として独立しているので、維持し続けるために基盤産業がもう少しほしいところ。
  • 観光は、もう少し何とかなりそう。
    • まず有名温泉地がないのが勿体ない。大分にならってもう少し強化できないか。。
    • 世界遺産は3つ有するが、現状のままではなかなか難しい印象を持った。コアターゲットを定めて商品開発とマーケを頑張ってほしい。
      • 世界遺産のうち2つが離島の自然遺産。長期旅行者がメインターゲットになりそうだが、若者世代は長期旅行せず、リタイアシニア層は趣向や体力面でミスマッチ感、ちょっと難しそう。離島の世界遺産に数日費やす価値を作り出すか、手軽に体験できるように交通網を整備するか。欧米系の自然ツーリズムに慣れている層をコアターゲットにして商品開発したほうが良い印象。
      • 一方文化遺産はリタイアシニア層にドンピシャマッチしそう。国内向けに商品開発をしつつ、文化観光に慣れた海外顧客に裾野を広げていけるとよい印象。
    • 土産物は、歴史があるので、色々と商品開発できそう。個人的には薩摩切子に圧倒的に心惹かれたが、もう少し手に取りやすい価格になれば。。買う層がいるならあの価格帯でもいいとは思う。
  • 産業・観光ともに、アジアとの距離感をどう使うかがすごく重要な印象(これは薩摩藩時代から変わらない)。シリコンアイランドもアジアとのアクセスの良さが加速させている。観光もそう。
    • 観光は、離島自然遺産をニセコなどの自然ツーリズムに訪れる顧客層に訴求できれば、もう少し伸びないか。
    • 農業は、海外富裕層向けに輸出することで、高付加価値路線にいけないか。
    • 半導体産業の九州進出の果実をしっかり掴み取りたい

 

金融経済トピックス : 日本銀行福岡支店

薩摩切子が彩る豊かな生活 | 島津薩摩切子オンラインショップ – ㈱島津興業 島津薩摩切子

 

★★

 

日本の主要都市圏から距離があるので、正直旅行前は期待していなかったのですが、訪れるとすごく魅力ある都市であることが分かり、応援したい気持ちが強くなりました。

 

ではまた!

福井県の現状を調べてみた

こんにちは、asiyutaです。

 

先日、家族で福井県に旅行する機会がありました。ルートとしては、福井駅→恐竜博物館→芦原温泉越前松島水族館鯖江市→福井駅、という流れだったんですが、道中いたるところに恐竜のオブジェがあったり、恐竜博物館が素晴らしかったり、空き家が幹線沿いに目立ったり、すごく刺激的な旅行となりました。

 

刺激されている内に色々調べてしまおう、ということで、今日は福井県の現状と展望を少しまとめてみたいと思います。

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1.福井県の地形・歴史

福井県は、北陸地方に位置している。北は石川県、南は岐阜県滋賀県京都府に隣接している。北部の福井市エリアに福井平野という平野部があるが、その他は山間の地形がほとんど。日本海に面しており、豪雪地帯である。

出典:Google Earth

 

もともとは越前国若狭国。明治には石川県と滋賀県だったとのこと。木の芽山麓を境に嶺北・嶺南に、また敦賀市美浜町を境に旧越前国・旧若狭国に分かれる。

出典:早わかり福井~福井統計データブック~令和3年度版

 

出典:早わかり福井~福井統計データブック~令和3年度版

 

2.福井県の主要交通網、都市圏

福井市から隣接主要都市へのアクセスについてみてみましょう。

同じ北陸地方の中心地金沢市へのアクセスは、1時間程度。一方、京都市名古屋市へは、一旦敦賀へ出たうえで、琵琶湖の西・東沿いを南下する必要があり、どちらも2時間程度を要します。ちなみに東京へは、そこからさらに2時間近くを要し、4時間はかかる見込み。

交通的には北陸地方での結びつきが強そうです。

出典:Google Maps

 

また、高速交通ネットワークの整備も予定されています。

この2023年には福井県内の福井市敦賀市間に新幹線が開通。2030年までには新大阪までの延伸を計画しています。

一方、リニア中央新幹線も長期的には開通が予定されており、リニアが全線開通すれば、福井市から東京へは2時間強で移動できることが見込まれています。

高速交通網の整備により、都市の距離感はますます近くなっていきそうです。

出典:第2期ふくい創生・人口減少対策戦略

 

また、通勤通学圏を確認してみると、福井県民の99%は日中も福井県内に滞在していることが分かります。主要都市圏とは交通アクセス的に距離があるため、独立した都市圏を形成していることが分かります。

また、福井市の状況も見てみると、福井市に通勤・通学が多いということもなさそう。割と職住近接な生活をしている人が多いのかもしれません(仮説)。

出典:RESAS

出典:RESAS

 

3.福井県の人口推移

福井県の人口ですが、総人口は2015年時点で78万人、2040年に64万人。高齢化率は2015年時点で22.5%、2040年に24.1%となっています。

出典:第2期ふくい創生・人口減少対策戦略

 

人口ピラミッドを見ると、25~29歳の世代がへこんでいる様子が分かります。大学進学や就職時に県外流出している様子が予想されます。

出典:福井県勢要覧令和5年版

 

4.福井県の財政状況、インフラ更新計画

福井県の財政状況を確認してみましょう。

まず目につくのが、人口あたりの人件費・物件費・職員数の大きさです。かなり非効率な行政経営がなされているのでしょうか。ただ、福井県の記事を見ると「全国最小レベルの職員数」みたいな記載も目についたため、原発関係で何かからくりがあるのかもしれません(調べられてないです)。

次に、実質公債費比率の高さが目につきます。行政経営を借入(公債)で賄っている傾向にあり、財政の余裕が小さいようです。ただ、その割に将来負担比率は小さくなっておりますので、単に当該年度の公債費比率が高く振れただけの可能性が高そうです。

 

出典:RESAS

出典:RESAS

 

次に、歳入・歳出の状況を見ていきましょう。

一般会計の規模間は、5000億円程度。

歳入は、県税が2割、交付税・国庫支出金などの国からの資金が4割、県債が15%、という状況。全国の都道府県平均値と比較すると、県税は少な目、地方交付税は多め、国庫支出金は少な目、地方債は多め、という状況です。

県税少な目、地方債多めということで、財政の資金繰りはあまりよくない状況ではありそうです。

出典:福井県公共施設等総合管理計画

出典:総務省令和5年版地方財政白書

 

一方歳出は、人件費が2割、公債費が13%、投資的経費が2割、行政的経費が4割という状況。全国平均と比較すると、人件費が多め、公債費返済額が少な目、投資的経費が多めとなっています。

投資的経費が多めなのが非常に意外です。新幹線開通に向けた投資ということなのでしょうか…。

出典:福井県公共施設等総合管理計画

出典:総務省令和5年版地方財政白書

 

次に、インフラ施設の老朽化状況・更新見通しを見てみましょう。

老朽化状況は、まず橋梁・横断歩道橋・排水機場・海岸保全施設・空港施設で現時点でも4割以上が更新時期を迎えている状況が分かります。

そして、20年後の2040年頃は、半数以上の施設が更新時期を迎えることになります。

高度成長期に建設した施設が、いよいよ一斉に更新時期を迎える時期が到来します。朽ちるインフラ問題ですね。

出典:福井県公共施設等総合管理計画

 

そして、老朽化したインフラ施設を更新していけるのかですが、長寿命化対策を施せば、現在要している経費+7億円/年程度のコストで何とかしていけそうとのこと。

社会保障費の圧迫が予想される中ではあるので、取捨選択を急ぎつつ、長寿命化策を施して、何とかインフラ施設の維持に努めたいところですね。

出典:福井県公共施設等総合管理計画

 

次に、公共施設の老朽化・更新見通しです。

公共施設は、庁舎系が4割弱、県立学校が3割強、その他が残りを占めます。

出典:福井県公共施設等総合管理計画

 

老朽化状況は、現時点で、庁舎系が5割、県立学校が8割弱、警察施設が5割、県営住宅が7割、更新時期を迎えています。そして、2040年頃には、ほぼすべての施設が更新時期を迎えます。

インフラ施設(50年)に比べて公共施設(30年)は耐用年数が短いため、老朽化問題は深刻ですね。

出典:福井県公共施設等総合管理計画

 

更新見通しは、長寿命化対策をしたとしても、現在の経費+60億円/年を要するとのこと。

抜本的な取捨選択を早期に行い、残す施設・エリアと、諦める施設・エリアの選別を急ぐ必要がありそうです。

出典:福井県公共施設等総合管理計画

 

5.福井県の産業

福井県の産業状況を見てみましょう。

福井県は、繊維産業、機械産業、眼鏡産業が盛んのようです。その他、日本海を活かした水産業、平野部での農業、県土の75%を活かした林業、あとは全国の25%を占める原発産業を有しているようです。

出典:福井県庁HP

出典:Wikipedia福井県

 

企業数でみると、全国平均と比べ、卸売業・小売業、製造業、宿泊業・飲食サービス業、建設業の占める比率が多いようです。

卸売・小売は、低密な都市の広がりにより、小規模商店が多いのかも。

宿泊業は、芦原温泉やスキー場を有していることに起因していそう。

建設業は、豪雪地帯の除雪需要も大いに影響していそう。

製造業は、前述のとおり繊維・眼鏡(金属系)・機械系の製造業が強いとのことでしたので、その裏付けでしょう。

出典:RESAS

 

従業者数としては、製造業で一番吸収しているようですね。

出典:RESAS

 

付加価値額も製造業が顕著。

医療・福祉も高比率を占めていますが、これはなぜなのだろう…。

出典:RESAS

 

県の労働生産性は、全国平均よりは低め。ただ、製造業に関しては高水準を誇っています。後述する電子デバイス・化学・電気機械の影響が大きそう。

出典:RESAS

 

その強い製造業の内訳が以下。事業所・従業者数は繊維が多いですが、付加価値額では電子・デバイスや化学・電気機械が上位に来ます。眼鏡関係であろう金属系は中位に位置。

電子・デバイス関係で大型工場が稼働しているということなんですかね。

出典:2023年版福井県企業立地ガイド

 

産業用地は、嶺北・嶺南の両方に立地。原発関係の税制優遇策も企業立地に向けた補助メニューとしては提供されていたので、そのあたりでうまみがあるのかも。。

出典:2023年版福井県企業立地ガイド

 

労働力の確保としては、女性もかなり働く風土の様子。工業系の高等学校も一定あり、製造業に必要な人材確保を県内で行いやすい環境と思われます。(定員数が少ないので、人数に不足はありそう)

出典:2023年版福井県企業立地ガイド

 

有効求人倍率は2倍近くを継続して推移。人手不足が深刻な様子。建設や医療・介護分野での不足が特に大きいとの記事も見受けられました。

出典:2023年版福井県企業立地ガイド

 

6.恐竜・鯖江メガネ・繊維業

福井県の特色である恐竜・鯖江メガネ・越前織物を見ていきたいと思います。

 

竜王国福井

福井県が恐竜王国となったきっかけは、昭和57年に福井県勝山市中生代白亜紀前期のワニ化石が発見されたことのようです。ここが化石が発見しやすい地層だったようで、これを契機に大規模かつ集中的な発掘が行われるようになったようです。

日本で発見された恐竜化石のうち、約8割が福井県で見つかっているとのこと。

 

そして、恐竜王国福井を象徴する施設が、勝山市にある福井県立恐竜博物館です。ここは世界三大恐竜博物館の1つに数えられている世界的な施設。恐竜の展示はもちろんですが、発掘・地質・鉱物・地学なども総合的に学べる施設となっています。さらに、施設の設計は世界的な建築家である黒川紀章氏が行っており、非常に洗練されています。広大な吹き抜け空間をエスカレーターで一気に4フロア下まで降りるエントランスは壮観です。

出典:福井県公式観光サイト ふくいドットコム

 

また、福井県内にはいたるところに恐竜にまつわるオブジェが設置されています。福井駅から恐竜博物館の道中にも多数あり、当時このあたりに恐竜がいたのだろうな、と妄想を膨らませながら道中も楽しめます。

出典:福井県公式観光サイト ふくいドットコム

 

また、恐竜をテーマにした提携ホテルもあります。楽しそう。

出典:福井県公式観光サイト ふくいドットコム

 

福井県立恐竜博物館は、2023年度にリニューアルオープンしており、2024年度が本格オープンのようです。ますます体験のバリエーションが広がるようで、楽しみですね。

 

鯖江メガネ

福井県の眼鏡産業は、冬の農閑期の手仕事として始まったようです。その後、1980年代にチタン素材によるメガネフレームの実用化を世界に先駆けて実現したことを契機に、世界的な眼鏡産地となり、現在ではイタリア・中国と並ぶ世界3大眼鏡枠産地となっています。国内の眼鏡枠出荷額において9割のシェアを誇ります。

鯖江市には、450以上の事業者が集まって、眼鏡産業のクラスターを形成していますが、小規模事業者も多く、多層的な流通構造のため、事業者に利益が残りにくい構造となっているよう。中小企業の分業体制のため、機械化などの生産効率向上・量産能力強化がされにくい傾向にありそう。

眼鏡市場の環境は、スリープライスのSPA企業が台頭したことにより、高価格の鯖江メガネは苦戦を強いられています。

鯖江メガネの課題としては、鯖江の眼鏡ブランドを高め、販売力を強化していくこと。一方、高齢化進展と後継者不足により、事業所数は減少傾向にあるようです。

 

出典:福井銀行福井県鯖江市における眼鏡産業の維持・発展に向けた提案」

出典:福井銀行福井県鯖江市における眼鏡産業の維持・発展に向けた提案」

出典:福井銀行福井県鯖江市における眼鏡産業の維持・発展に向けた提案」

 

繊維業

繊維業は北陸・福井の基幹産業の1つ。サプライチェーンの川中である織編工程・染色加工工程を担う企業が多い。

繊維業の市場環境は、輸入品の台頭によりこの20年ほどで急激に厳しくなっている。この厳しい環境の中、技術革新等により競争力を高めて、生き残ってきた。

コロナ禍で、服飾購入量は一段と下がっており、さらに厳しい環境に置かれている模様。

出典:日本銀行金沢支店「続・挑戦する北陸の繊維企業」

出典:日本銀行金沢支店「続・挑戦する北陸の繊維企業」

出典:日本銀行金沢支店「続・挑戦する北陸の繊維企業」

 

7.所感

  • まず、都市圏として独立している点が非常に興味深かった。金沢との結びつきが強いと思っていたが、通勤通学の関係性は薄く、かなり独立したエリアということが特徴の一つ。なので、小国の1つとして、どう他国とやり合っていくか、という考え方になる。
  • 武器としては、恐竜、鯖江メガネ、繊維業が主力となりそう。恐竜・眼鏡に関しては世界に誇る産地なので、この強みを活かして、どうやって外貨を獲得するかが重要。恐竜への投資は伺えるが、眼鏡に関しては地場が強すぎて変化がなさそうな印象。うまく販路開拓と製造拠点の再編が進められると良さそう。。
  • 一方、日本海、豪雪地帯の雪(スキー)、芦原温泉、繊維業なども、うまく生かしていきたい特色の一つ。日本海に関しては、京阪・中京エリアからは一番アクセスしやすい立地なので、立地の強みを活かして戦っていけないだろうか。
  • 一方、エリアの低密さ、行政の非効率さが目立った。インフラ・公共施設の取捨選択を行い、残すエリアへの集積を進めることで、都市の効率を上げていかないと、持続可能性への懸念が大きそう。特に豪雪地帯で冬場の除雪が大変。エリアを絞っていく必要がありそう。

 

★★

調べたら、また行ってみたくなりました。

次は、原発鯖江メガネ・繊維業などの産業観光できると楽しそうだな。。

 

ではまた!

 

 

 

地元(奈良県三郷町)の「現状」と「とるべき戦略」を少し考えてみた

こんにちは、asiyutaです。

先日帰省した際に、親と地元の状況を軽く話したのですが、自身が子供のころと比べて若い世帯が減っているように感じ、先行きにかなり不安を抱きました。

今日は、地元(奈良県三郷町)の現状と、衰退に歯止めをかけるために今後とってほしい戦略を考え、まとめたいと思います。

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目次

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1.奈良県三郷町の概要

奈良県三郷町の立地(地理院地図・Google Mapより)

奈良県三郷町の概要(Google Map、RESASより)

奈良県三郷町の航空写真変遷(地理院地図より)

王寺駅を取り巻く市町村の状況(Google Map、RESASより)

奈良県三郷町は、奈良盆地中西部に位置する自治体。

もともとは農村集落だったが、高度成長期に宅地開発され、大阪市に対するベッドタウンとして町が形成されていった。交通結節点である王寺町に隣接し、町民の11%は大阪市に通勤・通学している。

文化資産としては、町内に日本遺産「亀の瀬・龍田古道」や百人一首に歌われた「竜田川」「三室山」を有し、隣接する斑鳩町世界遺産法隆寺」が位置する。

自然資産としては、一級河川大和川信貴山のどか村、信貴生駒スカイランなどの資産を有する。

その他、J3奈良クラブのクラブハウス、県中核病院である西和医療センターなども有する。

文化資産などに恵まれた大阪のベッドタウン、という奈良っぽい特徴を持つエリアといえそう。

 

2.住民の動向

2-1.三郷町の人口動態

三郷町の人口推移(RESASより)

 

現在の人口は2.3万人程度。高度成長期に増加し、1995年頃をピークに以降横ばい。内訳は、生産年齢人口が減少する一方、老年人口が増加傾向。ただ、年少人口は横ばいで維持できているので、若者世帯の流入が一定あるものと予想される。

 

三郷町人口ピラミッド(R2.3 三郷町人口ビジョンより)

人口ピラミッドを見ると、70代(団塊世代)、40代後半(団塊ジュニア世代)にボリュームゾーンがある。

 

三郷町の転出入数推移(R2.3三郷町人口ビジョンより)

H24年~H29年は、転入数超過となっている。これは、H26年から開始した家賃補助施策と、新規での宅地開発によるものと思われる。

また、転入数は一定数あり、県外移住者のほうが多いという特徴がある。

家賃助成 - 三郷町公式ホームページ

 

2-2.三郷町民の声

三郷町まちづくり総合戦略 - 三郷町公式ホームページによると、

  • 三郷町の評価できるところ
    • ①自然豊かな暮らしができる(63%)
    • ②都市部よりも地価や家賃が安く、広い住居に住むことができる(44%)
    • ③都市部(大阪市等)へのアクセスが良い(40%)
  • 町内に働く環境が整っている町か
    • 「いいえ」60%
    • 「はい」11%
  • 子育てしやすい町か
    • 「はい」64%
    • 「いいえ」1%
  • 老後も安心して暮らせる町か
    • 「はい」43%
    • 「いいえ」23%
      ※「いいえ」の理由としては、坂が多い、買物が遠い、など。

 

2-3.住宅・居住環境に対する世間一般のニーズ

住宅:平成30年住生活総合調査(確報) - 国土交通省によると、

  • 住宅及び居住環境に関して重要と思う項目
    • ①治安(40%)
    • ②日常の買い物などの利便(37%)
    • ③日当たり(34%)
    • 地震時の安全性(34%)
    • ⑤通勤・通学の利便(28%)
    • ⑥防犯性(27%)
    • ⑦広さや間取り(25%)
    • ⑧医療・福祉・文化施設などの利便(25%)
  • 最近5年間の住み替え目的
    • ①通勤・通学の利便(35%)
    • ②広さや部屋数(21%)
    • ③世帯からの独立(18%)
    • ④新しさ・きれいさ(16%)
    • ⑤結婚による独立(14%)
  • 今後5年以内の住み替え目的
    • ①広さや部屋数(42%)
    • ②使いやすさの向上(32%)
    • ③新しさ・きれいさ(27%)
    • ④性能の向上(23%)
    • ⑤住居費負担の軽減(22%)
    • ⑥通勤・通学の利便(20%)
    • ⑦高齢期の住みやすさ(19%)
  • 今後5年以内の住み替え課題
    • ①資金・収入等の不足(52%)
    • ②希望エリアの物件が不足(27%)
    • ③予算の範囲で気に入る物件がない(27%)

審議会・委員会等:第47回住宅宅地分科会 - 国土交通省によると、住宅を所有したいと考えている人は6割超。各世代で5割超。所有したい住宅は、各世代いずれも新築戸建てが過半を超える。

 

3.企業の動向

3-1.三郷町の企業動態

三郷町の企業数推移(RESASより)

産業別の企業数(RESASより)

三郷町の企業数は362社。産業別の上位5業種は

  • ①卸売・小売業 21.5%
  • ②医療・福祉 11.9%
  • ③製造業 10.2%
  • ④宿泊・飲食サービス 10.2%
  • ⑤建設業が9.9%

県・全国平均と比べると、医療・福祉、教育・学習支援が多め。

 

産業別の付加価値額(RESASより)

従業者数×労働生産性による付加価値額(RESASより)

付加価値額を見ると、医療・福祉が7割近くを占める。また、従業者数や労働生産性を見ても、医療・福祉業界が圧倒的。

 

3-2.企業立地動向に関する一般的な状況

https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H30FY/000337.pdf

第23回 産業構造審議会 地域経済産業分科会(METI/経済産業省)

によると、

経営上の主な立地理由は

  • 新設・増設の場合
    • ①既存事業の拡大
    • ②設備等の更新
  • 移転の場合
    • ①既存事業の拡大
    • ②設備等の更新
    • ③周辺環境との関係

工場立地選定理由としては

  • ①本社・他の自社工場への近接性
  • ②市場への近接性
  • ③地価
  • ④関連企業への近接性
  • ⑤工業団地である
  • ⑥人材・労働力の確保

中堅企業は人材確保に悩んでおり、確保が困難な理由は

  • ①募集しても応募がない
  • ②会社の知名度が低い
  • ③仕事の魅力をアピールできていない
  • ④働きやすさをアピールできていない
  • ⑤求める水準のスキルを有する応募者がいない
  • ⑥地域内の競合他社と比較して給与水準が低い

中堅企業は新規事業展開への関心が高いが、以下に課題を抱えている

  • ①必要な技術・ノウハウを持つ人材不足
  • ②販路開拓が難しい
  • ③新規事業展開に必要なコストの負担が大きい
  • ④必要な技術・ノウハウの取得・構築が困難
  • ⑤市場ニーズの把握が不十分

 

4.競合都市の状況

4-1.大阪市への交通アクセス面

大阪市への電車アクセス性(Google Mapより)

三郷町は、大阪市ベッドタウンとしては外縁部に位置している。電車での所要時間は1時間を下回るものの、競合に対する競争力はそこまで高くない。

大阪市を睨みつつ奈良市へもアクセスできる、という点でいうと、生駒市柏原市などが競合にあたると考えられる。

 

4-2.治安

都道府県別の治安の良さ(ALSOK HPより)

エリアごとの差が大きいので一概には言えないが、大阪府よりも奈良県のほうが、治安は相対的に良いとは言えそう。

 

4-3.家賃・間取り等

都道府県別の住宅指標(総務省統計局「平成 30 年住宅・土地統計調査」)

こちらもエリアごとの差が大きく一概には言えないが、持ち家率、延べ床面積、部屋数、家賃すべてにおいて、奈良県の状況は良い。

 

4-4.買い物利便性

店舗密度は、大阪府に対して奈良県は1/8程度と大きく小さい。買い物利便性はかなり低い。

統計・データでみるスーパーマーケット

統計から知る奈良/奈良県公式ホームページ

大阪府/大阪府国土利用計画について

 

4-5.医療・介護利便性

人口10万人あたりの医師数(RESASより)

65歳以上人口10万人あたりの介護施設定員数(RESASより)

医療利便性を医師数で評価すると、三郷町は町単独で見たときの医師数はトップクラスだが、二次医療圏でみると最低水準となっている。医療機関が集積していることが分かる。

介護利便性を介護施設の定員数で評価すると、三郷町は中程度の水準。

 

5.三郷町の財務状況

5-1.歳入・歳出の推移 ※記事末にて語句解説

三郷町の歳入推移(三郷町奈良県HPより作成)

三郷町の歳入推移(目的別、三郷町奈良県HPより作成)

三郷町の歳出推移(性質別、三郷町奈良県HPより作成)

三郷町の予算規模は100億円程度。歳出はH24~R3年に年率2%弱で増加傾向。

歳入面の特徴では、

  • 地方税地方交付税・国庫支出金で7割程度を占める。
  • 増加傾向の主な費目は、寄付金(CAGR84%)、株式等譲渡所得割交付金(CAGR33%)、地方債(臨債除く)(CAGR25%)、国庫支出金(CAGR16%)、地方消費税交付金(CAGR14%)、配当割交付金(CAGR12%)。寄付金以外は国からの交付金が増える形。
  • 減少傾向の主な費目は、利子割交付金(CAGR▲15%)、財産収入(CAGR▲36%)、繰入金(CAGR▲23%)。

歳出面(目的別)の特徴は

  • ①民生費(33%程度)、②総務費(18%程度)、③教育費(16%程度)、④土木費(11%程度)で、8割弱を占める。
  • 増加傾向の主な費目は、商工費(CAGR25%)、農林水産業費(CAGR8%)、民生費(CAGR8%)、教育費(CAGR5%)。
  • 減少傾向の主な費目は、土木費(CAGR▲8%)、公債費(CAGR▲3%)。
  • 総額が増加傾向、内訳として土木費を減らし、福祉・医療介護などに充てている様子が伺える。

歳出(性質別)の特徴は、

  • ①人件費(17%程度)、②扶助費(16%程度)、③物件費(16%程度)、④普通建設事業費(15%程度)、⑤補助費等(14%程度)で、8割弱を占める。
  • 増加傾向の主な費目は、積立金(CAGR11%)、扶助費(CAGR8%)、物件費(CAGR7%)、補助費等(CAGR7%)。
  • 減少傾向の主な費目は、維持補修費(CAGR▲18%)、普通建設事業費(CAGR▲4%)、公債費(CAGR▲3%)。
  • 総額が増加傾向、内訳としてインフラの維持補修、建設を抑制し、生活保護・児童福祉などや、将来への積立に充当している様子が伺える。

 

5-2.財務指標の状況 ※記事末にて語句解説

財政力指数

  • 0.47(全国平均0.50)
  • 全国平均より悪い。財源に余裕のない自治体といえる。

経常収支比率

  • 85.8%(全国平均88.9%)
  • 全国平均より若干良い。とはいえ自由に使える予算はあまりない状況。

将来負担比率

  • 52.1%(全国平均15.4%)
  • 全国平均より悪い。中学校建替事業に伴う地方債発行で地方債残高が増加、かつ基金取り崩しで充当可能財源が減少したことで、H29年度以降悪化したとのこと。

実質公債費比率

  • 1.7% (全国平均5.5%)
  • 全国平均より良い。ただし、今後も公共施設老朽化対策が必要なため、悪化が見込まれる。

実質単年度収支比率

  • 4.91%
  • 実質収支は黒字で良い。

 

5-3.社会インフラの見通し

 

公共建築物の保有状況(R5.4 三郷町公共施設等総合管理計画より)

公共建築物の更新費用の推移(R5.4 三郷町公共施設等総合管理計画より)

 

インフラ施設の整備状況(R5.4 三郷町公共施設等総合管理計画より)

インフラ施設の更新費用推移(R5.4 三郷町公共施設等総合管理計画より)

今後社会インフラを維持しようと思ったら、公共建築物は年平均10億円、インフラ施設は年平均6.3億円のコストがかかり続ける。

一方、R3年度歳出(性質別)の普通建設事業費は12.8億円、維持補修費は0.1億円。

現時点で収支が全く合っていない。。。取捨選択は必須(しかも大掛かりな選択が必要)だが、「三郷町公共施設等総合管理計画」には残念ながら取捨選択の明言がない。。。

計画的なシュリンク案がなく、面的な崩壊が危惧される状況と見受けられる。

 

6.取り巻く環境のまとめ

6-1.顧客(住民)

  • 総人口はしばらく横ばいだが、内訳としては老年人口比率が徐々に増加する見通し。また、団塊ジュニア世代の高齢化に伴い、老年人口比率は大きく増加しそう。ただ、全国平均に比べると、少子高齢化は緩やかといえる。
  • 転入数は継続して一定数あり、H24年~H29年は転入数超過。また、県内移住者よりも、県外移住者のほうが多いという特徴あり。居住地としての競争力は一定あると言えそう。

  • 地元住民は、自然豊かさ、地価・家賃の安さ、広い住居、大阪市へのアクセスの良さなどを評価。子育てもしやすいという意見が大半。一方、町内に就労場所はなく、坂の多さ・スーパーの遠さから老後に不安を感じている。

6-2.顧客(企業)

  • 三郷町の企業数は362社。卸売・小売業(21.5%)、医療・福祉(11.9%)、製造業(10.2%)、宿泊・飲食サービス(10.2%)、建設業(9.9%)が上位5業種で、医療・福祉、教育・学習支援が全国平均より多い。

  • 町の付加価値額の7割弱を医療・福祉で産出。医療・福祉は多数の従業者数を抱え、労働生産性も町内平均を上回る。医療・福祉業界に町経済は依存していそう。

6-3.競合(自治体)

  • 大阪市ベッドタウンという観点では、三郷町は外縁部に位置しており、通勤所要時間は1時間近くかかり、競合に対して長い。買物利便性も大阪府自治体に対しては大きく劣っている。

  • 一方、治安、家賃、間取り、持ち家率は良く、これらを武器に、大阪府内の他のベッドタウンと競っていると思われる。

  • 奈良市への日中滞在率は2.9%と一定ある。奈良県内と大阪市内に両方アクセスしたいという居住者にとっても選択肢の1つと思われ、その場合の競合は生駒市東大阪市などが考えられる。

  • その他、医療面では町単独では優れているが、医療圏域でみると医師数は不足。また、介護は標準的な水準にある。

6-4.自社(三郷町

  • 文化資産として、日本遺産「亀の瀬・龍田古道」、百人一首の地「竜田川」・「三室山」、世界遺産法隆寺」。自然資産として、一級河川大和川信貴山のどか村、信貴生駒スカイラン。その他、J3奈良クラブのクラブハウス、県中核病院である西和医療センターを有す。文化資産などに恵まれた大阪のベッドタウン、という奈良っぽい特徴を持つエリア。

  • 財政規模は100億円程度。年率2%で増加傾向にある。増加要因は高齢化に伴う医療・介護・福祉関係の費用増加など。土木費を抑制し、国からの交付金収入の増加により、これら費用を賄っていそう。
  • 経営状態は、全国平均と同程度。直近に町内中学校の建て替えをしたことにより少し悪化気味。
  • 今後、社会インフラの更新費用で年平均16億円必要だが、現時点で社会インフラへの支出額は13億円で、収支が全くあっていない。高齢化の進展によりインフラ費に回せる額は減少が見込まれるので、大胆な取捨選択が必要になると予想される。

 

7.とるべき戦略案

以上を踏まえて、三郷町がとるべき戦略を少しアイデア出ししてみます。

7-1.王寺駅を核とした近隣市町村との広域連携による行政コスト圧縮

まず行政コストの圧縮策として、長期的には王寺駅を中心とした市町村合併、短期的には広域連携の活用を提案します。

三郷町は、大阪市に対する王寺駅を中心としたベッドタウンの一角、つまり王寺町経済圏の一角にあたります。まちづくりは経済圏範囲に基づき行うのが合理的なため、この経済圏で連携して行政サービスを提供できる体制を構築することで、社会インフラの整備コストの圧縮や、経常的経費の圧縮を図るのが望ましいと考えます。

個人的には、都市計画立案段階から広域連携するような大胆な施策がとられないか(合意形成が紛糾しそうだが、、、)など思うところです。。

総務省|地方制度調査会|第32次地方制度調査会第29回専門小委員会

 

7-2.大阪府ベッドタウンとの差別化(ゆったり広々、大阪・奈良両方へのアクセス)

次に、大阪府内のベッドタウンと明確に差別化を図る必要があると考えます。

まずは、「ゆったり広々」です。奈良県内では三郷町大阪府へのアクセスの良さが強みとよく言われますが、アクセスの良さと治安・間取りの良さを兼ね備えていることが強みと考えられます。よって、この治安・間取りの良さを維持・向上を図ることが非常に重要と考えられます。

特に、間取りについては、住宅関連の施策を行いつつ、転入者へのインタビューを通して重点課題を見極めていくことが重要と考えます。

次に「大阪・奈良両方へのアクセス」です。今後の日本は、田舎から都会への人口流出が急速に進展しますが、その流出は一度地方都市を挟んで進む(人口のダム機能)と言われています。このダム的需要(というべき?)をとらえていくことが大事だと考えます。

また上記2つの特徴は、顧客層や見せ方がそれぞれ異なるため、画一的なプロモーションではなく、セグメントごとに分けて行うことが必要と考えます。

 

7-3.医療・介護関連の施策実施

三郷町は、特に医療供給ポテンシャルがエリア内で高いという特徴があり、この特徴を活かした何らかの施策も選択肢としてはありそうな気がします。

神戸市のような医療産業都市を目指すのは難しくても、医療従事者数というポテンシャルを活かして、健康寿命を促進するような施策をしたり、地方の高収入世帯である医療従事者向けのビジネスを広げたり。ちょっと見識不足で浅いのですが、一旦仮説を仮置きということで。

神戸医療産業都市ポータル | 革新的な医療イノベーションの創出

北大阪健康医療都市(健都)のまちづくり|吹田市公式ウェブサイト

都市再生:健康・医療・福祉のまちづくりの推進 - 国土交通省

 

7-4.文化資産・自然資産・スポーツ資産を活用したNPO・スモールビジネスの促進

三郷町法隆寺近くということもあり、文化的資産に優れ、さらに自然資産・スポーツ資産も有するような土地です。これら強みを磨き、長期的に地域の差別化要因の1つとして育てていくことで、競争力をさらに高めていけると感じます。

そこで、これら資産を活用したNPO・スモールビジネスを促進し、短期的には既存住民の満足度向上、長期的にはこれら資産を都市間競争へ活用、を図っては、、と考えます。

 

★★

以上、三郷町の現状ととるべき戦略を少し考えてみました。両親も住む土地なので、末永く反映してほしいな、と改めて感じました。見守りつつ自分にできそうなことがあれば機を見てやってみてもいいな、、なども少し思ったり。。

(なお、7章は時間ができたらもう少し練って更新しようかと思います。)

ではまた!

★★

8.主な語句説明

8-1.歳入関係

  • 地方税(町税):町民税、固定資産税、軽自動車税、町たばこ税、入湯税都市計画税など。
  • 地方交付税:全国の市町村の規模に応じ,収入の格差を是正するために,国税のうち所得税,酒税,法人税,消費税の一定割合をいったん国でためて,各市町村に交付される税。
  • 国庫支出金:国と地方公共団体の経費負担区分に基づき国が地方公共団体に対して支出する負担金、委託費、特定の施策の奨励又は財政援助のための補助金等。
  • 寄付金:市民などから受ける金銭による寄付
  • 株式等譲渡所得割交付金:株式等の譲渡をする際に課税される県税の一部を市町村に交付するお金
  • 地方債(臨債除く):地方公共団体が財政上必要とする資金を外部から調達することによって負担する債務で、その履行が一会計年度を超えて行われるもの。
  • 臨時財政対策債:地方全体の財源不足を補うために発行される起債。 後年度、償還金相当額の全額が交付税により措置。
  • 地方消費税交付金都道府県が徴収した地方消費税の2分の1に相当する額が、政令に基づき各都道府県内の市町村に交付されます
  • 配当割交付金:上場株式などの配当に課税された一部を財源として、県が個人県民税の額に応じて、 市に対して交付するもの。
  • 利子割交付金:金融機関等からの利子の支払を受ける際に課税された税の一部を財源として、都道府県が個人県民税の額に応じて、市に対して交付するもの
  • 財産収入:市が有する財産の貸付け、売払いなどにより得た現金収入のことです。 公共用地の売払収入や、基金積立金の利子などが該当
  • 繰入金:一般会計、ほかの特別会計及び基金または財産区会計の間において、相互に資金運用すること

8-2.歳出(目的別)関係

  • 民生費:障害者,高齢者,児童,母子等の福祉施策や生活保護に係る経費,国民健 康保険事業,介護保険事業,後期高齢者医療の3特別会計への繰出金などで構成
  • 総務費:全般的な事務や総合計画策定、財産管理、統計、税の課税や徴収 などの事務にかかる経費
  • 教育費:教育施策の推進に要する経費
  • 土木費:道路や河川、公園などの社会資本整備のための経費
  • 商工費:商工業や観光の振興などの経費
  • 農林水産業費:農林水産業の振興や農・林道の整備、漁港整備などにかかる経費
  • 公債費:市債の元金・利子や一時借入金の利子を支払うための経費

8-3.歳出(性質別)関係

  • 人件費:職員の給与や議員、臨時職員への報酬などの経費
  • 扶助費:生活保護法、児童福祉法等の法令に基づく被扶助者への支給や、また、市が単独で行う各種扶助のための経費
  • 物件費:市の経費のうち消費的性質をもつ経費です。賃金、旅費、交際費、需用費などが該当。
  • 普通建設事業費:道路、橋りょう、学校、庁舎などの公共用または公用施設の新増設の建設事業に必要とされる投資的な経費
  • 補助費等:市から他の地方公共団体(道、市町村、一部事務組合など)や民間に対して、行政上の目的により交付される経費です。主なものとして、報償費(講師謝金など)、役務費(保険料)、負担金・補助金及び交付金(一般的な補助金)などが該当
  • 積立金:財政運営を計画的に行うため、または財源の余裕がある場合に積立
    てる経費
  • 維持補修費:道路、公共用施設などを管理するために必要な経費
  • 公債費:市債の元金・利子や一時借入金の利子を支払うための経費。

8-4.財務指標関係

  • 財政力指数
    • 地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値。財政力指数が高いほど、普通交付税算定上の留保財源が大きいことになり、財源に余裕があるといえる。
    • 財政力指数 = 基準財政収入額 / 基準財政需要額
    • 基準財政収入額:各地方団体の財政力を合理的に測定するために、当該地方団体について地方交付税法第14条の規定により算定した額。標準的な税収×75/100+地方譲与税
    • 基準財政需要額:各地方団体の財政需要を合理的に測定するために、当該団体について地方交付税法第11条の規定により算定した額。単位費用×測定単位×補正係数
  • 経常収支比率
    • 地方税普通交付税のように使途が特定されておらず、毎年度経常的に収入される一般財源(経常一般財源)のうち、人件費、扶助費、公債費のように毎年度経常的に支出される経費(経常的経費)に充当されたものが占める割合。
    • 経常収支比率=(人件費、扶助費、公債費等に充当した一般財源等)/{経常一般財源等(地方税普通交付税等)+減収補填債特例分+臨時財政対策債
    • 減収補填債特例分:法人事業税等が基準財政収入額の算定において見込んだ収入見込額を下回ると見込まれる場合は、この減収を補填するために特別な地方債(減収補填債)を発行することができ、当該地方団体はその年度の収入が確保される。 この地方債の元利償還金は、後年度の基準財政需要額に算入されることによって財源措置がなされる
  • 将来負担比率
    • 地方公社や損失補償を行っている出資法人等に係るものも含め、当該地方公共団体の一般会計等が将来負担すべき実質的な負債の標準財政規模に対する比率のこと
    • 将来負担比率={将来負担額ー(充当可能基金額+特定財源見込み額+地方債現在高等に係る基準財政需要額算入見込み額)}/{標準財政規模ー元利償還金・準元利償還金に係る基準財政需要額算入額}
    • 将来負担額:
      • ①一般会計等の当該年度の前年度末における地方債現在高
      • ②債務負担行為に基づく支出予定額
      • ③一般会計等以外の会計の地方債の元金償還に充てる一般会計等からの繰入見込み額
      • ④当該団体が加入する組合等の地方債の元金償還に充てる当該団体からの負担等見込み額
      • ⑤退職手当支給予定額のうち、一般会計等の負担見込み悪
      • 地方公共団体額設立した一定の法人の負債の額、その者のために債務を負担している場合の当該債務の額のうち、当該法人等の財務・経営状況を勘案した一般会計等の負担見込み額
      • ⑦連結実質赤字額
      • ⑧組合等の連結実質赤字額相当額のうち一般会計等の負担見込み額
    • 標準財政規模:地方公共団体の標準的な状態で通常収入されるであろう経常的一般財源の規模を示すもので、標準税収入額等に普通交付税を加算した額。なお、地方財政法施行令附則第10条第1項及び第2項の規定により、臨時財政対策債の発行可能額についても含まれる。
  • 実質公債費比率
    • 当該地方公共団体の一般会計等が負担する元利償還金及び準元利償還金の標準財政規模に対する比率の過去3年間の平均値で、借入金(地方債)の返済額及びこれに準じる額の大きさを指標化し、資金繰りの程度を表す指標のこと。「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」における早期健全化基準については、市町村・都道府県とも25%とし、財政再生基準については、市町村・都道府県とも35%としている。
    • 実質公債費比率={(地方債の元利償還金+準元利償還金)ー(特定財源+元利償還金・準元利償還金に係る基準財政需要額算入額)}/{標準財政規模ー元利償還金・準元利償還金に係る基準財政需要額算入額}
    • 元利償還金:返済金。元金と利子
  • 実質単年度収支比率
    • 実質単年度収支比率=一般会計等の実質収支額/標準財政規模
    • 一般会計等:一般会計および特別会計のうち①~③以外のもの
    • 財政調整基金自治体における年度間の財源の不均衡を調整するための積立金です。 財源に余裕のある年度に積み立てを行い、大規模災害の発生や大幅な税収減などがある年度に取り崩しを行います

国内ビール業界のサプライチェーン現状を少し整理してみた

こんにちは、asiyutaです。

最近嫁がビール沼にはまっており、少し興味を持ったので、国内ビール業界のサプライチェーンについて少しまとめてみました。

ざっくりビール業界の概要を把握されたい方がいらっしゃれば、参考になれば幸いです。

 

目次

 

★★

1.国内ビール業界のサプライチェーン概況 まとめ

  • ビールの主な原材料は、麦芽・ホップで9割以上が輸入品。麦芽はカナダ・豪州・英国、ホップはドイツ・チェコ・米国から主に輸入。
  • 国内ビールの99%は、アサヒ・キリン・サントリー・サッポロ・オリオンの大手5社で製造(寡占化)。製造量は右肩下がりだが、クラフトビールは超小規模ながらも市場は成長。その他、リキュール・スピリッツ・ウイスキー市場も成長。
  • スーパー・ディスカウントストアでの販売が7割超。容器は缶が7割超だが、大手以外では缶・樽・瓶を約3割ずつ使用。価格は190円。
  • 週1日以上の飲酒習慣は、男性48%、女性34%。20代で30%、60代で51%。飲酒シーンは自宅が多い。
  • ビールは美味しさ基準で選ばれる。クラフトビールには香り・のどごし・味が求められる。大手各社はクラフトビール新商品を投入し同質化を図る。

国内ビール業界サプライチェーン概況

 

2.麦芽生産市場の状況は?

  • ビール用麦芽二条大麦という種類の大麦から作られる。
  • 二条大麦は、国産44千t、輸入408千t。9割を輸入に依存。
  • 外国産の主な輸入国はカナダ、オーストラリア、英国。
  • 国内の二条大麦生産県は、①佐賀29%、②栃木23%、③福岡16%、④岡山6%、⑤北海道5%
  • 世界の大麦産出国は、①ロシア、②オーストラリア、③フランス、④ドイツ、⑤ウクライナ、⑥スペイン、⑦イギリス、⑧カナダ
  • 大手ビール会社は、世界中の生産者と契約栽培している模様。
  • 世界の麦芽原料市場は、2022年から2027年の間にCAGR2.98%と予測されている。新興国のアルコール需要の増加、世界でのクラフトビール需要の成長などが要因。独特で風味豊かなビールの需要が世界中で成長しているよう。
  • 直近の状況としては、ロシア・ウクライナ戦争に伴い、家畜用大麦が供給不足により価格高騰。ビール用大麦が家畜用に流れることで、ビール用大麦も価格高騰。ここに加えて為替が円安に振れることで、輸入価格は高騰していそう。

参考資料

 

3.ホップ生産市場の状況は?

  • ホップとは、ビールに苦み・香り・泡持ち・殺菌効果を与えてくれるつる性の植物
  • ホップの国産比率は、2020年輸入量が4477t、2020年国内生産量が187tより、わずか4%。ほとんどが輸入品。
  • 国内ビール生産量が微減(2006年に633万kl※1、2018年に510万kl)に対して、国内ホップ生産量は大幅減(2007年に410t、2021年に171t)のため、ホップの国産比率はますます小さくなる傾向。
  • ホップの国別生産量シェアは、①アメリカ29%、②ドイツ28%、③エチオピア25%、④チェコ4.1%、⑤中国4%。
  • ホップ輸入量は、2020年に合計4477t。シェアは、①ドイツ47%、②チェコ23%、③アメリカ11%。
  • ホップの国内生産量は、2021年に合計171t。シェアは、①岩手47%、②秋田29%、③山形18%。
  • グローバルホップ市場は、2020年-2025年の間に4.5%のCAGRで成長する見込み。世界中のクラフトビール醸造所の成長が、世界のホップ市場を牽引。

※1:ビール国内生産量は、ビール・発泡酒・新ジャンルの合計

参考資料

 

4.国内ビール製造市場の状況は?

  • 国内ビール製成数量のシェアは、2018年時点で、大手5社250万kl(98.9%)※1、大手5社以外2.8万kl(1.1%)。大手の寡占化状態。
  • ビール輸入量は、2022年に4.7万kl。2018年に3.4万kl。国内製成数量に対して約2%。
  • 国内大手4社のシェアは、2018年時点で、①アサヒ37.4%、②キリン34.4%、③サントリー16%、④サッポロ11.4%。アサヒ・キリンがメインプレイヤー。
  • 大手以外のビール製造者数は近年右肩上がりに成長。平成29年度の税制改正により発泡酒製造免許でのビール製造が可能となり、2021年には380者まで増加。
  • 大手を除くビール製造者の状況は、製成数量100kl未満が82%と大半。販売形態は、①レストラン併設36.8%、②卸売・その他33%、③料飲店・チェーン店供給21.8%、④テーマパーク内施設・物産店・売店等併設8.4%。
  • 2026年に向けて、段階的に酒税が改正予定。これまで「ビール>発泡酒>新ジャンル」だった税額が、「ビール=発泡酒=新ジャンル」と統一され、ビールに関しては税額が下がる。
  • 酒類製成数量全体は右肩下がり。内訳をみると、清酒、焼酎、ビール、発泡酒などが減少傾向な一方、リキュール、スピリッツ等、ウイスキーなどは増加傾向。酒離れと選択肢の多様化が進んでいるとみられる。
  • 世界のビール市場は、2023年から2028年の間に、CAGR1.9%で成長見込み。要因として、特にミレニアル世代、社会人、若者の間で、社交やパーティーの傾向が強まり、高級アルコール飲料への嗜好が高まっていることや、フレーバービールの需要拡大が挙げられている。

※1:大手5社とは、アサヒ、キリン、サッポロ、サントリー、オリオン

参考資料

 

5.国内ビール販売市場の状況は?

  • ビール販売数量は2019年に659万kl。
  • 酒類販売数量のシェアは、2019年時点で、①リキュール702万kl(31.2%)、②ビール659万kl(29.3%)、③スピリッツ等242万kl(10.8%)、④発泡酒152万kl(6.7%)、⑤清酒82万kl(3.6%)。
  • ビール+発泡酒+新ジャンルの販売チャネル別の構成比は、2020年時点で①スーパーマーケット40%、②ディスカウントストア32%、③業務用酒販店14%、④コンビニエンスストア12%、⑤一般酒販店2%。酒販店がシェア縮小傾向にあり、スーパー・ディスカウント・コンビニがシェア拡大傾向にある。
  • ビールの価格(東京23区)は、2022年時に350ml1缶あたり190円。
  • 容器別販売数量のシェアは、2020年時点で①缶75%、②びん7%、③その他18%。大手5社を除いた場合(2018年)は①缶39.3%、②樽32.1%、③びん27%、④その他1.6%。大手と大手以外で流通経路が異なることが予想される。

参考資料

 

6.国内ビール消費者動向の現状は?

  • 飲酒習慣(週3日以上、1回1合以上)のある人の割合は、20代7.8%、30代17.2%、40代25.2%、50代28.1%、60代26.8%。週1日以上では、20代30.0%、30代37.3%、40代40%、50代44.6%、60代51.4%、男性47.7%、女性33.7%。
  • 飲酒習慣のある人のお酒の楽しみ方は、①一人で自宅で51.4%、②家族と自宅42.2%、③友人・知人と居酒屋に行って38.5%、④テイクアウトしたものを自宅で食べながら20.7%、⑤少人数の友人・知人と自宅で20.5%。
  • 飲酒習慣のある人がよく飲むお酒は、①ビール52.3%、②発泡酒・第3のビール27.9%、③焼酎17.6%、④チューハイ・サワー(度数5%未満)17.5%、⑤チューハイ・サワー(度数5%)14.6%、⑥ハイボール13.6%、⑦日本酒11.6%、⑧赤ワイン11.2%、⑨チューハイ・サワー(度数7%以上)10.1%、⑩梅酒9.7%。
  • 家計(2人以上)におけるお酒への消費は、酒類代(家庭内)が4万円強/年、飲酒代(外食)が2万円弱/年。
  • 普段お酒を買う場所は、①スーパー61%、②ドラッグストア15%、③コンビニ13%、④酒屋専門店5%。
  • ビール購入タイプは、350ml缶ビールが89%。75%は決まった購入メーカーはない。購入基準は①美味しさ53%、②ブランド11%、③安さ10%、④話題性5%。
  • 自宅でビールのお供は、①枝豆28%、②唐揚げ14%、③ナッツ系11%、④冷ややっこ11%、⑤餃子10%、⑥焼き鳥6%、⑦チーズ系6%。
  • クラフトビールに求めるものは、①華やかな香り37.6%、②のどごし33%、③まろやかな味32.7%、④特別感、⑤フルーツのような香り。
  • キリンの新商品ビールを見ると、「SPRING VALLEY」ブランドでギャラクシーホップを使ったエール、「一番搾り」ブランドで糖質ゼロ、秋限定ビール(ラガータイプ)。
  • アサヒの新商品ビールを見ると、「オリオン」ブランドでペールエール、「オリオン」ブランドでのケルシュ、「食彩」という高級ラインビール、「オリオン」ブランドでの氷点下貯蔵ビール。

参考資料

 

★★

以上、ビール業界をまとめてみました。

この前提知識をもとに、自分なりにビールを楽しめれば、と思います。

 

ではまた!

中小企業診断士 実務補習に向けた準備方法・事前学習書籍まとめ

こんにちは、asiyutaです。

 

先日、3回目の中小企業診断士実務補習を終えました。いやー大変でしたけどすごく楽しい日々でした。貴重な機会を提供してくださった診断先企業様、協会関係者の方々には、本当に感謝です。

 

で、本日は振り返りもかねて「中小企業診断士の実務補習の準備はこうするとおすすめだよ!」ということをまとめたいと思います。

3回の実務補習を終えて「準備の仕方で、実務補習での学びが圧倒的に変わる。にもかかわらずどう準備・事前学習すればいいかの情報が不足していそう」と感じたことがきっかけです。

 

これから実務補習を受講予定の方々、特に私のように普段コンサルティング業務に関わっていない一般サラリーマンの方々の参考になれば幸いです。

 

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目次

 

★★

 

1.3回の実務補習の使い分け方

初回は飛び込む、2回目以降は事前学習の上臨む、です。

正直やってみないと勝手がわからないと思うので、まずは飛び込む。そして、飛び込んだら自分の力不足を実感すると思います。なので、2回目に向けては不足部分を学習で補ったうえでまた飛び込む。力不足を感じた部分をさらに学んで3回目に臨む。

このPDCAサイクルを3回の実務補習で実践するのが、個人実感としてはすごく有効でした。

 

また受講のタイミングですが、早く登録して実務につきたい人は、15日コースや7月・8月・9月と連続受講でいいと思いますが、体力的にもキツイ(笑)ので、2月期も活用しつつ学習期間を取りながら受講するのもあり、というのが個人的な考えです。

 

2.1回目の実務補習の準備方法

中小企業診断士試験で学んだ知識をもってまず飛び込む、で基本はいいのですが、飛び込むにあたって診断先企業に失礼のない最低限の準備はいるかと思います。

その準備が、①事前受取資料の確認、②診断先企業のHP検索、③業種別審査事典の確認、④財務分析の実施、⑤事業デューデリジェンスの実務入門の流し読み、⑥質問作成、の6点です。

 

①事前受取資料の確認

指導員の先生によりますが、実務補習前の1週間前くらいに資料を受け取ることが多いようです。まずこれに目を通して、診断先企業のことを理解します。

 

②診断先企業のHP検索

HP検索すると、インタビュー記事があったり、社長が色々な取り組みをされていたり、と情報が見つかります。この辺りを把握しておくことで、診断先企業の様子が少し見えてきます。

 

③業種別審査事典の確認

少し大きめの図書館に行けば、大体置いてあると思います。診断先企業の関連ページを読むことで、その業界の特徴、取り巻く環境を概観することができます。ここ怠ると後で痛い目にあいます。

↓こういう辞典みたいな本です。大きくて面喰いますが、一読の価値はあります。

 

④財務分析の実施

指導員の先生から、事前に決算書資料を受け取ることが多いようです。事例Ⅳの大問1のような財務分析をEXCEL等にまとめておきます。業種別審査事典の業界平均と比較すると、状況がより見えます。

 

⑤事業デューデリジェンスの実務入門の流し読み

これは、ヒアリングの質問内容、診断報告書のアウトプットイメージを掴むという意識でざっと流し読みます。

 

ヒアリング質問作成

①~⑤を踏まえて、質問内容を考えます。

初回受講時は何聞いていいか分からないと思いますが、企業の現状を正しく把握するために知りたいことを、素直に質問項目として挙げればよいと思います。現状把握さえできてしまえば、改善策は持ち帰って検討しようがありますので。

また、あまり担当パートに縛られず、全体的に知りたいことを考えると、質問漏れも防げ、自身の視野を広げるうえでもよいと思います。

 

3.2回目以降の実務補習の準備方法

2回目以降は、どの担当パートを受け持ちたいか狙いを定めて事前に学習することをお勧めします。一般的に実務補習の担当パートは、①経営戦略、②財務会計、③人事・労務、④マーケ・営業、⑤技術・生産、⑥情報、で構成されることが多いようですので、この分類で記載したいと思います。

 

①経営戦略パートの事前準備

経営戦略パートでは、以下の書籍を事前によんでおくことをおすすめします。

(1)ケースメソッドMBA実況中継01 経営戦略とマーケティング

名古屋商科大学ビジネススクールの講義の様子を体感できるような1冊。この本の前半部に、経営戦略・マーケティングのフレームが端的にまとめられているのですが、ここが素晴らしく分かりやすいです。

また後半部は講義の実況中継なのですが、経営戦略・マーケティング戦略を考えるうえで重要な観点が、大手企業のケースをもとに体感できます。

 

(2)一橋MBA戦略ケースブック

次に、一橋大学MBAで企業の経営戦略を分析してまとめた事例が多数載っているこちらの本。この本では、経営戦略に関するフレームワークをどのように使うのかが学べます。

例えば、5フォース分析、4Ps、ポジショニング、PPM、などなど。聞いたことあっても使ったことはなく、具体的な使い方は知らない、という一般サラリーマンが大多数かと思いますが、こちらの本で学べます。

また、色んな企業の戦略・業界構造を事例として頭に入れておくことで、引き出しが増え、対応力が増した感覚がありました。これもこの本の良い点かと思います。

 

(3)大前研一ケーススタディ

最後にこの本。60の企業について、大前研一さんからの設問をもとに、自分なりに調べたうえで戦略を考えてみて、大前研一さんの解と照らしてみる、という構成の書籍です。

企業のIRページとか読みつつ実際に考えてみることで、実践力が鍛えられます。また、色んな業種の業界構造・知識ストックもできます。

大変ですがとても面白い本でした。ほんと3C分析大事。。

 

 

(4)事前の5フォース分析の実施

診断先企業が分かってから実務補習初日までに、5フォース分析は終えて臨むようにすると、実務補習期間中の議論の質が高まって非常におすすめです。

 

財務会計パートの事前準備

(1)中小企業の財務分析

まずは、財務分析を正確に行うことが必要となります。診断士試験ではあまり触れない指標についても、こちらの本で計算方法が分かりますので、目を通しておくことをお勧めします。

 

(2)融資関係の知識インプット

一般サラリーマンで経理畑にもいないような人には、融資周りのことがが全く分かりません。が、中小企業経営では融資関係・銀行とのお付き合いの仕方って結構重要なテーマだったりするようです。

ということで、以下の書籍でインプットしておくことをお勧めします。これ読むと、融資回りの解像度が高まります。

 

(3)簿記2級取得

決算書や事業の動きとお金の動きのイメージが掴みやすくなります。2級レベルは必須かなと。

 

(4)管理会計関係の知識インプット

売上目標の立て方、投資意思決定、どうやって業績管理すればよいか、などなどは管理会計の分野になります。経営に直結する知識なので、インプットしておく必要あるかなと思います。

こちらでご紹介している書籍類がおすすめです。

 

asiyutav2.hatenablog.com

 

(5)財務分析、損益分岐点分析の事前実施

以上の知識を踏まえて、事前に受け取った決算書をもとに、財務分析、損益分岐点分析を終えた状態で、実務補習の初日に臨みます。

 

③人事・労務パートの事前準備

(1)「組織は戦略に従う」の従わせ方、組織の設計方法を学ぶ

組織は戦略に従う、という言葉があるように、戦略を遂行できる組織構築がまず人事においては重要と考えます。

波頭亮さんのこちらの本では、どのように組織を設計すればよいかが描かれており、非常に勉強になります。

 

(2)人事とは何ぞや、を学ぶ

次に、人事の守備範囲、やるべきことを網羅的に把握します。

こちらの本では、試験でやった茶化(採用→配置→育成→評価→報酬→代謝)の基本を押さえることができます。

 

(3)一番の鬼門「採用」を学ぶ

実務補習を3社行って感じたのは、どの中小企業も採用に非常に悩んでらっしゃる、ということでした。採用に対する解像度を高めることは重要と考えます。

以下のような書籍に目を通しておくとよいかと思います。採用ってマーケティング・営業と考え方は同じなのだな、ということが学べました。

 

↓色んな打ち手、事例を知ることができた一冊

 

(4)既存社員を最大限活用するための評価制度を学ぶ

採用と並んで悩んでおられたのが、人材をどのように活用するか、どのようにモチベーションを高めていくのか、育成していくのか、という点でした。

そこへの解像度を高めるために、これら書籍でインプットしておくことをお勧めします。

 

↓企業の経営理念から評価基準までの落とし込み方が学べた二冊

 

↓具体的な評価基準の項目事例が参考になる一冊

 

労務管理周りが不足してるので、プラスで補填されることをお勧めします。。

 

④マーケ・営業パートの事前準備

(ほぼAmazon.co.jp: Audibleブック・オリジナルでインプットしました)

 

(1)マーケ・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの役割理解

まず、どのような業務プロセスが一般的なのか、を理解するためにこの一冊。マーケ~カスタマーサクセスまでの一連のプロセスの解像度が圧倒的に高まります。

 

(2)マーケの理解

次に、上述する各プロセスを1つずつ解像度を高めていきます。

マーケ関連は、この辺りの書籍が良かったです。基本は「誰に、何を、どうやって」に尽きることが理解できました。

 

(3)営業の理解

次に営業プロセスの解像度を高めます。

↓再現性高く強い営業組織の構築方法を学べる一冊。

 

↓物語形式の本。営業経験ない人間にも「どう顧客の課題を解決するお手伝いをするか」という姿勢の重要さが分かった。

仕事の魔法

仕事の魔法

Amazon
営業の魔法

営業の魔法

Amazon

 

(4)カスタマーサクセスの理解

次に、カスタマーサクセスのプロセスを理解します。

↓適用範囲はSaaS企業だけでなく、例えば航空機メーカーとかでも考え方を活用できることが分かった。

 

(5)診断先企業のHP、SNS、広告類の確認

上述した知識を得たうえで、診断先企業のマーケ・営業活動方法を、HP、SNS、広告等で確認していきます。

 

⑤おまけ:ファシリテーション力の向上

班長をやる予定があるなら、ファシリテーションへの解像度を高めておくことも事前準備としてやっておきたいところです。

この本が、ファシリテーションに関して、体系立てて端的にまとめておられ、とても参考になります。

 

※技術・生産、情報は、実務補習用に新たに学んだことは特になかったので省略(過去経歴上で学んできているので)

 

4.asiyutaの実務補習の実例(参考)

以下、簡単に体験談をまとめたいと思います。

 

①1回目の実務補習

事前準備としては、以下を実施して臨みました。

  • 事例企業の業界本を2冊読み
  • 「事業デューデリジェンスの実務入門」を読み
  • 事前受取資料をざっと目を通す 程度

結果、

  • 取り巻く環境の調査が不足し、苦しむ。
  • ヒアリング漏れが生じ、苦しむ。
  • 圧倒的実力不足と、学ぶべきテーマがたくさん見える

 

②2回目の実務補習

事前準備としては、人事パートか、マーケ・営業パートを担当することを狙いつつ

  • 人事・マーケ営業に関する上記書籍+αを読み、知識を体系化した
  • 人事関係については、できる範囲で自社内で実践して感触を得た
  • 実務補習初日までに、取り巻く環境の調査を完了させた。

結果、

  • 人事パートを担当。事前学習により1回目よりまともな提案ができ、人事パートに関する理解もさらに深まった。
  • マーケ・営業についても、事前学習の効果で解像度高く見ることができた。
  • 取り巻く環境の事前調査結果は班内に共有して、多少の貢献に。

 

③3回目の実務補習

事前準備として、経営戦略パートか、財務会計パートを担当することを狙いつつ

  • 経営戦略・財務会計に関する上記書籍+αを読み、知識を体系化した
  • 経営戦略・財務会計については、できる範囲で自社内で実践して感触を得た
  • 実務補習初日までに、取り巻く環境の調査、財務分析などを終えた

結果、

  • 学んできた知識をフル動員しつつ、班長として議論をリードすることで、多角的に企業を考えることができた。総合力が高まった実感を得た。
  • 1回目・2回目では診断士としてやっていける感覚が全く持てなかったが、3回目でようやく少し光が見えた。

 

2月→9月→2月と1年かけて受講したのですが、1年間でここまで変わるか、、という自身の変化を感じました。この成長実感があるから、事前準備しっかりして受講する人がもっと増えてもいいよなー、、との想いが芽生え、本記事に至ります。

 

★★

 

以上、めっちゃ長くなりましたが、中小企業診断士の実務補習に向けた準備方法についてまとめました。

せっかく受講するなら、機会をうまく生かして成長に繋げていただければと思います。

 

ではまた!

管理会計の概要まとめ

みなさんこんばんは。asiyutaです。

仕事をしながら「この業務って利益に結び付いているのかな…?」と不安に感じたり、「どうすればこの事業は利益を生み出せるのだろう?」と疑問を持ったりすることがあったので、企業が利益を生み出しているかを管理するための方法論である「管理会計」について、最近学んでおりました。

今日は、学びのまとめとして、管理会計の概要をまとめてみたいと思います。

同じように、事業が利益を生み出しているか確認しながら仕事を進めたいけど、方法が分からず悩んでいる方の参考になれば幸いです。

 

★★

 

1.管理会計の役割と機能

管理会計の役割は、戦略策定、経営意思決定、経営管理・業務活動管理を実行・支援することであり、「意思決定会計」と「業績管理会計」の2つの機能に分けられる。

 

2.意思決定会計とは

意思決定会計とは、企業が直面している個々の問題を解決するため、最適な選択を実行・支援する会計である。レベルに応じて「戦術的意思決定」と「戦略的意思決定」に分類できる。

 

2-1.戦術的意思決定

戦術的意思決定とは、所与の経営構造のもとで行う意思決定のこと。影響期間は1年未満で、時間価値は考慮しない。

例としては、「加工か販売か」「自製か購入か」「新製品の追加または旧製品の廃棄」「受注を受けるかどうか」「製品セグメントを廃止するか継続するか」「経済的発注量の分析」「最適セールスミックスの検討」などがあげられる。

 

2-2.戦略的意思決定

戦略的意思決定とは、経営構造の変革を伴うような意思決定のこと。影響期間は1年以上で、時間価値を考慮する。

例としては、「設備投資計画」「新製品開発計画」「経営立地計画」があげられる。

 

2-3.意思決定会計の方法

意思決定会計のプロセスは、以下の流れとなる。

  1. 問題の定義
  2. 実行可能な代替案のリストアップ
  3. 各代替案の計量的(数字的)な評価
  4. 定性的要因(数字では表せない要因)の評価
  5. 最適な代替案の選択

このうち「3.各代替案の計量的な評価」について補足すると

  • ある代替案を選択した際の収益・原価がどれだけ増加・減少するかを問題とし、どの代替案を選択しても変わらない収益・原価は代替案の評価に含めない。
  • 戦略的意思決定の際は、時間価値を考慮する。経営構造が変わるような巨額の投資を必要とし、期間も長期に渡るため、犠牲になる利子の重要性が高くなるため。
  • 戦略的意思決定の際、一般的に採用される評価方法の概要は以下。
    • 正味現在価値法:時間価値を考慮した正味現在価値(NPV)の大きさで評価
    • 現在価値指数法:指数「NPV/投資額の現在価値」の大きさで評価
    • 内部利益率法:「NPV=投資額の現在価値」となる利益率(=内部利益率)と資本コスト等を比較して評価
    • 回収期間法:投資額の回収に要する期間で評価
    • 投資資本利益率法:「平均利益/投資額」の大きさで評価

 

3.業績管理会計とは

業績管理会計とは、一定期間の経営活動を統合した全体計画の設定と、その統制を行うことで、業績目標の達成を図ること。予算管理とほぼ同義と考えられ、主な機能としては、「予算編成」と「予算統制」があげられる。

 

3-1.予算編成とは

予算編成とは、経営戦略・方針に基づき設定した利益計画をもとに、一定期間の業務執行計画を会計数値で表現した「予算」を立案することである。

予算編成では、「損益予算」と「資金予算」を編成する。

 

損益予算とは

損益予算とは、企業の業績目標(≒利益目標)達成に向けて、収益・費用および棚卸資産の変動を含む次年度の業務計画を貨幣的に表現した予算である。

企業の利益目標としては、一般的に「投資利益率」「利益額」「売上高利益率」が使用される。利益目標の設定方法は、例えば投資利益率を採用する場合は、加重平均資本コストを最低希望利益率として算定し、経済状況や他社状況やリスクを勘案しながら設定する。利益目標を達成するための損益目標の検討では、CVP分析が行われる。

例えば、目標利益額達成に向けた損益予算としては、以下項目が必要となる。

  • 売上高予算
  • 製造費用予算
    • 購買予算(原材料調達予算、資材調達予算、代金支出予算)
    • 在庫予算
    • 労務費予算
    • 経費予算
  • 営業費予算
  • 営業外損益予算

 

資金予算とは

資金予算とは、次年度の資金の源泉・使途および残高を示した予算である。「運転資本予算」「現金収支予算」「信用予算」を内容としている。

運転資本予算では、資金計画表が作成される。資金計画表では、資金の源泉から資金の使途を差し引いて、運転資本の増減額が計算される。そこでは、借入金の返済計画、増資計画、固定資産や在庫への投資計画が資金面から検討される。

現金収支予算では、資金繰計画表が作成される。前期繰越高に収入を加えて、支出を差し引くことによって、収支過不足が明らかにされる。過不足を処理して、翌期の繰越高が算定される。

資金繰計画表の項目例

  • 前月繰越
  • 収入
    • 現金売上
    • 売掛金の改修
    • 受取手形期日入金
    • 前受金の入金
    • その他の入金
    • 収入計
  • 支出
    • 現金仕入
    • 買掛金の支払
    • 支払手形期日決済
    • 未払金の支払
    • 人件費の支出
    • その他支出
    • 支出計
  • 差引過不足
  • 財務収支
    • 借入
    • 手形割引
    • 設備投資
    • 借入金返済
  • 次月繰越

 

3-2.予算統制とは

予算統制とは、計画した予算を実現するためのプロセスである。予算利益と実績利益との差額を分析する方法である「予算実績差異分析」が主な機能である。

 

予算実績差異分析の方法は、総額法と差額法の2つに大別される。

総額法(項目別分析)とは、損益計算書を構成するそれぞれの項目別に予算と実績を比較して差異を算定する方法である。なお、差異は価格面・数量面で分析する。

差額法(要因別分析)とは、利益に対して各要因(特に販売量)がいかに貢献したかを直接的に把握するための方法である。貢献利益差異(販売価格・変動費・販売量の差異を分析)、固定費差異(固定製造原価・固定販売費・固定一般管理費の差異)を分析する。

 

3-3.業績管理会計の運用における重要ポイント

活動計画による裏付け

予算編成・予算管理では、会計数値に焦点を当てているが、この数値を絵に描いた餅にしないためには、裏付けとなる経営活動の計画が必要となる。つまり、非財務業績の目標設定と、目標実現のための実行計画が必要となる。

非財務業績の目標例を挙げる。市場占有率の伸び率、新製品開発比率、特許権出願件数、工場稼働率スループット(原材料の仕入れから製品納入までの期間)、生産計画の達成度、業務改革の遂行度、製品品質(クレーム件数、仕損数など)、納期順守率、顧客満足度従業員満足度など。

 

予算と活動の紐づけ(バランスト・スコアカード)

企業が業績目標を達成するには、単に財務的な業績目標(予算)を管理していればよいのではなく、現場レベルの経営活動が予算にどう結びつくのかを関連付けて管理することが重要である。そして、この予算と活動を紐づけるマネジメントシステムとして、バランスト・スコアカードが一般的に用いられる。

 

バランスト・スコアカードとは、「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」という4つの視点を用いて、業績評価を行うとともに、企業の戦略を策定・遂行するツールである。

各視点の概要を示すと

  • 財務の視点:投資家・株主に対してどのような結果を提供するべきか
  • 顧客の視点:財務的な成功を得るために、顧客にどのような結果を提供するべきか
  • 業務プロセスの視点:財務的に成功するため、顧客満足を得るため、どのような業務プロセスに優れる必要があるか
  • 学習と成長の視点:業務プロセスの改善・変化のため、どのような従業員の能力開発・成長が必要か

4つの視点は、「学習と成長の視点」→「業務プロセスの視点」→「顧客の視点」→「財務の視点」という因果関係が成り立ち、これによって、予算と活動を紐づけて管理することが可能になる。

 

3-4.製造部門での業績管理会計

製造部門は、コストセンターと呼ばれるように、原価に責任と権限を持つ。よって、原価管理が管理会計の主眼となる。

 

標準原価計算による原価管理

製造部門の原価管理では、標準原価計算による原価管理が一般的に行われる。

標準原価計算とは、原価の流れのどこかの時点で標準原価を組み入れ、標準原価と実際原価を比較して原価差異を計算分析し、かつその結果を関係者に報告する会計システムである。

標準原価の設定では、直接材料費と直接労務費は生産に必要な単位当たりの標準数量に標準価格を乗じて算定する。製造間接費は、標準製造間接費配賦率に標準作業時間を乗じて製造間接費配賦額を算定する。

原価差異分析では、直接材料費・直接労務費・製造間接費に3区分して分析する。また、原価差異を価格と数量という2要素に分けて計算し、製造間接費の差異分析には固定費が含まれるので予算との対比も行う。

 

活動基準原価計算とは

活動基準原価計算とは、「原価計算対象が活動を消費し、活動が資源(=製造間接費)を消費する」という基本思想のもとに、製造間接費をその発生原因となる活動を基準にして原価計算対象に跡付ける方法である。

従来の手作業中心の少品種大量生産時代には、製造間接費は操業度を基準に配賦されてきたが、多品種少量生産・FA化・CIM化が進む現在の製造業では、操業度による配賦が適さなくなってきており、本方法が開発された。

各製造間接費(資源)は、各活動(例:設計、段取、運搬、検査、機械、直接作業)に割り当てられ、各活動は、原価計算対象となる各製品に割り当てられる。

 

★★

 

以上、簡単にですがまとめでした。概要把握するだけでなく、使いこなせるようになりたいので、資格の勉強でもしてみようかしら。。

米国公認管理会計士(USCMA)|資格の学校TAC[タック]

また進捗ありましたら、記事にまとめたいと思います。ではまた!

 

参考書籍

管理会計/櫻井通晴

900ページ越えの辞書みたいな本ですが、管理会計について体系立て、事例も豊富に掲載されている書籍。基礎から積み上げて説明されているので、初学者にもわかりやすいです。なお、分厚さに尻込みしそうですが、1/5くらいは注釈・参考文献なので、そこまでボリューム感は感じませんでした。

 

CPA管理会計論テキスト

短答対策 (単科/教材) | 公認会計士・簿記の通信講座 | CPAオンライン校

公認会計士試験の科目に管理会計論があります。会計士試験のテキストはあまり市販されていないのですが、CPAのみHPで教材販売をしています。管理会計の要点がまとまっており、かつ例題を通して理解も深めることができます。これ1冊でも十分内容理解できますが、前述の櫻井先生の「管理会計」本を併用することで、かなり理解が深まると思います。

 

キャプランノートンの戦略バランスト・スコアカード

バランスト・スコアカードを提唱している方が解説した一冊。記事にも書いた通り、バランスト・スコアカードは、財務目標と非財務目標を紐づけ、企業内の活動に一貫性を持たせてマネジメントするために非常に重要なツールであり、管理会計を現場に落とし込む際に必須ツールと考えられる。原著を読み、理解を深めることをお勧めします。

 

マンガで入門 管理会計が面白いほどわかる本

私は、まずはマンガでわかる系から入ってイメージを掴むことを重視しており、その流れで読んだ一冊。小売店における管理会計の実践例がマンガで紹介されており、イメージがつかめて非常に参考になりました。特に業績管理会計(損益予算の管理方法)がかなりイメージわきました。

 

マンガでわかる管理会計

マンガでわかる系の2冊目。こちらは製造業における管理会計の実践例が紹介されています。こちらも読むことで、管理会計の実践方法が多角的にイメージできると思います。特に、意思決定会計(追加注文を受けるか、設備投資をするか、等々)の理解がかなり深まりました。

組織・人事改革の観点&おすすめ本5選

こんにちは、asiyutaです。

 

最近、事業を成功させるうえで組織・人事分野が非常に重要と痛感する一方、その分野の知見がなくどうすればよいかが全然掴めずモヤモヤする、という経験がありました。

モヤモヤが気持ち悪いので、組織・人事関係の本を読んで、自分なりにポイントが見えてきましたので、頭の整理がてら少しまとめてみようと思います。

 

同様の問題意識を持たれている方の参考になれば幸いです。

 

★★組織・人事改革に必要な観点

 

1.戦略の確認

ルフレッド・チャンドラー氏の「組織は戦略に従う」という言葉があるように、組織・人事を考えるには、まず戦略(全社戦略、事業戦略、機能別戦略)を確認します。

向かうべき方向を認識したうえで、全員が有機的にそこに向かうために、組織・人事制度を設計します。

 

2.3S(Structure、System、Staffing)

戦略に基づき、組織のハード面である3Sを設計します。

  • Structure(組織骨格)
    • 組織図として表される組織ユニットとその連関の体系のこと。
    • 組織図と合わせて、各組織ユニットのスペックも設計します。(ミッション、ミッション達成度合いのチェック指標、権限、人材(人数・年齢・役職・スキルなど))
  • System(制度・ルール)
    • 組織を動かすためのルールや規則のこと。
    • 意思決定システム(権限範囲、手順体系、情報経路、会議体など)、会計システム、人事システム、が主要3要素。
  • Staffing(人材配置)
    • 誰をどこに据えるかという具体的(固有名詞)な人材配置のこと。
    • 保有人材と、Structureで規定された人材要件のベストマッチを探る作業となります。

 

↑ここまでがハード面の設計。↓以降は血液である人事システムを詳細に。

 

3.人材要件・人材フローの設計

どんな人材が必要かと、その人材をどう採用・昇進・退職させるか、の流れを設計します。

  • 人材要件として設計する要素
    • 人材ポートフォリオ:組織に必要となる人のタイプ・レベルを分類し、分類別の構成比を示したもの。
    • 等級・評価基準:人材に求める要件を、業績・成果・能力・行動等でレベル別に詳細化したもの。
  • 人材フローとして設計する要素
    • 人材ポートフォリオにおいて、採用(新規・中途)、昇進・異動、退社の比率を設計。
      例えば、JTCでは新卒採用のみでスタッフ層を確保し、内部昇進のみでマネジメント層を確保、その過程で徐々に退社が進み、ピラミッド組織を形成。
      一方外資では、新卒採用後、一部のみをマネジメント層に昇進させ、ほとんどはスタッフ層で退社。代わりにマネジメント層を中途採用で獲得 など。

 

4.採用

いい人材が採れれば勝手に成果が上がるといっても過言ではないくらい、一番重要な人事領域です。以下プロセスを確実に実行します。

  • 要員計画の立案:どんな人材がどのくらい必要かを立案。
  • 手段の選択
    • あらゆる手段から、要員確保の方法を選択します。
    • 優先順位としては、①配置転換(コスト0、即効性)、②育成(コスト0、長期)、③採用(コスト要、採れれば即効性)、④外部委託(コスト膨大、繁閑激しい場合は委託で調整はアリ)。
  • 求める人物像を設定
    • 演繹・帰納の両面から要件を設定します。
    • 後天的要素ではなく先天的要素で絞ることで、現実的な要件に落とし込みます。(後で育成できるものは採用時点では不要)
  • 候補者集団を形成:
    • PULL型(メディア、エージェント)とPUSH型(リファラル、スカウト)を、自社採用ブランドの強さ・求める人物像から使い分けます。
    • PULL型は、まず興味を惹き、その後リアルな現実をありのまま伝えることで、求める人材以外が集まらないように調整します。
    • PUSH型は、優秀人材に地道にアプローチします。
  • 選考プロセスと選考ツールを設計
    • 初期は能力、中期はパーソナリティ、最終は相対的なレベル感、を見ます。
    • 面接では、過去エピソード、人と関わって頑張ったこと、苦労したこと、長期に渡ること、嫌だけど取り組んだこと、役割・程度・動機、などから、能力・性格を把握します。
    • 歩留まりを設定し、PDCAを回すことで、管理します。(内定率、受験率、書類通過率、筆記通過率、面接通過率、途中辞退率、内定辞退率)
  • 内定・入社
    • 企業の良いところも悪いところも伝え、ミスマッチを防ぎます。

 

5.育成

事業戦略につながるよう、以下サイクルを回し、育成を行います。

  • 育成目標の設定
    • 人材ポートフォリオ、人材フロー、評価基準等を参考に、各メンバーの育成目標を設定します。
    • 各個人に設定させても良いですが、会社が期待すべき方向性は示すべきです。
  • OJTを軸に育成
    • OJTを軸に育成します。
    • 米国ロミンガー社調査によると、成長の要因は、70%が自らの経験、20%が周囲からのアドバイス、10%が研修や本。つまり、OJTをベースとした成長がメインとなります。
    • このOJTによる学びを最大化するために、振返りの機会を設計します。コルブの経験学習モデルによると、①経験→②内省→③教訓→④実践、のサイクルにより、学びを最大化することができます。
    • また、Off-JTで体系的な学びを補完することで、OJTの欠点を補い、OJTによる効果を最大化します。
    • 割り当てる業務は、コンフォートゾーンの外の業務を割り振り、成長を促します。
  • 評価して現状レベルを伝達
    • 現状のレベルを伝え、育成目標とのギャップを認識させることで、次の目標設定に活かします。
    • 心が折れず、前向きな姿勢を維持できるよう、面談等で励まし、サポートします。

 

6.評価

評価は、給与等の報酬を決めるという目的も大事ではありますが、それよりも「人材育成」「業績向上」のためのマネジメントツールとして活用することが重要です。

戦略と整合した評価項目・基準・方法により、組織ユニット・メンバーを評価することで、各組織ユニット・メンバーの現状が分かり、何を成すべきかが明示され、次への方向性が示されます。

 

なお、報酬面での評価制度については、メンバーへ説明可能な制度とし、公平に処遇が分配されていると納得感を得ることが重要です。結果=賞与、行動=昇進・昇格・昇給、能力・性格=採用・異動など、どの評価がどの報酬と紐づいているか明確化することも納得感に繋がります。

 

7.報酬

モチベーション高く働いてもらうために、報酬を設計します。

 

報酬は、外から与えられる外的報酬(賃金・社会的地位など)と、仕事そのものから生まれる内的報酬(やりがい等)に分けられます。

外的報酬は不足すると不満に繋がり、内的報酬は充足すると満足に繋がるため、「大きな内的報酬と適度な外的報酬」を目指すのが理想的です。

 

ハーズバーグの二要因理論と比較すると、内的報酬=動機付け要因、外的報酬=衛生要因、と言えると思います。

  • 動機付け要因:「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進・向上」など
  • 衛生要因:「給与」「福利厚生」「経営方針・管理体制」「同僚との人間関係」「監督(上司との関係など)」など

 

外的報酬(特に賃金)の設計方法
  • 賃金=基本給+手当+賞与+退職金 
  • 基本給は、年功、職務、職能の総合的評価で設定。
  • 手当は、基本給の補完(資格など)と生活への配慮(居住エリアなど)で設定。
  • 賞与は、業務成績に応じて支給。
  • 退職金は、長期勤続の奨励程度に応じて設定。

 

内的報酬の設計方法の参考観点
  • 職務特性モデル(ハックマン=オルダム・モデル)に基づくと、業務に以下特徴を持たせることで、やりがいの向上が見込める。
    • 技能多様性:単調な仕事ではなく、自分が持つ多様なスキルや才能を活せる
    • タスク完結性:始めから終わり(完結)までの全体を理解した上で、関われる
    • タスク重要性:他者の生活や社会にインパクトをもたらす重要な仕事
    • 自律性:自分で計画をたてたり目標設定したり、自分のやり方で進められる自由度の高い仕事
    • フィードバック:結果がどうなったのかを、その都度、知ることのできる仕事
  • リクルート「若者を仕事に駆り立てる」心理的条件に基づくと、業務に以下特徴を持たせることで、意欲向上が見込める。
    • 自己有能性(自分はできる!):挫折感や自信の喪失などの葛藤を乗り越え自己効力感を体験
    • 自己決定性(自分で決める!):自由裁量の幅が大きいだけではなく、自己責任性を伴うこと。
    • 社会的承認制(認められている!):努力、苦労、成果が認められることで心理的充足と情緒的安定を得ること。

 

8.配置

配置は、以下目的で行います。

  • 適材適所(組織内での採用活動とも言える)
  • 人材育成(配置こそが最も重要な育成手段)
  • 組織活性化(部署間コミュニケーション、仕事の属人化防止)

以下ポイントを押さえて行うことが、成否に大きく影響します。

  • 働く人が希望していること
  • 1人ひとりのキャリアを真剣に考え、丁寧に伝えること
  • 配属される人と配属先の構成員・チームとの相性。同質関係・補完関係を意識。

 

9.代謝

代謝を考えていない組織が多いですが、代謝の少ない組織は、組織構成が歪になり、いずれ痛みを伴うリストラを招きます。

つまり代謝は、組織の人材ポートフォリオを適正に保ち、次世代に育成機会を提供するために重要な施策となります。退職率のコントロールは難しい課題ですが、設定して管理する姿勢が、組織構成の適正化には必須です。

 

退職率のコントロールには、組織に留めようとする求心力施策と、退職させようとする遠心力施策を使い分けることが重要です。

  • 求心力施策の例
    • 組織の一体感や愛社精神を高揚させるイベントや評価・認知活動
    • 社内業務に役立つ能力開発への投資
    • 残留インセンティブの高い退職金
    • 報酬アップ など
  • 遠心力施策の例
    • 社外を含めた選択肢を検討させるキャリア研修
    • セカンドキャリア支援の退職金
    • 早期退職による退職金の上積み
    • 役職定年制度 など

 

★★

 

以上、簡単にですが組織・人事改革のポイントを整理しました。

引き続きブラッシュアップしていこうと思います。

ではまた!

 

おすすめ書籍

1.組織設計概論/波頭亮

戦略に基づき、いかに組織制度を設計するか、ロジカルに描かれた一冊。古い本だけど、エッセンスは何も変わらないことが分かる。

 

2.図解人材マネジメント入門 / 坪谷邦生

帯に「この1冊で、すべてが分かる」と記載がある通り、人事の全領域が網羅されている。見開きに1メッセージが図解されており、非常に明瞭。また、多様な書籍出典が明記されており、この1冊を軸に色々と深堀するのもよさそう。

 

3.人事と採用のセオリー / 曽和利光

「セオリー」と題するのが納得の1冊。人事の全体を描いたうえで、採用のセオリーを明確に示しており、靄が晴れる想いで読んだ一冊。

 

4.人事評価制度のつくり方 / 山元浩二

企業のビジョン実現に向けて、組織・構成員をどう方向づけ、マネジメントするかのツールとして、人事評価制度をいかに設計し、運用すればいいかが分かる一冊。評価制度設計の際に参考にさせていただいた。

 

5.人事評価の教科書 / 宮川淳

4と同様、企業のビジョン実現に向けて、組織・構成員をどう方向づけ、マネジメントするかのツールとしての人事評価制度の設計方法を学べた一冊。4・5両方読むと、かなり掴める。

 

その他

経営戦略概論 / 波頭亮

1の著者が、経営戦略の歴史的潮流を描いた1冊。なぜ今「組織・人事」分野が重要となってきているか、その背景が分かる。

 

人事の超プロが明かす評価基準 / 西尾太

評価基準が多数例示されており、参考になる。

 

共働き子育て世帯が、子育て支援策について感じたことをまとめてみた(1歳編)

こんにちは、asiyutaです。

 

1年前に、子育て支援策について感じたことをまとめました。あれから1年経ちましたので、今日はこの1歳編をまとめようと思います。

これから子育てされる方や、子育て関係の仕事に関わる方の参考になれば幸いです。

asiyutav2.hatenablog.com

 

★★

1.パパが子育て理由で仕事休めるような社会が必要では?

自分がというより、周りの同世代の子育て世帯やtwitter等を見て感じたことですが、夫婦間で子育てがうまくいっていない原因のほとんどが、以下ループに陥ることで生じている気がしました。

  1. 夫側が仕事を休めない(休まない)
     &
    妻側が仕事を休まざるを(諦めざるを)得ない
     ↓
  2. 子育て分担に差が生じる
     &
    子育てスキル(子供の懐き度合いも)に大きな差が開く
     ↓
  3. より妻に依存した子育て体制に
     ↓
  4. 1に戻る

 

このループ自体は問題ではないと思っています。では何が問題かというと、夫婦間で「子育ては分担したいよね」というビジョンを掲げているにも関わらず、このループに陥ってしまっている家庭です。そして、このケースに陥っている家庭は、けっこう多いのでは、と感じます。

 

例えば、週末は子連れパパをたくさん見かけるのに、平日の病院ではママしか見かけなかったり、1歳半検診ではパパが1人もいなかったり。

我が家では、1歳半検診には私が連れていったのですが、男性が自分1人しかいないあの空間を目の当たりにして、「男性が仕事休めない問題はかなり根深そう」と感じたのを今でも鮮明に覚えています。

 

で、じゃあどうしたらいいんだ、というところですが、

  • 行政側・・・子育て支援を充実している企業を認定して見える化したり、企業の子育て支援の社会機運を高める
  • 共働き子育て世帯側・・・子育てしやすい会社に転職したり、社内で働き方の変化をすることで、企業側に圧力をかける
  • 企業側・・・子育て理由の離職を防止して優秀な人材を長期確保するため、子育て支援策を充実させる

と、労働市場において「子育て支援策の充実度」が重要な要素となるように、取組を進めていくしかないのかな、と思います。

以前の記事でも紹介した「くるみんマーク」や、それに準じる施策の強化が必要と感じました。

www.mhlw.go.jp

 

 

2.歩行空間設計はもう少し何とかしてほしい

日々、保育園の朝の送迎をしていて感じることが、「子供を歩かせて登園させてあげたい」ということです。

我が家から保育園までの道のりは、歩道がない道があったり、保育園前の道路では登園の自動車・自転車がたくさん通行しており、とても安心して子供を歩かせられる環境ではなく、仕方なく抱っこして登園しているのですが、最近歩き始めた我が子を見て、「歩いて登園させてあげられたらめっちゃいいのにな~」と日々感じておりました。

 

で、この記事を書くにあたって少し考えてみたら、保育園前の道路は、登園関係の通行以外、登園時間帯の交通ってほぼないんですよね。で、保育園前道路を少し進むと高架があって、高架下には交通がほぼなく、かつ割と広めのスペースがあるんですよね。

 

で、これって、保育園前の道路を時間規制通行止めにして、保育園送迎関係の車両は保育園前道路を進んだ先の高架下に駐車・駐輪スペースを設けてしまえば、歩いての登園ができるのでは?と。

 

これに限らず、日本の道路空間は、自動車優先で整備されてきて、歩行者がないがしろにされてきました。子供の安全を守る、という切り口で、積極的な歩行空間の設計・規制をしてほしいなと感じました。

都道府県・市町村の道路管理者や警察の交通規制者に、ぜひ頑張っていただきたいところですね。

【スクールゾーンの規制】標識や時間帯、違反時の罰則と許可証の申請について | カーナリズム

 

 

3.病児保育体制は充実していた

1年前から保育園に通いだしたのですが、聞いていた通り、保育園1年目ということでメチャメチャ風邪をひきました。平均して月2回は風邪をひいたと思います。そして1回ひくと1週間弱は回復までに時間を要したので、実質半分くらい保育園通ってなかったのでは、という気もします。

 

そんな状況下でしたが、なんとかなった1年でした。我が家が利用したサービスとしては以下2つで、特に市の病児保育室・病後児保育室を利用していました。

  • 民間の病児保育サービス
     登録しておき、必要な時に数回利用させていただきました。当日朝8時までに連絡すれば、当日預けOKという対応力が、非常に安心感があり助かりました。
  • 市の病児保育室・病後児保育室のサービス
     メチャメチャ利用しました。1日2500円程度という破格の安さ。市内に数か所しかなく、アクセスにやや難もありましたが、病気の際に格安で預け先があるって本当に助かりました。

 

正直、1年前はすごく不安だったのですが、社会として病児の保育体制が非常に整っていることを感じました。もちろん、会社の理解があってこそではありましたが。

 

 

4.待機児童はマッチングの問題も多分にありそう

保育園に落ち、仕事復帰できなかった友人が身近にいたのですが、その友人の住むエリアの行政公表資料を見ると、「募集人数」に対して「申込人数」は下回っていたのですよね。

つまり、保育キャパは足りているけど、ある特定園に希望が集中したことによって、保育園に落ちてしまったようでした。(人気園だと、定員に対して3倍の応募になっていました)

特定園に希望が集中する事情は、預けられる年齢の上限であったり、各園の教育方針の良し悪しであったり、色々な要因があるのですが、保育キャパは足りているわけなので、ここ何とかならんかなぁ…と感じるところがかなりあります。

 

聞くところによると、保育園の希望申請書は紙ベースで提出され、それを行政側では手作業で処理していて、アナログで負荷がかかる割に融通が利きづらい仕組みになっているとか。(※正確には把握できていません)

 

1年前の記事でも書きましたが、各園の情報がよりオープンになったり、デジタル化によりマッチングがより柔軟にできるようになることで、ミスマッチをもっと減らせそうな気はかなりするので、行政・民間それぞれから取組が必要だな、と感じました。

 

★★

以上、簡単ですが子育て支援策について感じたこと1歳編をまとめてみました。

色々書きましたが、この1年、個人として不満に感じた点はほぼなく、むしろかなり子育てしやすさを感じていて良い意味で驚いた1年でした。

日々このような環境を整えてくださっている方々に感謝するとともに、自分も支援する側として少しでも力になれれば、と思います。

 

ではまた!

コミュニケーション力を言語化してみた

こんにちは、asiyutaです。

最近、コミュニケーション力の重要さを信奉している方と話す機会があり、コミュニケーション力の奥深さと、自分がコミュニケーション力について何も分かっていない、ということに気づく機会がありました。

その人が言うなら、ということで、コミュニケーションに関する入門・簡単めな書籍を色々と読み漁ってみましたので、色々読んだ結果私が解釈した「コミュニケーション力」について、本日はまとめてみたいと思います。

 

★★

 

1.コミュニケーション力の定義

コミュニケーション力とは「対人間で情報・意思を円滑にやり取りする能力」と定義できると考えます。

また、その能力は大きく、「受け取る能力」と「伝える能力」に分けられます。

 

2.情報・意思を「受け取る能力」とは

①声掛け、②受容、③共感、と考えます。

①声掛け

日頃からコミュニケーションを取り、話しやすい関係性を作る能力。普段から話しかけてくれる人って、こちらからも話しやすいですよね。

 

②受容

相手をきちんと受け止める能力。話をしっかり受け止めてもらえる相手って、話してて安心しますよね。

 

③共感

相手の話に共感する能力。共感してくれたのが見えると、「分かってくれた!」ととても嬉しくなりますよね。

 

3.情報・意思を「伝える能力」とは

①後イメージ、②相手の利、③プリフレーム、④やる気ワード、⑤ロジカルに質感、と考えます。詳細は以下。

①後イメージ

コミュニケーションをする前に、コミュニケーション後に、相手とどんな関係性を築きたいか、相手にどう動いてほしいか、をイメージする力です。何のためのコミュニケーションを取ろうとしているかを明確にすることで、コミュニケーションの質を高めます。

 

②相手の利

相手の利益は何か、自分と共通の利益は何か、自分とは異なる利益は何かを理解する力です。相手の利益を踏まえてコミュニケーションすることで、より相手に刺さることができます。

 

③プリフレーム

相手に肯定的な先入観を持ってもらうための、事前の伝達能力です。例えば「今から、あなたのさらなる成長に向けた課題をお伝えします」と伝えることで、問題点を伝えてもよりポジティブに受け取ってもらえることができます。

 

④やる気ワード

相手にやる気を出してもらうための、マジックワードを活用する能力です。伝え方が9割によると、以下3ステップ+7切り口が大事なようです。

  • 「イエス」に変える3つのステップ
    • 自分の頭の中をそのまま言葉にしない
    • 相手の頭の中を想像する
    • 相手のメリットと一致するお願いをつくる
  • 「イエス」に変える7つの切り口
    • 相手の好きなこと
      (「デートしよう」ではなく「おいしいラーメン屋に一緒に行こう」)
    • 選択の自由
      (「AとB、どちらがよい?」と選択肢を提示して、相手に決めさせる)
    • 認められた意欲
      (「・・・が上手だから・・・」と相手の能力を認める言葉から始める)
    • あなた限定
      (「あなただけには…」と特別感を出す)
    • チームワーク化
      (「一緒に・・・」とチームワーク化する)
    • 嫌いなこと回避
      (「これが嫌いだと思うから、回避する選択をしよう」と提案)
    • 感謝
      (「ありがとう、・・・」と感謝から始める)

 

⑤ロジカルに質感を

最後に、ロジカルに話しつつ、内容の質感をきちんと伝える能力です。

 

コミュニケーションの理解とは、各個人の体験に根差しています。例えば同じ単語でも、人によって全く異なる質感でとらえられています。それをコミュニケーションのプロセスとして示すと、

話し手の体験 →①→ 話し手の言葉 → 聞き手がその言葉を受け取る →②→ 体験に基づく聞き手の理解

①の言語化、②の解釈の際に、情報が省略・歪曲・一般化され、ミスコミュニケーションが生じます。

 

なので、PREP(結論、理由、事例、結論)の構成を意識するなど、ロジカルに話しつつ、きちんと相手に質感が伝わったかを確認することが大事です。

 

4.コミュニケーションの前提には健全な自分のメンタルが必要

見出しの通りですが、コミュニケーションには、まず自分のメンタルをニュートラルに保ち、感情に流されず、正しいスキルをいつでも発揮できるようにする必要があります。

そのためには、感情をコントロールする能力、落ち込みからすぐ立ち直る能力が必要です。

 

★★

以上、簡単にですがまとめました。

自分の中で言語化できたので、あとは実践して習得あるのみです。(そこが一番難しい)

ではまた。

 

参考書籍

※コミュニケーションスキルなので、実際の活用方法がイメージしやすい漫画から主に情報収集しました。

 

傾聴の基本がよくわかります。

 

 

なぜミスコミュニケーションが起こるのか、どうすれば防げるのか、が論理だてて紹介されています。

 

自分も相手も大切にするコミュニケーション方法「アサーション」が学べます。

 

交渉術の基礎が分かります。ベースの書籍がしっかりしているので、内容が濃密です。

 

 

交渉術の応用が分かります。ベースの書籍がしっかりしているので、内容が濃密です。

 

日常で使える伝え方のテクニックが学べます。交渉術と通ずる部分が多分にあります。

 

 

周囲との関係性の中でロジカルシンキングをいかに発揮するか(ロジカル会話術)を学べます。

 

 

ストレスから早期に立ち直る方法が学べます。

 

 

怒りの取扱い方、感情に流されない方法が学べます。

 

 

コミュニケーション力をベースにした応用スキルである「コーチング」の概要が分かります。

 

 

コミュニケーション力をベースにした応用スキルである「教える技術」、特に行動科学マネジメントに準拠した技術が分かります。

 

 

コミュニケーション力をベースにした応用スキルである「教える技術」、特にリーダー向けの行動科学マネジメントに準拠した技術が分かります。

 

 

コミュニケーション力をベースにした応用スキルである「ファシリテーション」が学べます。

 

 

ロシアのウクライナ侵攻 ざっと調べた状況まとめ

ロシアによるウクライナ侵攻について、ざっと状況を調べたので、稚拙ですが備忘メモを残します。

★★

1.なぜロシアはウクライナ侵攻したのか?

  1. プーチン陣営が本気で身の危険を感じたから
  2. 自国陣営(と認識している)領土を侵害され、これ以上黙っていられなかったから

あたりが理由のよう。

 

プーチン陣営が本気で身の危険を感じたから

NATOという、言わばロシアと対抗するための軍事同盟が拡大していて、近年旧ソ連でロシアの喉元にあるウクライナも加盟を目指す動きを見せた。

そもそもプーチン陣営からすると、ソ連が崩壊・ワルシャワ条約機構が解体した際、「NATOは東方に拡大しない」と口約束していたにも関わらず、どんどん加盟国を増やして、気づけば元同胞・旧ソ連ウクライナまでNATOに加盟しようとしている状況。都度「これ以上東方に来ないでくれ」と釘を刺していたにも関わらず、喉元まで来てしまった状況。

 

日本に置き換えてイメージすると、1990年代にはロシアしか敵対していなかったのに、今やその軍事同盟に韓国・北朝鮮・ロシア・中国・台湾・ベトナム・フィリピン・インドネシア・オーストラリア・アメリカという日本を取り巻く全ての国が加盟し、対日本の包囲網を作って、銃口をこちらに向けているような状態。その状況下で、さらに九州地方がその軍事同盟に参加しようとしている、みたいな状況のよう。

極めつけに、米国は敵と定めた相手の指導者を必殺しているような国。

 

上記を想像すると、本気で身の危険を感じて、対抗策に打って出ようとしているのだろう、と推察。

 

②自国陣営の領土を侵害され、これ以上黙っていられなかったから

色々と歴史的経緯はあるが、ロシアからしたら「ええ加減こっち来るな。俺んとこの土地で何さらしとんじゃ」的な感覚の様子。堪忍袋の緒が切れるラインを超える出来事が、ウクライナNATO加盟への動きだったよう。

 

独統一の際、NATO東方不拡大の約束はあったのか(ニュースソクラ) - Yahoo!ニュース

北大西洋条約機構(NATO)|外務省

<Q&A>NATOって何?ロシアはなぜウクライナの加盟に反発するの?:東京新聞 TOKYO Web

「ロシアの論理」で読み解くウクライナ危機【豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス】(2022年2月9日) - YouTube

 

2.この後どうなるの?(侵攻関係)

プーチン陣営としては「俺んとこの土地にこれ以上来るな。舐めてたらエライ目にあわすぞ。」という表明が今回の侵攻と予想すると、

  • ウクライナがロシア陣営であることを確定させる(=ウクライナ全土 or 一部をロシア寄り政権の国家にする)
  • 今後手を出さないように睨みをきかせる(=諸外国にこの状態を核兵器をチラつかせながら認めさせる)

というところを目指していくのだろうと。

 

一方、NATOは派兵するとあまりにリスクが大きすぎる(=第三次世界大戦・核戦争に突入しかねない)ので、経済制裁を段階的に実施して折り合いをつけるのとの見通し。

既に、事前の話では最終手段とみられていた「SWIFTからの除外」も実行に移されている。

 

ロシア侵攻 vs ウクライナの防衛&NATOを中心とした世界の経済制裁 が今後どうなるのか。

核を保有しているプーチン陣営が今後どんな手段に出るのか。

プーチン陣営のブチギレ度合い・必死さがどの程度か次第な気がする。本当にげんなりするが、引き続きウォッチしたい。

 

ウクライナ危機 ロシア全面侵攻 今後の展開は?国際社会の対応は?専門家・記者解説|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト

ロシア侵攻後のシナリオを緊急解説~全面戦争か”落とし所”か〜ウクライナ危機【豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス】(2022年2月24日) - YouTube

バイデン大統領「制裁はかつてない規模 ロシアは代償を払う」 | ウクライナ情勢 | NHKニュース

【解説】 西側諸国の経済制裁、ロシアは以前から準備(BBC News) - Yahoo!ニュース

ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について : 財務省

対クリミア等制裁関連(METI/経済産業省)

ウクライナ情勢に係る各国・地域の見方 | 特集 - ビジネス短信 - ジェトロ

 

3.この後どうなるの?(経済関係)

ロシアとの貿易・経済活動・人流がストップし続けると、色んな経済面の影響が出そう。

まずはエネルギー。石油・石炭・天然ガスをロシアから輸入している日本は、貿易停止に伴い、備蓄で一時しのぎつつ、代替輸入先を早急に確保しなければならなさそう。冬場のピークを過ぎたタイミングなのが幸いだけど、今後の価格高騰・供給不安定化は免れないのだろうと予測。

また、穀物水産物、鉱物、自動車・粗鋼等の貿易も停止されると、コロナ・米中貿易戦争で大変だったサプライチェーンが、さらに甚大な影響を受けると予測。

欧州での経済影響が、全世界に広がるリスクもありそう。

ロシアの統計データ - Global Note

第1弾の対ロ制裁よりも追加措置が世界経済・金融市場に大きな打撃に | 2022年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

ロシア制裁が日本経済に跳ね返る危険性 ~ドル決済停止という劇薬~ | 熊野 英生 | 第一生命経済研究所

ウクライナ情勢が石油や穀物などの商品市場に与える影響とは | Business Insider Japan

ウクライナ情勢を受けたエネルギー市場安定化への我が国の対応 (METI/経済産業省)

ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置を実施します (METI/経済産業省)

 

★★

以上簡単にですが頭の整理がてら。

核戦争の可能性がよぎってしまうこの状況に本当にげんなりするが、できる範囲で状況は追いつつ、個人としてもできることはしていきたいと思います。

 

ではまた。

中小企業診断士の実務補習「心構え」まとめ

こんにちは、asiyutaです。

先日、1回目の実務補習を受講しました。本当に本当に大変でしたが、わずか2週間ほどで大きな成長実感を得ることができました。貴重な機会を頂き、関係各位には本当に感謝申し上げます。

今日は、来る2回目の実務補習に向けて、心構えをまとめておこうと思います。未来の自分向けではありますが、これから初回の実務補習を受けられる方の参考にもなれば幸いです。

 

★★

 

1.事前準備

①指導員から受け取った資料+顧客企業HP類は、全て目を通すべし

事前に色々と資料を受け取ると思いますが、それらに目を通すのは必須です。また、目を通しつつ、SWOTや、戦略・財務・マーケ・生産・組織の観点で情報を整理しておくと、後々に役立ちます。

 

②外部環境分析は事前に終えるべし

外部環境分析は、顧客企業と事業概要が分かった段階でできる作業です。そして、取り巻く環境を正しく理解しておくことで、ヒアリングで聞くべきポイントが明確になったり、その後の議論を正しい認識のもと進めることができます。実務補習開始後に調べる時間はあまりとれないので、事前に整理し終えておいた方が望ましいと感じました。

 

③財務分析もできれば事前に終えるべし

財務分析を行うと、顧客企業の現状と課題が見えてきます。こちらも事前に終えておくことで、ヒアリングの要点や、議論の方向性を正しく認識できます。実務補習開始前に終えておくことが望ましいと感じました。

なお、業界平均との比較をするには「業種別審査辞典」が必須と感じました。またこちらには業界の特徴や動向も記載されており、業界の状況を把握するうえでも活用できます。金融機関に勤めていない場合、図書館等で情報を入手するのが面倒ですが、頑張る価値はあると思います。

 

ヒアリング内容は事前にまとめるべし

当然ですが、ヒアリング内容も事前にまとめておくべきです。もし事前にパート分けがされている場合も、いったん全パートの質問事項を洗い出しておくことをお勧めします。班員の方がヒアリング漏れをした際もカバーでき、後々の議論の質に影響が及びます。

 

⑤顧客企業の業界本も1冊でよいから読むべし

顧客企業の事業内容がなじみある分野なら不要ですが、そうでない場合は、簡単な入門書を1冊でよいので読んでおくことをお勧めします。理解度が全く変わります。

 

2.社長ヒアリング(1日目PM)

⑥事前に準備した質問事項をしっかり聞き取るべし。

まずは、質問事項をしっかりヒアリングすべしです。社長の話は色々と行ったり来たりしますが、話の流れと違うな、少し細かすぎるな、と感じたとしても、臆せず聞くことが大事です。

今回私の一番の反省点がここです。顧客企業のことを何も知らない状況なので、まずは現状をしっかり把握しないと、具体的な課題が全く見えてきません。社長が思っている課題が妥当なのかの判断もできません。忖度せず、ぐいぐい聞き取りましょう。

 

⑦現場の写真を許可を取って撮影させてもらうべし。

可能なら、現場の写真を許可を得たうえで撮影させてもらいましょう。こちらも、まずは現状把握をすることが、課題を明確化するファーストステップという考えです。全く知らない顧客企業について、1度訪問しただけでは印象で議論が進みがちです。そこで写真という事実に基づくことが重要となります。

 

3.グループワーク前半戦(2日目~3日目)

⑧自分のパートは無視して、戦略議論にフルコミットすべし

ヒアリングと現場視察をもとに、顧客企業の戦略を全員で議論します。班長・リーダーは便宜上決まっていますが、最終報告書の質が高まるのであれば、誰が議論をリードしてもOKです。

ときには、ホワイトボードの前に立つことも必要かもしれませんし、議論をパワポで図解して共有することが必要かもしれません。班長・書記等の役割は決まっていますが、できる人が積極的に行って、全体の議論が進めばそれでOKと思います。

全体の戦略が定まらないと、具体的な打ち手として何を提案すべきかが全く見えないため、ここの議論の深度が本当に重要です。可能な限りチームに貢献しましょう。

 

⑨社長に寄り添って考えるべし

社長は何に悩んでいるのか、どこに向かいたいのか、何を解決したいのか。

今回の実務補習先の社長は本当に優秀な方でした。が、そんな社長でも何かに悩み、外部の視点を借りようとされていました。そこに提供価値があると考え、取り組むことが大事と感じました。

顧客企業の参謀として会社に入り、社長と肩を並べながら、悩みの解決に導く。そんなイメージをしながら取り組むのが良いのでは、と考えます。

 

4.グループワーク後半戦(4~5日目AM)

⑩プレゼンを意識して資料をまとめるべし

作成した報告書は、そのままプレゼン資料となります。プレゼン資料になることを想定して資料を作成された方がよいと感じました。

 

⑪具体的な提言を目指すべし

教科書的な提案をしても、相手の心には何も響きません。具体性をいかに出すか。これが重要と感じました。ネット検索等を駆使して事例紹介するだけでも大きく見違えます。

 

5.社長報告会(5日目PM)

⑫プレゼンの発表論点は絞るべし

あれもこれも説明するより、プレゼンの論点は3つ程度に絞るべきと感じました。

報告書は顧客企業に提出します。なので、読めば分かるわけです。そのうえでなぜプレゼンするかというと、報告書を読むだけでは見えてこないことを伝える為です。重要論点を明確に浮かび上がらせ、そこのニュアンスをしっかり理解してもらうことが、プレゼンの意義だと考え、思い切って論点を絞ってプレゼンすべきと考えます。

 

⑬報告会後の社長の本音の悩みに応えるべし

今回の報告会後、社長から本音の悩み相談のような質問が出てきました。この相談にどれだけ寄り添えるかが、コンサルタントとしての本当の技量だと感じました。今回は全く太刀打ちできず、情けない限りでしたが、次回こそはと、準備したいと感じました。

 

6.実務補習後

⑭実務補習で学んだことを実践すべし

実務補習を通じて、圧倒的に成長できます。ここで得た知識・スキルを実践して血肉にしない手はありません。

さっそく自分でビジネスをするのか、自社に戻って実践するのか、人それぞれとは思いますが、せっかくの学びを活かして血肉にしましょう。

 

⑮日々研鑽を重ねて次へ備えるべし

実務補習はあっという間に過ぎ去ります。そして、実務補習中に調べた知識を提言に活用なぞ正直できないと感じました。本業をしつつ、新たに学んで、顧客企業が実践できるレベルで理解して、かみ砕いて提案に入れ込む。そんな時間取れませんでした。

つまり、普段から武器を磨き、解決策の引き出しを増やす、そういう努力が必須と感じました。そして、その引き出しから顧客企業に合った解決策を必死になって提案するのが実務補習だと感じました。

 

一つ分野を述べると、中小企業はやはり人で困っていると感じました。採用・配置・育成・組織風土醸成等々。色んな事をやりたくても、人がいない・採用できなくてできないでいる現状をヒシヒシと感じました。

筆記試験の事例1について、受験中は正直ピンときていなかったのですが、実務補習を通じて重要さに気づきました。そして、これを武器として磨いておくことが、一つできることとしてあるのでは、と感じました。

 

★★

 

以上、心構えを簡単にまとめました。

実務補習中は、睡眠時間が削られたりと本当に体力的に厳しいですが、きっちり戦略をチームで議論して、より良い報告書を目指すことで、自身の成長と、最高の仲間を得ることができる、得難い経験ができる絶好の機会です。

ぜひ、最大限に活用していただければと思います。

 

ではまた。

 

実務補習のおススメ書籍

実務補習中に実際に参考になったと感じた本をご紹介します。

波頭亮「経営戦略概論:戦略理論の潮流と体系」

今回の実務補習では、戦略をいかに描くかが重要でした。この本を読んでおいて、戦略理論の理解を深めておいてよかったなと感じたので、おススメしておきます。

 

寺嶋直史「事業デューデリジェンスの実務入門」

初回の実務補習で、何を準備すればよいか分からない中、この本が参考になりました。初回補習の方にはおススメです。

 

三枝匡「V字回復の経営 2年で会社を変えられますか 企業変革ドラマ」

PPMを用いて各事業の戦略を見直し、実行に落とし込む。小説仕立てで臨場感持ってその方法論を学ぶことができる1冊です。実務補習を振り返って、この1冊がふと浮かびました。まさにこの能力が求められていたのかと。非常におススメです。

 

五十嵐瞭「多品種少量生産の生産管理改善」

今回の顧客企業は製造業でしたが、多品種少量生産をされていたため、以前読んだこの本が非常に参考になりました。提言にも一部盛り込ませていただきました。

 

日刊工業新聞社「今日からモノ知りシリーズ」

あまり詳しくない製造業の業界を知るうえで、このような入門書が非常に理解を助けてくれました。今回の顧客企業は金属材料ではなかったのですが、これとは別分野の本で学ばせていただきました。

 

藤田彰久「IEの基礎」
IEの基礎

IEの基礎

Amazon

製造業の現場改善でIEは常套手段ですね。こちらの本も参照しながら、提案内容を検討しておりました。

両親・祖父母の若かりし頃の映像を観て、人の一生に対する理解が深まった件

こんにちは、asiyutaです。

 

我が家では、子の写真や動画を「みてね」というアプリに日々投稿することで、両親や祖父母に共有しているのですが、それを見ていた両親から最近「そういえば…」とあるDVDを渡されました。

 

そのDVDというのが、私が幼少の頃の動画を祖父母向けのプレゼントとしてまとめた動画でした。両親としては、私が子供の頃と比較することで、「ここは似てる」「ここは似てない」等々比較でき、より面白いのでは…という気持ちでDVDを渡してくれたようでした。

 

せっかく貰ったし観るか、と子と一緒に観ていたのですが、そこには、私と同じ年頃の両親(アラサー時代の両親)と、還暦頃の祖父母が、子育てに勤しむ様子が映っていました。

 

そして、ガコンッと何かがハマる音がしました。

それは、人の一生とは、

  • 私が生きてきた0歳から30歳頃まで
  • 両親が生きてきた、30歳頃~60歳頃まで
  • 祖父母が生きてきた、60歳頃~90歳頃まで

という過程を辿るのだな、という感覚でした。

自分と、身近な家族の人生を通して、人が産まれてから死ぬまでの過程を鮮明にイメージすることができたのです。

 

「あぁ、人はこうやって一生を過ごしていくのか」と妙に納得しました。それは非常に不思議な感覚でした。本当の意味で人間になったというか、人類史のバトンを受け取ったというか、死への道が見えたというか、この世にようやく定着したというか。

 

もちろん、時代の変化によって両親・祖父母の時代とは全く異なる人生を歩むでしょうし、私自身の選択によって全然違う道のりになることは予想されます。しかし、人が産まれ、成長して、子を育て、成熟して、老いて、死にゆく、この生物学的な過程はそこまで異ならないのではないかと。

 

両親・祖父母の人生を通じて、生まれてから死ぬまでの道のりが解像度高く見えるようになり、人の一生に対して視界が開けたと感じる出来事でした。

 

以上、言語化しておきたく簡単ですが記事にします。

生きてると、ふとした瞬間に発見があるものですね。

ではまた。

エネルギー政策の見通しについて簡単にまとめてみた

皆さん、こんにちは。asiyutaです。

先日、第6次エネルギー基本計画のパブリックコメントが行われましたね。

 

エネルギー分野は個人的に関心がある分野で、特に今年の4月に温室効果ガスの削減目標「46%」が表明され、実行計画が気になるところでしたので、パブコメ案と、その案のとりまとめを行った「総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会」の過去会議の配布資料・動画を1年ぐらい遡って見ておりました。

 

本日は、それらを踏まえ、日本のエネルギー政策の見通しを頭の整理がてら簡単にまとめてみたいと思います。

エネルギー政策に興味あるけど、詳しいことはようわからん、みたいな方の参考になれば幸いです。

 

第6次エネルギー基本計画(案)に対するパブリックコメント(意見募集)|資源エネルギー庁

総合資源エネルギー調査会|資源エネルギー庁

記事一覧|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁

 

★★

1.エネルギー政策の基本原則を押さえる

日本のエネルギー政策の大原則として「S+3E」という言葉があります。それぞれ

  • S:Safety 安全性
  • 3E:
    • Energy Security エネルギーの安定供給
    • Environment 環境への適合
    • Economic Efficiency 経済効率性

の頭文字を示しており、趣旨としては、

  • 安全にエネルギーを使うことは大前提。原子力、自然災害の激甚化、増えるサイバー攻撃にしっかり対応必要。
  • 資源が乏しい日本。気候変動が進み、国際情勢も変化する中、エネルギーの安全保障を守ろう。
  • 日本の温室効果ガス排出量の8割以上をエネルギー分野が占めており、エネルギー分野が環境配慮することが重要。
  • エネルギーは産業活動・暮らしの基盤。低コスト化は必須。

となります。この4点を守ったうえで、エネルギー政策を立案することが大事ということですね。

 

2.エネルギー政策の目標のおさらい

1で原則を押さえたうえで、改めてエネルギー政策の目標をおさらいしますと、

となっています。少し補足すると

  • 世界的目標は、2015年の「パリ協定」で「今世紀後半のカーボンニュートラル」を実現すること。この目標には先進国・発展途上国の両方を含みます。
  • カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量をトータルでゼロにすること。温室効果ガスとは、熱を溜めこんでしまう気体で、よく知られているCO2の他、メタン・フロン等も含みます。また、「トータルで」とした理由は、空気中の温室効果ガスを回収する技術もあり「排出-回収=トータルで0」という意味を含むためです。
  • 2013年度比となっている理由は、東日本大震災による原発停止により、火力発電がフル稼働していた2013年度が、日本の温室効果ガス排出量が過去最高量だったためです。各国そういう事情で2030年目標の基準年がバラバラになっています。

 

3.目標をどう実現するのか

まず前提情報として、

  • 温室効果ガスは、「電力部門」と「非電力部門」の2部門から排出されます。
  • 電力部門からの排出とは、その名の通り電気を作るときに、石油・天然ガスなどを燃やすことで排出される温室効果ガスを指します。
  • 非電力部門からの排出とは、例えば自動車のガソリンや、ガスコンロで使う都市ガス、鉄鋼業の高炉で使う石炭などを燃やすことで排出される温室効果ガスを指します。

 

この前提を踏まえたうえで、カーボンニュートラル達成への大枠の方向性ですが、

  • まず徹底的に省エネ化して、エネルギー消費量自体を削減
  • 電力部門では、自然エネルギーなど温室効果ガスが発生しない発電方法へ転換
  • 非電力部門では、可能な限り電化を進める(ガスコンロ→IH、ガソリン車→電気自動車、のイメージ)。
  • 電化が難しい分野は、水素・合成メタンなどを用いて脱炭素化を図る。
  • それでも残る温室効果ガス排出は、回収技術を用いて除去

とされています。

 

また、2050年というのはかなり先の話なので、実現に向けては、複数のシナリオを想定したうえで、技術革新・国際情勢の動向をウォッチして、適宜柔軟に変化させていくことが重要とされています。

 

4.目標実現のための主要課題は何か

3で方向性を踏まえたうえで、ここでは各部門での主要な課題についてまとめますが、その前に再度前提情報です。

  • 温室効果ガスは、「電力部門」と「非電力部門」の2部門から排出されます。
  • 別の分類方法として、エネルギーの最終消費部門の観点から、温室効果ガスは、「産業部門」「業務部門」「家庭部門」「運輸部門」の4部門から排出されます。
  • 「産業部門」とは、製造業、農林水産業、鉱業、建設業のこと。
  • 「業務部門」とは、企業の管理部門等の事務所・ビル、ホテルや百貨店、サービス業等の第三次産業のこと。
  • 「家庭部門」とは、一般家庭の冷房用、暖房用、給湯用、厨房用、動力・照明等のこと。
  • 「運輸部門」とは、乗用車やバス等の旅客部門と、陸運や海運、航空貨物等の貨物部門のこと。

以上を踏まえ、各部門での主要課題をまとめます。

 

(1)電力部門の主要課題

再生可能エネルギーの最大限の導入

発電方法を、化石燃料を使わないクリーンなエネルギーに転換すること。特に、太陽光・風力の利用が非常に重要です。

導入に向けては、

  • 浮体式洋上風力発電などの開発により導入可能量を増やし、
  • 導入の合意形成プロセス(漁協との調整、農地の転用、等々)の改善や、電力市場の整備をして、導入しやすい環境を作り、
  • 導入・発電した電力を全国(特に大都市)に送るための送電網を整備して、
  • 天候の影響を受けないよう、蓄電池・水素・揚水式水力発電などのバックアップを確保して安定性を高め、
  • 再エネの発電出力の不安定さを吸収できるよう、電力網の高度化を進めること

等が具体的課題となります。

 

原発の方向性明確化

現状「短期では重要な発電方法の1つ、長期的には依存度を低減する」としか記載がないですが、原発の耐用年数は40~60年と言われ、もうじき多数廃炉されてしまいます。

原発を継続活用するために新設するのか、それとも耐用年数を迎え縮小していくのかを、判断しなければならない時期が目前に迫っています。

福島第一原発事故の影響から政治的判断を誰もできず、なし崩し的に原発廃炉・縮小→火力再導入→カーボンニュートラル目標未達、となってしまいそう…)

 

③水素・アンモニアを活用した発電方法の実用化

水素・アンモニアは、

  • 燃焼時に温室効果ガスを排出せず、再エネの余剰電力で製造した水素・アンモニアを使えば、クリーンな発電方法となる。
  • 火力発電と同様に、再エネの不安定さを調整する役割を果たせる
  • 既存発電設備の大部分をそのまま利用できる。

ということから、再エネ導入と併せて推進すべき重要な技術となっています。

 

④CCS・CCUSの実用化

「CCS:Carbon dioxide Capture and Storage」とは「二酸化炭素回収・貯留」のことで、排出されたCO2を集めて、地中深くに貯留・圧入する技術を指します。

「CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」とは、分離・貯留したCO2を利用する技術を指します。利用例としては、鉱物化してコンクリートにしたり、人工光合成等により化学品製造の原料としたりがあります。

いずれも排出された温室効果ガスを回収する技術で、カーボンニュートラルの完全実現には実用化が必須の技術となります。北海道の苫小牧で実証実験が進行しています。

 

以上の①~④により、電力の脱炭素化を進め、どうしても脱炭素できない電力は、直接回収することで、カーボンニュートラルを実現していきます。

 

(2)産業部門の主要課題

①電化

事業活動に必要な燃料・熱需要を、再エネで発電された電力に転換します。

 

②高熱需要でのバイオマス・水素・アンモニア活用

ボイラーなどの高温帯の熱需要は、電力では対応できないため、バイオマス・水素・アンモニアを燃焼して、熱源確保と脱炭素を実現します。

 

③製造プロセスでの低炭素化・CCUS

以下例のようなイノベーションが多数必要となってきます。

  • 鉄鋼業では、高炉での燃焼に、石炭ではなく水素を一部利用することで低炭素化を図る技術の開発・実用化。
  • 化学産業では、光触媒を用いて太陽光によって水から水素を分離し、水素と工場から排出されるCO₂を組み合わせてプラスチック原料を製造する人工光合成技術の開発・実用化。
  • セメント産業では、CO2を廃コンクリートなどに用いて炭酸塩として固定し、原料などに使用する技術の開発・実用化。

 

(3)業務・家庭部門

省エネ化と、電化が必要。

 

(4)運輸部門

乗用車・バス等の旅客部門では、電気自動車化が必要。

陸運・海運・航空貨物等の貨物部門では、燃料の電化では十分な動力とはなり得ないため、バイオマス・水素・アンモニア燃料を活用して、動力確保と脱炭素化が必要。

 

エネルギー消費側の産業・業務・家庭・運輸部門では、「省エネ」「電化」「バイオマス・水素・アンモニア活用」「CCUS等による回収」により、カーボンニュートラルを実現していきます。

 

5.私たちの生活は、どう変化するのか

最後に、私たちの生活はどう変化するのか、あくまで私の妄想ですが記載すると、

  • 家庭内では、ガスの電化が進み、ガスコンロ→IH、ガス給湯器→エコキュート、と置き換わるでしょう。また、建物自体の省エネ化の為、断熱性能向上目的のリフォームが進むのではと考えます。そのほか、庭・屋根・外壁への太陽光パネル設置がより加速すると考えます。
  • 街中では、ガソリン車はすべて電気自動車に変わるでしょう。また、あちこちに太陽光パネル風力発電の風車を目にすることになると考えます。
  • 職場では、厳しい省エネ基準が課せられ、達成にあくせくしているかもしれません。オフィスにおいては、ガスの電化が進んでいるかもしれません。また、事業活動でどうしても出てしまう温室効果ガスは、吸収するために植樹したり、排出権を購入しているかもしれません。(その排出権は、CCUS等で生み出しているかもしれません。)
  • ニュース番組では、風力発電のせいで漁獲量が減ったと訴える漁協組合が取り上げられているかもしれません。
  • 台風等の自然災害では、洪水・土砂崩れのほかに、再エネ発電施設が破損して停電が起きないか、なども関心事になるかもしれません。
  • 電気料金は、時間帯・気候に応じて価格変動し、天候を気にしながら電気を使用する習慣になっているかもしれません。

 

どんな技術革新・社会変革が起こるのでしょうね。人類の可能性に期待して、楽しみにしておきましょう。

 

★★

以上、思ったより長くなってしまいましたが、第6次エネルギー基本計画(案)を参考に、日本のエネルギー政策の見通しについて、簡単にまとめてみました。

関心のあるテーマなので、引き続き深堀して記事を書いていこうと思います。

 

ではまた。

成果を出すには「専門性」「ロジカルシンキング」「コミュ力」

頭の整理がてら、簡単に書きます。

★★

最近切に感じることが、知識労働者として成果を出そうと思ったら、

  1. 専門性
  2. ロジカルシンキング
  3. コミュニケーション能力

の3つが大事ということ。

 

まずは、専門性。

そもそも、専門知識があるか・ないかで、生産性が大きく異なります。知っていれば数秒で終わることも、知らなければ数時間~数十時間かかってしまう、ということはよくあるかと思います(さらに質も非常に低い)。

また、専門知識をきちんとアップデートしていけるかどうかも、長く成果を上げ続けられるか、時代の流れとともに陳腐化していくかで差が出ます。

 

次に、ロジカルシンキング

知識労働者は、知識を成果に結びつける必要がありますが、そのカギとなるのが思考力です。
 知識労働者の成果 = 知識 × 思考力 

と仮定すると、ベースの知識・専門性の有無はもちろんですが、思考力があるかも大きな要素となります。そして、多くの凡人が我流でたどり着ける思考レベルはたかがしれていますので、思考術を学び、習得し、研鑽する必要があります。

 

最後に、コミュニケーション力。

これは働く環境によるところがありますが、多くの場合は1人で生み出せる成果なんてしれていますので、他人と連携しながら仕事に取り組むことになると思います。

いかにその人が個人として優秀でも、周りが動かない、周りに伝わらなければ、最終的に生み出せる成果は減ってしまいます。

個人の頭脳の優秀さを、きちんと社会への成果に繋げようとしたら、コミュニケーション力は必須能力となると思います。

イメージとしては、

 社会的インパクト = 個人能力 × コミュニケーション力(≒影響力)

          = 知識 × 思考力 × コミュ力

 

★★

上記を踏まえ、自分に向けて自戒として伝えるとしたら

  • 業務成果に直結する専門知識をブレずに貪欲に学び続けなさい。
    興味ある分野の専門知識も学んでもいいが、どうせ学ぶなら発揮する場を探すこともセットでしなさい。
  • ロジカルシンキングは、驕らずあらゆる角度から再構築するつもりで学びなさい。上には上がいて、まだまだ井の中の蛙
  • コミュ力は一番の課題。周りが気持ちよく動き出すような影響力を持つため、周囲との接し方を見つめなおしなさい。演者になり切るつもりでもいい。

★★

以上。

 

リュック好きがおススメする仕事・ジム両用なミニマルバックパック3選

こんにちは、asiyutaです。

 

最近、仕事終わりにテニスに通い出しました。

テニスのある日は、7年前に購入したノースフェイスのバックパックを押し入れから引っ張り出して使っていたのですが、あちこち傷んでいて、さすがに新しいの買わねば…となっておりました。で、色々調べ、先日気に入ったのが見つかったので、ようやく購入することができました。

 

本日は、せっかく色々調べたので、asiyutaが実際に購入した&購入するかかなり悩んだおススメのバックパックを3つご紹介したいと思います。

仕事に使えて、収納力があって、機能的で、オシャレで、ミニマルなバックパックを探されている方の参考になれば幸いです。

 

★★

 

1.MAMMUT Seon Transporter 25 black

1つ目は、アウトドアブランドのMAMMUTから、自社社員が仕事も遊びも楽しめるようにと開発されたこちらのバックパック

 

おすすめポイントは

  • 見た目がシンプルでカッコいいこと。失礼ながらMAMMUTってもうちょっと機能性重視のデザインだった印象なのですが、こんなシンプルでカッコいいデザインの商品もあるんだ、とかなり驚きました。仕事使いも全く違和感ないデザインです。
  • 収納力の高さと、収納スペースが「WORK」「CLIMB」「貴重品」「書類」の4つに分かれていること。
    • 「WORK」は、ノートPCとタブレットをそれぞれ収納でき、かつ収納してもリュックの底につかないような設計になっており、損傷の心配がありません。勢いよくタブレットをリュックに入れ、画面を割った経験があるので、この機能のありがたさを切実に感じます。
    • 「CLIMB」は、収納スペースが広く、さらにシューズ収納スペースがあること。ここにシューズとウェアを入れれば、仕事終わりのテニス通い(もちろんジム通いも)も余裕です。
    • 「貴重品」は、リュック上面の取り出しやすい位置にあり、中もエリアが複数分かれており、財布、スマホ、鍵などを分けて入れることができます。また、ジッパーはフック付きで、盗難対策も配慮されています。
  • 軽いこと。990gと1㎏を切っており、非常に楽です。
  • 背負い心地がよいこと。さすがアウトドアブランドだけあって、背中のクッション性や、ショルダーベルトのフィット感が良いです。
  • キャリーバッグのハンドルに取付け可能なこと。出張や旅行時に重宝します。
  • 防水性があること。
  • 安いこと。この機能・デザインで税込19,800円はめっちゃ安いと思いました。

 

最終的にこちらを購入しました。

 

2.Aer Day Pack 2

オリエンタルラジオ中田敦彦さんがyoutubeで紹介されているのを見て知ったこちらの商品。調べるといろんな人が愛用していて、購入するかすごく迷いました。

 

おすすめポイントは

  • デザインがシンプルでカッコいいこと。ロゴとかも一切なく、ミニマル感があってすごく好きです。正直MAMMUTよりこちらの方が見た目は好みかもしれません。
  • リュック上面に、貴重品を入れやすいトップポケットがあること。
  • ボトル用ホルダーがサイドにあること。ドリンク取り出しやすい位置に収納できるのってうれしいですよね。
  • キャリーバッグのハンドルに取付け可能なこと。
  • PC用ポケットがあること。PC収納可能なのは必須機能ですね。
  • 内側の収納ポケットが充実していること。
  • 防水性能もあること。
  • 価格も税込24,200円と手ごろなこと。

 

本当に買うか迷いました。が、引っかかった点として

  • MAMMUTのSeon Transporter 25より少し重いこと。重量1300gとわずかではありますが、ただでさえテニス用のシューズ・ウェアを入れて重いので、少しでも軽いほうがありがたいなと。
  • 収納容量も、MAMMUTの方が少し多く、シューズケース機能も無いこと。ここも若干引っかかりました。
  • 価格も、MAMMUTより若干高いこと。でも十分安いですよね。

 

これらの理由から、本当に悩みましたが、こちらは買わずと。

 

 

3.cote&ciel SORMONNE coated canvas · Black

あのスティーブ・ジョブズも愛用したという、シンプルなデザインのアイテムを揃えるフランスのブランド。デザインが圧倒的に好みで、これも買うか本当に迷いました…。

 

おすすめポイントは

  • 圧倒的にカッコいい。シンプルさの中に、少し変化を入れていて、洗練された印象のあるデザイン。レザーっぽさがあり、マットな質感が高級感を感じます。街中で持っていたら、おそらく目を惹くんじゃないかな…。少なくともミニマルリュック好きには刺さりそう。
  • 人と被らなさそう。MAMMUTはアウトドア好きは割とよく使うブランドだし、Aerもyoutubeやブログでかなり紹介されていたので、割と浸透してきている印象。一方、cote&cielはそもそも存在を知られていなさそう。価格面もあり、あまり買う人もいなさそうで、被る心配がない。
  • 雨風に強く、耐久性が非常に高いこと。
  • 13インチのノートPCが収納可能なこと。
  • 外側に小物ポケットも2つあり、貴重品の出し入れもしやすそうなこと。

 

いやーカッコいい。マジでカッコいい。そうカッコいいんです←言い過ぎ

 

買うか迷いましたが、購入を引き留めた点としては、

  • 値段が高い。税込49,500円なので、割と気合を入れてじゃないと、asiyuta的には買えない値段でした。
  • 収納力。特に、仕事終わりに運動することを想定したときに、MAMMUTの機能性が優りました。

 

今回は購入目的と照らして、何とか踏みとどまりましたが、いずれ普段使い用リュックとして買っちゃいそうな気がします。それくらいデザインが気に入りました。

 

★★

以上、個人的な好みを前面に押し出した記事でした。少しでもご参考になれば幸いです。

ではまた!